中小企業(製造業)の失敗しないWebマーケティング

【執筆者紹介】小林(井上) 正道

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この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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テクノポートの小林です。近年、コロナ禍以降はとくに、中小製造業の中にもWebマーケティングを導入する企業が増えてきています。

中小企業の経営者の後継者や営業担当者がWebマーケティングの有用性を感じ「うちの会社にも導入したい!」と思っても、社内からの理解が得られず導入を進められないケースも多く見受けられます。今回は、Webマーケティングの遂行を妨げる要因と、それを乗り越えるための対処法について紹介します。

Webマーケティングの取り組みの第一歩はHP改修

中小企業にとってのWeb活用の重要度は年々増してきています。限られたリソースの中でマーケティングを行うためにはWeb活用は必須になりつつあります。Webマーケティングの第一歩はホームページの改修です。展示会や広告などさまざまな営業手法がありますが、最終的にはHPを見てその会社の情報を確認します。下記は製造業界での発注側のメーカーにインタビューした際の調査レポートです。情報取集の主流はWeb検索が主流となっていることがわかります。企業からの仕事獲得のためには受注側の中小企業も同様にWebをうまく活用し自社への問い合わせを呼び込めるかどうかが新規顧客獲得のカギとなっています。

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テクノポート株式会社調べ:https://marketing.techport.co.jp/proposal-report/202401-2/

Webマーケティングの遂行を妨げる要因

中小企業のWebマーケティングを遂行を妨げる要因はなんでしょうか?その要因をしっかり理解することができれば、対策の糸口は見つかるはずです。

デジタルマーケティングへの理解の不足

中小企業の経営者層がデジタルマーケティングに関する知識や理解を持っていない場合、Webマーケティングを効果的に活用することは難しいです。「よくわからないものは取り入れない」、「業界で話題になっていたとしても、うちは独自にやっている」という考えを持っているのかもしれません。

伝統的なマーケティングへの執着

一部の中小企業は、伝統的なマーケティング手法に依存していることがあります。昔ながらの足を使った営業活動に固執し、新しいデジタルマーケティングの重要性に気づいてないのです。もちろん対面での営業も重要な営業手法ですが、他の可能性を否定してしまうことはもったいないことです。

また、「うちの業界は特殊だから」という理由で可能性にフタをしてしまう会社も多く存在します。

予算の制約

中小企業は、大企業に比べてマーケティング予算が限られています。Webマーケティングには広告費や専門的な支援を必要とする場合があり、予算の制約が進展を妨げる要因となることがあります。今まで営業をせずとも仕事を受注できていたため、営業に費用をかけることに消極的な傾向があります。また、見えないWebに関して費用をかけるのにはさらに消極的になる場合があります。「展示会には費用をかけて積極的に出展しているけれど、Webはぜんぜん」というケースも少なくありません。

リソース不足(運用体制)評価体制に問題

Webマーケティングは継続的な取り組みを必要とします。中小企業は従業員数や業務量が限られていることが多く、Webマーケティングに必要なリソースや時間を割く余裕がない場合があります。専属の人間を置くことはできず、どうしても片手間になりがちです。

評価体制に問題

実施者の人事評価も重要な問題です。せっかく成果を出しても実行者への適切な評価が得られず、モチベーションの低下、予算削減などにより思うように進まなくなることがあります。

成果測定の不足

効果測定は、実施したマーケティング活動の成果や効果を測定し、改善策を立てるために重要な要素です。やったことに対する成果を見える化させる仕組みがなければ、社内での評価や賛同を得ることができません。

製造業回で有名なものづくり太郎さんの動画でも上記の問題について触れています。(弊社テクノポートも紹介していただいています)

Webマーケティングを遂行するための4つのポイント

上記の要因を踏まえた上で、遂行するためのポイントを紹介します。

社内への理解:Webマーケティングの重要性への理解をどう得るか?

