テクノポートの廣常です。製造業におけるデジタルマーケティングの活用は、日々進展しています。化学業界では長年の企業体質や特定の顧客との長い取引が中心であることから、他業界と比較してWebマーケティングの導入がやや緩やかな傾向がありました。
しかし近年、ユーザー側の情報収集や購買行動がWeb中心へとシフトしたことで、自社の素材や製品をより広く展開するためにデジタルマーケティングを導入する化学メーカーが急速に増加しています。さらに2026年現在では、検索エンジンのみならず、生成AIを活用して最適な材料や製品を探索するユーザーも出てきており、より多角的なデジタル対策が不可欠となっています。
この記事では化学メーカーに特化し、デジタルマーケティングの概要や成功のためのポイントを紹介します。
この記事の目次
化学メーカー様支援事例
AGC株式会社様

引用元:AGC株式会社Webサイト
同社ディスプレイのカバーガラスやその他製品を、北米をはじめとする英語圏の顧客へ拡販していきたいとのことでWebマーケティング支援のご依頼をいただきました。戦略立案、SEO対策・リスティング広告による集客支援、さらに公開後のアクセス解析と改善提案まで一貫したサポートをさせていただき、KGIとしていた有効問い合わせ数も達成することができました。
旭化成株式会社様

引用元:旭化成株式会社Webサイト
広く一般的なユーザーに向けて、自社技術に関連する新しいコンテンツを提供したいとのことでコンテンツ制作のご依頼をいただきました。プラスチックによるものづくり実務に従事した経験を持つライターをアサインし、一般エンジニア向けの学習コンテンツとして連載記事を展開。各テーマに関連する語句での上位ヒットや検索流入がみられています。
化学メーカーにおけるデジタルマーケティング
そもそもデジタルマーケティングとは、Webサイト、メール、SNSなどのあらゆるデジタル媒体から得られるデータを活用し、自社製品が売れる仕組みを構築することを指します。Webサイトを中心としたマーケティング活動のことを指す「Webマーケティング」よりも広い意味合いで用いられます。

専門的かつ、ニーズが多岐に渡る化学業界において、自社とマッチする新規顧客の開拓や会社のイメージづくりは容易ではありません。ですが、デジタルマーケティングを駆使すれば、リアル(対人)での活動よりも労力とコストを抑えながら、これらの課題を解決できる可能性が十分にあります。
デジタルマーケティングについて、より詳しく知りたい方は以下をぜひご覧ください。
化学メーカーならではのデジタルマーケティングのメリット
自社の素材・製品の可能性が広がる

化学メーカーにとってのデジタルマーケティングは、自社の素材・製品の可能性が広がるという観点で非常に効果的です。
化学メーカーはあらゆるモノの土台となる原料や中間製品を扱うことが多く、商材の可能性(用途)が広いため、マーケティング活動において「誰に」「何を」伝えるべきかを細かく絞りきれない場合もあるかと思います。
また、新素材・製品の場合は、自社で想定しきれていない用途を発掘するため、あえて訴求先を特定の業界に限定させたくないケースも考えられます。
そのため、広い業界・分野の中から自社で直接見込み顧客を探し出しアプローチをする、プッシュ型の営業活動・情報発信よりも、デジタルマーケティングを活用して集客〜問い合わせ獲得までの仕組みを構築し、自社商材を必要とする顧客自身から問い合わせが来るのを待つ方が効率的です。

