テクノポートの徳山です。ChatGPTやGemini、Copilotといった生成AIの普及により、「検索」は大きな転換点を迎えています。従来の検索エンジンだけでなく、AIが生成する回答そのものが情報の入口となる中で、企業にとっては「AI検索対策」という新たなテーマへの対応が求められるようになりました。一方で、「AI検索対策は何をもって成果と判断すればよいのか分からない」「SEOと同じKPIで見てよいのか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そうした疑問に答えるために、AI検索対策におけるKPIの考え方と具体的な指標を整理します。露出・流入・エンゲージメント・コンバージョンという4つの観点から、なぜそのKPIを見る必要があるのか、そしてどのように効果測定を行えばよいのかを、できるだけ実務に即した形で解説します。AI検索時代において、どの指標をどう見ればよいのかを理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
AI検索におけるKPI設定方法
AI検索対策では、「どの数値を見れば成果と言えるのか」が分かりづらく、評価が属人的になりがちです。そこで重要になるのが、AI検索特有の特徴を踏まえつつ、成果を段階的に捉えるためのKPI設計です。
以下の図では、AI検索対策における主要なKPIを、「露出・掲載状況」「流入指標」「エンゲージメント指標」「コンバージョン指標」の4つのカテゴリに分けて整理しています。あわせて、それぞれのKPIが何を意味するのか、どのツールを使えば計測できるのかも一覧でまとめています。
まずは全体像を把握するために、この図を一度ざっと確認してください。その後、各KPIについて順に詳しく解説していきます。

(1) 露出・掲載状況のKPI
「そもそもAIに認識・参照されているか」を見る指標となります。
KPI①:AI検索結果での引用数/引用率
KPI②:AI検索結果でのブランドのメンション数/メンション率
KPIの概要
引用数:AI検索の回答文中に、自社サイトや記事が「情報源」として引用された回数
メンション数:リンクの有無に関わらず、ブランド名・サービス名が言及された回数
なぜこの指標を計測するのか?
AI検索では、ユーザーがAIが生成する回答結果で満足し、そのまま情報収集を完結することも多く、回答結果の引用リンクをクリックしないケースが多いです。そのため、アクセス数だけを見ていると「AI検索対策の成果がまったく出ていない」と誤解してしまう可能性があります。
そこで重要になるのが、AIの回答そのものに自社の情報が使われているかどうかという視点です。AI検索結果で引用されたり、ブランド名が言及されたりしている状態は、AIから「信頼できる情報源」「参照に値する存在」として認識されていることを意味します。たとえ直接の流入がなくても、ユーザーの記憶に残ったり、後から指名検索につながったりする可能性があるため、露出・掲載状況のKPIはAI検索対策の最初の成果指標として欠かせません。
効果測定方法
Semrush / Ahrefsなどの有料ツール:AI Overview や生成AI関連の引用・言及をクエリベースで確認ブランド名・ドメイン名でメンション調査
手動チェック(補助的):ChatGPTやGeminiで想定質問を投げ、引用・言及の有無を確認定点観測(月1回など)
(2) 流入指標
「AI検索から実際にユーザーがWebサイトを訪れているか」を見る指標となります。
KPI:AI検索経由のセッション数
KPIの概要
ChatGPT、Gemini、CopilotなどAI検索からサイトに訪問したセッション数
なぜこの指標を計測するのか?