何よりも大事なことは、ユーザーがどのように新規の会社を探しているかを経営者層に理解してもらうことです。ユーザーの行動心理を理解し、その上で自社がどうあるべきかを考えることで、自然とWebの重要性が理解してもらえるはずです。

そのためには、やはり数字や生の声を利用し、根拠に基づいた説明が効果的です。担当者の気持ちや意見ではなく、客観的な意見と根拠で説明します。例えば下記のようなアンケート調査を利用すると効果的です。

既存の商社や付き合いのある外注先以外の会社を探す際の情報収集の手段として、Webを使うユーザーが圧倒的に多いことが証明されています。

ユーザーの行動心理に合わせ、自然と自社を認知してもらい引き合いを呼び込むことは、ユーザーにストレスを感じさせないユーザーファーストな営業と言えます。

また、強力な説得材料は、他社が取り組んでいる実際の成果を見せることです。下記のページにて事例を掲載しています。

→製造業Webマーケティング事例を紹介(順次更新追加)

改修範囲の定義:本当にリニューアルが必要かどうか

Webマーケティングを進めるうえで、多くの中小企業が「まずはHPをリニューアルすべきだ」と考えがちです。しかし、実際には“全面リニューアル以外の改善”で十分なケースも少なくありません。重要なのは、現状サイトが抱えている課題と、マーケティングで達成したい目的を正しく紐づけることです。たとえば次のような場合は、必ずしも大規模なリニューアルを必要としません。一部改修であれば数十万程度の費用で成果を期待できます。

  • 情報構造は問題ないが、サービスページの訴求が弱い
  • 問い合わせ導線が分かりづらい
  • SEO対策が十分でなく、検索流入が伸びていない
  • 更新が滞っているだけで、サイト自体はまだ利用可能

逆に、以下のような場合はリニューアルの検討が必要です。会社の提供価値や事業内容と、サイトの内容が大きくズレている

  • スマホ対応が不十分でユーザー離脱率が高い
  • CMSが古く、セキュリティ面に不安がある
  • ページ構成が複雑で、情報を整理しなければ改善ができない

つまり、“リニューアルありきの提案を受け入れない”ことがポイントです。
まずは、現状のサイト分析とマーケティング施策との整合性を確認し、
「どこまでを改善する必要があるのか」
「部分改修で済むのか、抜本的な見直しが必要か」
を明確化することで、無駄な投資を防ぐことができます。

手法の確立:実施・効果測定フェーズの手法確立

Webマーケティングが失敗する典型例のひとつは、施策実施と効果測定のプロセスが曖昧なまま走り始めてしまうことです。
製造業の改善活動と同じく、Webでも「計画 → 実施 → 計測 → 改善」のサイクルを回すことが不可欠です。

1. 実施フェーズ

実施フェーズでは、次のような行動計画を明確にします。

  • どの施策を、どの順番で、誰が実行するか
  • 必要な更新作業(ページ追加、記事投稿、導線改善 等)
  • SEO対策や広告運用の具体的メニュー
  • 社内で対応する範囲と、外部に依頼する範囲の切り分け

特に中小企業の場合、担当者が兼務であるケースが多いため、「実行可能な現実的な計画」に落とし込むことが成功のカギになります。

2. 効果測定フェーズ

効果測定では以下の指標を最低限設定することが重要です。

  • アクセス数(検索流入・SNS流入など)
  • ページごとの滞在時間・離脱率
  • 資料請求・問い合わせ数
  • キーワード順位の推移

こうしたデータを定期的に確認し、「どの施策が成果につながっているのか」を把握することで、次の改善施策が明確になります。つまり、実施と測定の仕組み化こそが、Webマーケティングが“継続的に成果を生む体制”につながるのです。

Webマーケティング遂行にかかる費用に対しての理解

最後はかかる費用に対しての合意です。費用に関しての捉え方は会社によってまちまちのため、Webマーケティングに関する費用を安いと捉える会社もあれば、高いと捉える会社もあります。一般的な説明の道筋は下記の通りです。

  1. 新規開拓の重要性の理解
  2. そのために何をするか?新規開拓の手法の提示
  3. その中でWebがコストパフォーマンスに優れている点

ただ、それだけだと初めてWebマーケティングに取り組む方の腰は重いかもしれません。価値をどうやって理解してもらうかの話ですので、たとえ話をしてみるのもよいでしょう。

例えば、この業界は単発の新規取引ばかりでは手間ばかりで利益が出ない業態の会社が多いです。そのため、単発取引をいくつか受ける中で、1年間に1社でも継続取引ができる顧客がもしできるとすれば、どれぐらいの費用をかける価値がありますか?

