テクノポートの廣常です。
購買担当者や技術者は、Web上であらゆる媒体や企業Webサイトを閲覧し、自社の課題や要望を解決できる製品がないかを探し出します。限られた時間と、膨大な情報量の中から自社に目を留めてもらうには競合他社とは差別化された特長をWeb上で伝えていくことが重要です。
今回はメーカー向けに、Webサイトの差別化の方向性と商材別(素材・部品・完成品)の特徴を紹介します。
※本記事では「メーカー」=部材や製品を自社で製造・販売している会社として定義しています。
この記事の目次
メーカーにおける差別化の方向性
商材そのものが特異であれば差別化は容易ですが、たとえ競合他社と大きな差がなくとも、特定の業界に絞った訴求や自社の独自のサービス等を掛け合わせることで顧客の目を引き、問い合わせ率を高めることが可能です。
以下に、差別化の切り口を大きく5つ紹介します。
1. 製品特長での差別化
独自の機能性を有している、特許を取得しているなど、既に製品として大きな強みがある場合は差別化がしやすいです。その強みを軸に、サイトに訪れた技術者に対して伝わりやすい訴求をしていきましょう。
例 アベル株式会社
出典:アベル株式会社
事業内容:表面処理素材販売・ステンレス表面処理加工
自社素材である黒いステンレス材“アベルブラック”の優れた機能性、意匠性を、写真やイラストを用いてわかりやすく表現しています。
例 株式会社トリーエンジニアリング
事業内容:エアー(空圧応用)メカトロ装置等製造
自社製品の評価を表すため、受賞履歴や導入企業一覧を掲載。特設サイトでは他社製品との比較グラフを用いて、高性能な特長を具体的に明示しています。
2. 生産体制での差別化
自社の生産体制を軸に差別化するのも一つです。保有拠点や量産体制などについて言及し、安定供給への訴求へとつなげます。
例 株式会社サンヒル
出典:株式会社サンヒル
事業内容:ベアリング等の設計開発・製造
海外の生産拠点に関してTOPページで取り上げ、国内に限らない柔軟な生産体制をアピールしています。
例 三甲株式会社
出典:三甲株式会社
事業内容:プラスチック物流機器メーカー
自社グループの営業所、工場拠点の豊富さをTOPや企業情報ページにて訴求し、広いネットワークによる対応力が効果的に伝えています。
3. ラインナップでの差別化
取り扱う製品数や種類が多い場合は、その数を全面に出す形も考えられます。Webサイト上でも保有製品が一目でわかるように並べることで、視覚的なアピールが可能です。
例 有限会社井筒製作所
出典:有限会社井筒製作所
事業内容:ニッケル合金・チタン・ステンレスなどの製作・販売
TOPや取扱製品のページでは、六角ホースニップルをはじめとしたあらゆる部品が一覧でまとめています。取り扱いサイズの豊富さや、品番の詳細がひと目でわかる構成となっています。
4. ターゲットでの差別化
特定のターゲット、業界にささりやすい製品の場合はその内容に絞った訴求をすることをおすすめします。見てもらえるユーザーの母数は減りますが、その分引き合いにつながる可能性は高くなります。
例 株式会社エステーリンク
出典:株式会社エステーリンク
事業内容:集塵機、精密板金溶接加工、レーザー切断加工、バリ取り機製造
「バリ取り機」と大きくまとめると多くの製品が競合となり得ますが、板金加工向けに特化したバリ取り機の開発・サイトでの訴求により差別化を図っています。
5. サービス面での差別化
製品導入前のサービスや、アフターフォローなど製品以外の面で差別化を図るのも一つです。導入前後の手厚いサポートを訴求することで顧客の不安解消へとつなげます。
例 アシザワ・ファインテック株式会社
事業内容:粉砕機・分散機(ビーズミル)をはじめとする産業用粉体機器の開発・製作・メンテナンス
受託加工や実機テスト、技術コンサルティングなど多様なサービスを展開。産業用粉体機器の製作に留まらない対応力の広さが伝わります。
例 株式会社リソー技研
出典:株式会社リソー技研
事業内容:一般機械設計・組立・環境機器販売
自社製品の購入を考えているユーザー向けに、デモ機貸し出しや長期のレンタルサービスを実施。導入前のユーザーの懸念払拭に効果的です。