AI検索はゼロクリック検索が多いと言われますが、すべてのユーザーがAIの回答だけで満足するわけではありません。より詳しい情報を知りたい、根拠を確認したいと考えたユーザーは、AIの回答に含まれるリンクをクリックしてサイトを訪れます。つまり、AI検索対策が進むことで、一定数の「質の高い訪問」が発生する可能性があります。
この指標を計測することで、AI検索が単なる認知施策にとどまらず、実際にサイトへの流入を生み出しているかどうかを確認できます。従来のSEO流入とは異なる経路からユーザーが来ていることを把握することで、AI検索が新しい集客チャネルとして機能しているかを判断できるようになります。
効果測定方法
GA4上でAI検索経由のユーザーのセッションは「参照元(Referral)= AI検索サービス(ChatGPT、Gemini、Copilotなど)」という形で計測が可能です。GA4にログインし、左メニューの「レポート」を開きます。次に「トラフィック獲得」を選択し、表示軸を「セッションの参照元 / メディア」に切り替えます。そのうえで、参照元に「chat.openai.com」、「gemini.google.com」、「copilot.microsoft.com」などのAI検索サービスのドメインが含まれているかを確認します。該当するドメインが表示されていれば、それがAI検索経由のセッションです。
(3) エンゲージメント指標
「AI検索ユーザーの質」を見る指標となります。
KPI:エンゲージメント率、滞在時間 / 離脱率
KPIの概要
エンゲージメント率:一定以上サイト内で行動した割合、具体的には、「10秒以上継続」「コンバージョンイベント発生」「2回以上のページビュー(スクリーンビュー)」のいずれかを満たすセッション
滞在時間:どれくらいページを読んだか
離脱率:アクセスしたがすぐに離脱してしまったユーザーの割合
なぜこの指標を計測するのか?
AI検索経由で訪問するユーザーは、すでにある程度の答えや前提知識を持った状態でサイトに来ることが多いという特徴があります。そのため、単にページを開いただけで満足する場合もあれば、逆に非常に深く読み込む場合もあります。こうしたユーザーの行動は、一般的な検索流入と比べて傾向が異なることが少なくありません。
エンゲージメント指標を確認することで、AI検索で提示された内容と、実際にサイトで提供している情報がユーザーの期待と合っているかを判断できます。もし滞在時間が極端に短かったり、すぐに離脱されている場合は、AIに引用されている文脈とページ内容にズレが生じている可能性があります。AI検索対策の精度を高めるためにも、ユーザーの行動データを通じて「本当に役立っているか」を確認することが重要です。
効果測定方法
流入指標と同様に、GA4の「トラフィック獲得」レポートで、セッションの参照元がAI検索(ChatGPT、Gemini、Copilotなど)になっている行を確認し、そのセッションに対して表示されているエンゲージメント率、平均エンゲージメント時間、離脱率の数値をチェックします。
(4) コンバージョン指標
「最終的なビジネス成果」が挙がっているかを見るための指標です。
KPI:CV数 / CV率(AI検索経由)
KPIの概要
CV数:AI検索経由で発生した問い合わせ・資料ダウンロードなど
CV率:AI検索経由セッションのうち、CVに至った割合
なぜこの指標を計測するのか?
最終的に企業が取り組む施策は、何らかのビジネス成果につながっている必要があります。AI検索対策も例外ではなく、問い合わせや資料請求、購入といったコンバージョンにどの程度貢献しているかを把握することが重要です。
一般的にAI検索経由のユーザーは、すでにある程度の答えや前提知識を持った状態でサイトに来ることが多いため、コンバージョン率が高い傾向があります。ただし、Webサイトから発生するコンバージョンの割合からするとまだまだ少ないことが多く、これがAI検索自体が発展途上のためか、自社サイトのAI検索対策が不十分なのか、Webサイトの使い勝手が悪いのか、どこに問題があるのかを見極めるためにも、データ主導で冷静に見極める必要があります。
効果測定方法(GA4)
あらかじめGA4で問い合わせ送信や資料ダウンロードなどのコンバージョンイベントを設定したうえで、「トラフィック獲得」レポートを開き、セッションの参照元をAI検索(ChatGPT、Gemini、Copilotなど)に絞り込みます。その状態で、AI検索経由のセッションに対するコンバージョン数とコンバージョン率を確認します。