会社や組織を巻き込むためには、論理的な話だけでなく、可能性や期待、ワクワク、情熱も最終的には必要になります。

一般的なHPリニューアル費用と運営費用

制作会社に依頼する場合の費用は中小企業では 50~150万円くらいといわれています。価格はページ数によって大きく変動します。一部改修であれば内容にもよりますが数十万程度です。公開後の運営のコストはまちまちです。サーバーの保守管理だけであれば月額数千円でも問題ありません。アクセス解析や改善を実施するサポート支援が必要となると、月額数万円~数十万円の費用がかかります。

制作費用相場

一般的な相場は下記の通りです。

内容 相場感
10〜20ページ規模の基本的なリニューアル 50〜150万円
製造業向けのサービス訴求を強化した構成・原稿作成込み 150〜300万円
多言語対応・撮影・動画などを含む大型案件 300〜600万円

運営費用(ランニングコスト)の相場

リニューアル後に成果を出し続けるためには、運営費用の確保が欠かせません。下記は一般的な相場です。

項目 相場感
保守・管理(サーバ保守、バックアップ等) 月1〜2万円
解析レポート・更新代行(簡易改修) 月3〜10万円
マーケティング支援(分析・SEO改善・戦略伴走) 月10〜30万円

サイトは作って終わりではなく、継続的な改善こそが成果を生む源泉です。「初期費用+運用費」の両方を見据えて予算を確保することが、失敗しないWebマーケティングの鉄則です。弊社では公開後の伴走支援を月額3.5万円〜にて支援しています。(受託加工業者向け)

リニューアルする際の制作業者選定の5つのポイントと見極め方

ホームページでの集客を成功させるために重要な制作業者選定ポイントは以下の5つです。

1、「集客」という成果に対して実績を積み上げているか?

Webサイト制作実績ではなく、マーケティング施策としての実績があるかどうかは非常に重要です。

見極めポイント:制作実績だけでは、マーケティングの支援実績があるとは言えません。ユーザーの声や、制作公開後の効果まで提示できる事例を保有しているかを確認しましょう。作るだけでなく、その後のサポートもしっかり行っていなければ成果を事例として紹介することはできないため、見極めるポイントになります。

2、業界知識や、理解力があるかどうか?

事業内容をしっかり理解した上でなければ、有効な戦略も立てられません。業界に関する知識や理解があるかを確認しましょう。

見極めポイント:一度打ち合わせをすれば、業界を知っているかどうかはある程度の判断はできるはずです。

3、マーケティング戦略を立てられる会社か?

企画戦略は市場、競合、自社の分析から始まり、ターゲットの選定、提供価値の設定だけでなく、具体的なキーワードの選定まで紐づけた施策が必要となります。具体的な実行施策まで一貫して企画できているかが重要です。

見極めポイント:自社の事業内容に合った戦略の提案が企画書に含まれているかを確認しましょう。サイトデザインの話ばかりで、肝心な企画戦略の提案がない場合は要注意です。

4、集客に重要なSEO対策に長けているかどうか?

SEOによる集客が施策の肝ですが、制作した会社のSEO対策が有効に実施できる会社かどうか見極める必要があります。

見極めポイント:事例の企業がどのようなキーワードで対策をして集客ができているのか実績を確認しましょう。検索需要があるキーワードでSEO対策の実績があるかどうかの確認が必要です。

5、成果が出るまでしっかり付き合ってくれる会社か?

