技術マーケティングとは、自社の技術力を武器に、その価値を市場へ的確に伝えるためのマーケティング手法です。ポイントは、「誰に」「何を」「どのように伝えるか」の3軸を明確にし、自社の強みが相手に伝わるように戦略を設計することです。
とくに受託加工業の分野では、「自社の強みをどのように打ち出せばよいか分からない」「従来のやり方では成果につながらない」といったご相談を多くいただきます。
そこで今回は、実際のケーススタディを交えながら、受託加工業における技術マーケティングの具体的な設計手法と進め方をご紹介します。
この記事の目次
受託加工業者(金属加工業者)でのWebマーケティング:ケーススタディ
会社名 | テクノポート製作所株式会社(仮想の会社です) |
従業員 | 20名 |
業種 | 金属の切削加工 |
特徴 | 精密部品加工の小~中ロット対応 |
ステップ1. 市場や商流の理解:金属加工業界
まずは、どのような業界、市場に自社は置かれているのか、営業活動が難しい背景を理解します。
- 競合が多い:金属加工業界というくくりでは数多くの競合が存在する
- 市場が広い:切削加工部品は幅広い業界の製品や機械部品として利用されている
- 差別化しづらい:自社でなければできないという加工技術を持っている会社は稀で、他社でもできる可能性があるものがほとんど
- 業界にこだわりは少ない:この業界の仕事しかうけないというこだわりはなく、自社の設備や技術でできるものであれば対応するという会社が多い
上記のように製造業と言っても自社製品を持つ企業とはまったく異なった業態です。この業態を理解しつつ、解決すべき課題は何と言っても「発注のタイミング」をいかに効率よく捉えるかです。
ステップ2. 自社の事業内容の整理
自社の保有する資源を可視化させるために、事業内容の整理を行います。技術・提供価値・マーケットの3つの視点で表を作成します。
ステップ3. Web上での市場調査、競合調査
先ほどの表をベースに、どのようなキーワードで見られると仕事につながりそうか、リストアップしていきます。その上でキーワードで上位に来ている競合の調査も簡単に調査を行い、自社の事業と該当キーワードとの関連性を考察します。
ステップ4. 仮定戦略の策定+対策すべきキーワードの選定
上記のキーワード調査と事業内容の整理から、考えられる戦略の方向性をいくつか策定します。複数の施策を作ること、また、作りこみすぎないことがポイントです。情報が少なく、仮説に基づいた戦略の立案のため、ここに時間を費やす必要はありません。市場に打ち出した後に、ユーザーの反応を見て戦略を作り上げていくほうが効率的です。
ステップ5. サイトマップ作り
大枠の戦略と対策したいキーワードが決まったら、どのページで対策をするか、サイトマップでページごとの役割を明確化させましょう。
ステップ6. サイトのコンテンツ作り
対策するキーワードと該当のページが決まれば、あとはページの中身を作りこんでいきます。SEO対策(検索で上位に持ってくる対策)のためには、ユーザーが検索する際の意図を予測し、それに合わせた必要な情報を用意・掲載することが重要です。
ステップ7. 施策実施による効果測定・改善活動
ページを作り、公開し終えたら、次はその施策の効果計測を定期的に行っていきます。1か月に一度、長くても3か月に一度ぐらいのスパンで計測していきます。見るべき指標は、対策したキーワードの準備、アクセス数、ユーザー数、お問い合わせ件数などの指標が代表的な指標です。順位が上がっていないようであれば、該当のページの中身の見直しを行います。
ステップ8. 戦略の見直し
半年、1年と経過するにつれ、自社への問い合わせが蓄積していくでしょう。それが新規顧客が自社に期待する需要です。これを分析することによって、自社の得意領域も明確化し、また、今後伸ばすべき事業も少しずつ見えていきます。確かな根拠をもとに自社独自の成長戦略を描けるようになります。
金属加工業者(切削加工業者)のケーススタディを交えて、Webマーケティングの企画から実行までの流れを紹介しました。戦略など難しく考えすぎず、できることから実行し、その上で戦略を作りこむことをお勧めします。