以上にてメーカーのWebサイトにおける方向性をおさえた上で、実際にどのようなコンテンツが活用できるかを商材別にご紹介します。
素材メーカーの差別化コンテンツ例
ゴムやガラス、化学素材、紙などといった素材を製造する素材メーカー。素材は製品を形成するための大元であるため、汎用性が高く、想定されるターゲットも様々です。自社で想定しきれていない用途もあるかもしれません。
特異な素材製造の場合
独自の機能性を有している、特許を取得しているなど、既に素材として大きな強みがある場合は差別化が容易です。その強みを軸に、サイトに訪れた技術者に対して伝わりやすい訴求をしていきましょう。
差別化要素
<素材関連>
- 素材の特長
- グレード、提供可能な形状の種類
- 類似素材との比較実験データ
- 想定用途、採用事例
<素材以外>
- サンプル品の提供(特異な素材を扱うことへのハードルを下げるため)
- 研究体制
一般的な素材製造の場合
一方、他社でも多く取り扱いがあるような、一般的な素材の場合は差別化が難しい場合があります。その際には自社のサービスや取引実績など他の面を訴求し、強みを補強します。
差別化要素
<素材関連>
- グレード、提供可能な形状の種類
- 異素材との比較実験データ(同素材と戦うのは厳しいため、異素材を例に挙げて代替提案をする)
- 想定用途、採用事例
<素材以外>
- 取引実績
- 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)
- 納品形態(追加工、組み立てなど)
※化学メーカーのWebマーケティングについては、下記により詳細の記事を用意しております。こちらもご覧ください。
部品メーカーの差別化コンテンツ例
電子部品・樹脂部品など、製品を形づくる部品を製造する部品メーカー。素材よりも用途が限られてくるため、自社のターゲットを想定しやすいという特徴があります。
特注製造の場合
特注製造がメインの場合、「どんな製品を製造できるか」といった生産能力に関する訴求が必要となります。
差別化要素
<部品関連>
- 対応可能な加工精度、材質、サイズ、ロット数
- 加工技術
- 製造事例
<部品以外>
- 納期、コストメリット
- VAVE提案事例
- 取引実績
- 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)
規格品製造の場合
規格品製造がメインの場合、同じ部品を扱っている会社と機能性や仕様で差を付けられず、差別化が難しい場合があります。この場合には部品スペック以外の自社の特徴を掲載し、強みを補強します。
差別化要素
<部品関連>
- 取り扱い製品のラインナップ
- 対応可能なロット数
- 製造事例
<部品以外>
- 納期、コストメリット
- VAVE提案事例
- 取引実績
- 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)
最終製品メーカーの差別化コンテンツ例
自動車、電子機器、工作機械など完成品を製造する最終製品メーカー。素材や部品と比べて、最も用途が明確でターゲットが定まっているため、そのターゲットに向けて適切に内容を伝えることが重要です。
差別化要素
最終製品となると、問い合わせが来るのは以下の2タイプが考えられます。
- 実際にその製品を使用したいユーザー
- その製品を活かし、協業や新製品の開発を考えているパートナー企業
製品を使うことでユーザーが得られる価値や、購入前の懸念を払拭するような内容、あるいは自社の製品企画・開発能力などを押し出していき、訴求していきましょう。
<製品関連>
- 製品スペック
- 課題解決事例
<製品以外>
- 生産体制(設備、拠点数等)
- アフターフォロー(定期メンテナンス等)
- 品質管理体制(検査体制、トレーサビリティなど)
- デモ機等貸出サービス(購入へのハードルを下げるため)
- 企画、開発能力
まとめ
商材別(素材・部品・完成品)に、メーカーのWebマーケティングにおいて重要な差別化についてを掘り下げて紹介いたしました。Webサイトを通じた顧客獲得を狙う際の参考となれば幸いです。