Webマーケティングは公開後こそが重要なフェーズです。行ったことによる効果を計測し、改善につなげていく必要があります。公開後のサポート体制、契約体系がどうなっているのかを確認しましょう。

見極めポイント:わかりやすいところでは、ユーザーの声や成果を事例にしている会社は、サポートがしっかりしている可能性が高いです。なぜなら、作って終わりの会社は顧客との関係性が希薄になり、成果を後追いできないからです。「公開後のサポートまできっちりやります」と言う会社は多いですが、言われた更新内容をきっちりこなすという意味でのサポートでは意味がないため、見極めが必要です。

相談の前の注意点:リニューアル前提で相談すると制作会社の言いなりになりやすい

Webサイトに関する相談を外部の制作会社に行う際、最も注意すべきポイントは 「リニューアル前提で話を進めないこと」 です。多くの制作会社は、自社の売上を上げるために「全面リニューアル」を提案しがちです。しかし、企業側が「サイトを作り直したい」と最初から伝えてしまうと、本当に必要な施策の見極めが曖昧なまま、制作会社の提案に流されてしまうリスクがあります。

実際、以下のような事例はとても多く見られます。

  • サイトを刷新してデザインはよくなったが、問い合わせ数は変わらなかった
  • 目的を整理しないまま進行したため、無駄な機能・ページが増えた
  • リニューアル費用ばかり膨らみ、改善の余力が残らなかった

Webマーケティングは “課題に応じた処方” が重要です。課題が明確でない状態でリニューアルに着手することが、失敗の大半を占めています。

まずは、現状サイトの分析、優先課題の整理、、必要な改善範囲の特定、といったプロセスを経て、「本当にリニューアルが必要か」「部分改修で十分か」を判断することが不可欠です。

テクノポートのご提案:スモールスタート(既存サイトの改修)からのマーケティング支援が可能

テクノポートでは、製造業に特化したWebマーケティング会社として最も大切にしているのは、“ムダな投資をさせず、成果に直結する改善から始めること” です。そのため、以下のような スモールスタート型の支援 を提供しています。

■ 既存サイトの課題診断

アクセス解析・導線分析・SEO診断などを通じ、「今のサイトのどこを改善すれば成果が出るのか」を可視化します。

■ 部分改修での成果最大化

必要なページのみを改善したり、導線設計を見直すだけで、大幅に問い合わせ数が改善するケースも多数あります。

■ 継続的なマーケティング伴走

  • コンテンツSEO
  • 記事制作
  • キーワード戦略
  • 効果測定と改善提案

など、製造業の勝ち筋に合わせたマーケティング施策を段階的に実行します。

■ リニューアルは「必要と判断されたタイミングで」実施

サイトがあまりに古く、更新作業がしづらかったり、セキュリティ面でリスクがあったり、スマホ対応が不足している場合には、別途リニューアルをご提案することがあります。しかし、私たちの実体験では、「サイトが古いから問い合わせが来ない」わけではありません。
多くのケースでは、必要なマーケティング施策を実行できていないことこそが、問い合わせ獲得のボトルネックになっています。

そのため、まずは既存サイトで実施できる改善施策に取り組み、アクセス動向やコンバージョン率などのデータを蓄積します。
そして、十分なデータが揃い、「今ならリニューアルによって得られる効果が大きい」と明確に判断できたタイミングで、全面リニューアルをご提案します。

まとめ:製造業のWebマーケティングは“小さく始めて、大きく育てる”が最適解

  • リニューアル前提で相談しない
  • 課題を特定した上で必要な範囲を改善する
  • 部分改修 → 効果測定 → 改善 のサイクルを回す
  • 投資判断はデータに基づいて行う

このプロセスこそが、無駄なコストを抑え、安定的な成果を生み出す最も確実な方法です。

Webマーケティングの遂行を妨げる要因と、それを乗り越えるための対処法について紹介しました。参考にしていただけましたら幸いです。

この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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