AI検索対策におけるKPIに関するFAQ
Q. AI検索対策のKPIは、SEO対策の場合と考え方が異なりますか?
A. いいえ、基本的なKPIの考え方はSEO対策と大きく変わりません。
露出・流入・エンゲージメント・コンバージョンという段階構造は共通しており、SEOでキーワードを軸に考えていた部分を、AI検索ではプロンプトに置き換えて整理するのが基本です。
Q. AI検索対策では、なぜ露出・掲載状況のKPIが計測しづらいのですか?
A. AI検索はまだ分析ツールが十分に整ってないためです。
そのため、プロンプトの検索ボリュームやAI回答内での引用・メンションを正確に数値化するのが難しいためです。そのため現時点では、定量データだけに頼らず、定性的な評価も含めて判断する必要があります。
Q. AI検索経由のアクセス数が少ない場合でも、対策を続ける意味はありますか?
A. はい、あります。AI検索経由のユーザーは課題意識が明確なケースが多く、一般的にコンバージョン率が高い傾向があります。
現時点でアクセス数が少なくても、将来的なユーザー増加を見据えれば、早期から取り組む価値は十分にあります。
Q. AI検索結果での「引用数」や「メンション数」は必ず測定すべきですか?
A. はい、AI検索対策においては非常に重要な指標です。
どのようなプロンプト(質問文脈)で自社コンテンツやブランドが引用・メンションされているかが分からないと、次に追加・改善すべきコンテンツの方向性が定まりません。そのため、引用数・メンション数は、コンテンツ改善のためのヒントを得る指標として必ず把握しておくことをおすすめします。
Q. SemrushやAhrefsが使えない場合、AI検索の露出状況はどう判断すればよいですか?
A. SemrushやAhrefsはあくまで一例であり、必須ではありません。
無料で使えるツールや手動調査でも一定の把握は可能です。まずは自社で利用している生成AI(ChatGPT、Gemini、Copilotなど)に対して、想定される質問を実際に入力し、自社や競合がどのように扱われているかを確認するところから始めるのも有効です。初期段階では「完璧な計測」よりも「傾向をつかむ」ことを重視しましょう。
Q.AI検索経由のセッションが少ない場合、KPIとして意味はありますか?
A. はい、意味があります。短期的な数値だけで判断しないことがポイントです。
現時点では、検索エンジン経由の流入と比べて、AI検索からの流入数が1桁〜2桁少ないケースは珍しくありません。セッション数が少ない場合は、まず流入を増やすための対策(引用されやすいコンテンツ整備など)を行うことが重要です。また、他の集客チャネルとのCV率の比較ができるようになるまでは、粘り強く対策を継続してください。
Q. AI検索経由ユーザーは本当にCV率が高いのですか?
A. 一般的には、AI検索ユーザーは課題や目的が明確な状態で情報収集しているケースが多く、CV率が高くなる傾向があると言われています。
ただし、業界や商材によって差が出るため、自社データを蓄積しながら判断することが重要です。
Q. AI検索対策では、アクセス数とCV数のどちらを重視すべきですか?
A. ケースバイケースですが、現段階ではまず成果が見えやすい「アクセス数(セッション数)」のKPIを重視し、方法論を確立することが先決だと考えられます。
一般的にAI検索ユーザーのCV率は高いと言われているため、アクセス数を一定数確保できれば、結果としてCV獲得につながることが期待できます。
Q. BtoB製造業の場合、AI検索のCVは何をコンバージョンに設定するのが適切ですか?
A. 基本的にはSEOと同様で問題ありません。
具体的には、問い合わせ、資料ダウンロード、技術相談、見積もり依頼など、自社の営業プロセスにつながる行動をCVとして設定すると良いでしょう。
Q. AI検索対策のKPIにおける目標値はどのように設定すればよいですか?
A. まずは明確な数値目標を高く設定しすぎず、現状把握を目的とした暫定目標を置くことをおすすめします。
たとえば「AI検索経由セッションが発生しているか」「月次で増加傾向にあるか」といった成長指標を見ながら、データが蓄積されてきた段階で、CV数やCV率の目標を段階的に引き上げていくのが現実的です。