また、これにより自社では想定していなかった顧客や用途での問い合わせなど、自社の素材・製品の可能性が広がることも期待できます。
化学メーカーがデジタルマーケティングを行う目的
化学メーカーがマーケティングを行う目的として、以下の3つが考えられます。
1. 顧客獲得
2. 認知度・イメージの向上
3. 新用途開拓
1. 顧客獲得
化学メーカーがデジタルマーケティングを行う目的として、第一に考えられるのは「顧客獲得」です。
今までは展示会や対人営業活動をメインに行っていたものの、以下のような課題を抱え、デジタルマーケティングの導入を検討し始めるケースがよく見受けられます。
<化学メーカーの顧客獲得における課題>
- かつてはパイオニアとして自社の商材が高い市場シェアを占めていたが、競合他社の台頭によりシェアが下がってきているため奪回したい
- 既存顧客からの売上が徐々に減ってきており、新規顧客獲得の必要性に迫られている
- 展示会など既存の顧客獲得手法だけでは目標とする顧客獲得数を達成できていない
2. 認知度・イメージの向上
次に考えられるのは「認知度・イメージの向上」です。
化学メーカーの中でも、特に川上・川中の工程を担う場合、最終製品として日々目に触れる機会もないため、社名や製品の知名度が低い傾向にあります。
そのため、「自社が何を作っている会社かを知ってもらいたい」「『〇〇材といえば自社』というイメージづくりをしたい」など、認知度・イメージの向上を目的にデジタルマーケティングを活用することが考えられます。
3. 新用途開拓
最後に挙げるのが「新用途開拓」です。
新素材や製品を開発できたものの、明確な用途が定まっていない(見つけきれていない)といった場合もあるかと思います。
そういった状況にも、デジタルマーケティングを活用して情報を発信することで、協業パートナーとの出会いや新たな用途を開発できる可能性があります。
化学メーカーならではのデジタルマーケティング上の課題
前述のような目的をもってマーケティングを進める中で、化学メーカーならではの障壁がいくつか考えられます。
1. 商材の特徴、機能を理解してもらいにくい
2. 他社との差別化がしにくい
3. 新規開発品の訴求が難しい
1. 商材の特徴、機能を理解してもらいにくい
原料や誘導品を製造されている場合に特に当てはまる課題ですが、専門的な分野であるため「商材の特徴、機能を理解してもらいにくい」といった恐れがあります。
例えば素材の品番や関連情報をただ列挙しただけでは、同業者には理解されても、ターゲットとなる中間・最終製品メーカーにせっかくの製品の魅力が伝わらない場合があります。
デザイナーや一般消費者など、製造業界以外のユーザーに向けて訴求したい場合は、なおさら製品の見せ方への工夫が問われます。
2. 他社と品質面での差別化がしにくい
扱われている商材が基礎化学品や汎用的な素材である場合、品質や機能で差がつかず、他社との差別化がしにくいケースがあるかと思います。
見込み顧客は問い合わせ前に情報収集を行い、複数の競合他社を比較した上で企業を選定し、問い合わせを行います。この場において、たとえ品質や機能面で差がなくとも自社を選んでもらえるよう、異なった切り口での訴求や、Webサイトの内容・仕様を工夫することが重要です。
3. 新規開発品の訴求が難しい
新素材・製品を開発した場合、採用実績等がまだ足りず、自社内でも用途を模索途中だという状況も考えられます。その場合、マーケティング活動において重要な「誰に」「何を」発信していいかが分からない、もしくはあえて限定せず、広く問い合わせが欲しいといったケースが想定されます。
この場合には、業界や用途を絞らずとも自社の商材を必要としている見込み顧客に情報が届くよう、集客媒体や手法、切り口を検討する必要があります。
化学メーカーのデジタルマーケティング施策(SEO・AI対策等)
目的と課題を踏まえた上で、化学メーカーが具体的に取り組むべき施策を「①集客」と「②訴求」の2点に分けて解説します。
① 集客:自社のことを知らない層にアプローチ
「社名や製品名でしか流入がない」という課題は、多くの化学メーカーが直面する壁です。まだ自社を認知していない見込み顧客にアプローチできるよう、集客の手段と切り口を考えます。
集客手段例
- SEO Google等の検索エンジンでユーザーが情報を探索した際に上位表示されるよう、対策を行います。
- AI流入対策 生成AIがユーザーの質問に対して「〇〇社の素材が最適です」と回答するよう、構造化データや信頼性の高い技術論文データを整理して公開します。
- 製品データベース 化学業界の場合は、同種類の製品を集めたデータベースが多く存在します。Webサイトとは別の経路として掲載を検討してみることもおすすめします。(データベース、マッチングサイトの事例はこちら)
集客切り口
■ 機能・用途・課題
見込み顧客は、具体的な製品名ではなく「耐熱 フィルム」といった、自身が求めている機能や抱えている課題で探索を行います。
このような内容で調べられた際に自社製品がヒットするよう、各種機能や解決できる課題に関するコンテンツを掲載しておくことを推奨します。
検索語句例:「耐熱 フィルム」「ゴム 耐摩耗性向上」「防水コーティング剤」
■ 競合製品・代替品
そもそもどのような製品を導入するか決まっていない場合は、競合製品や全く違うジャンルの製品、技術を軸に探索される可能性があります。
自社製品が選択肢に入っていない(気づいていない)ユーザーにもアプローチできるよう、競合製品や代替品でもヒットするように対策をかけると、ユーザーの幅が広がります。
対策例:金属表面の滑りを良くするために、「めっき」技術を探しているユーザー
→ 「めっき技術の代替となるコーティング剤〇〇(自社製品)」と銘打ち、めっき技術のみ検討していたユーザーに自社製品の検討も組み入れてもらう
② 訴求:問い合わせまで誘導
集客したユーザーを確実に成果へつなげるには、商材の特性に合わせた見せ方の工夫と、心理的なハードルを下げる設計が必要です。
製品訴求
サイトでは自社以外の人にも素材の特長をつかんでもらえるよう、情報を噛み砕いて訴求する必要があります。
コンテンツ例:製品用途、特長、顧客事例、試作事例、紹介動画
特に原料や誘導品を扱われている化学メーカー様の場合は、素材をそのまま載せても製品化のイメージをつかんでもらえない恐れがあります。その場合には以下のような見せ方の工夫が必要となります。
- 他の一般的な素材との比較実験データを示す
- 原料そのままではなく、試作品を例示し製品化のイメージをもたせる(顧客との実例がない場合は自社で内製)
- 動画やイラストによって視覚的に訴求する
また、扱われている商材が基礎化学品や汎用的な素材で、品質や機能で差がつかない場合はそれら以外の訴求要素を探し出し、差別化を図ります。
コンテンツ例:二次加工技術、低コスト、量産性、短納期、研究体制、工場立地
自社の訴求内容とは別にWebサイトの利便性を向上させるのも一つです。自社が保有する素材を分かりやすく整理したり、顧客のニーズに合わせた検索機能などを設けることによって、雑然と情報が並んでいるサイトよりも優位に立てる可能性があります。
見込み顧客との接点強化(リード獲得)
情報収集段階の見込み顧客にとって、いきなり問い合わせをするのはハードルが高いものです。そのため、問い合わせ以外でも見込み顧客と接触できるよう、接点増加のための施策を導入することも効果的です。
- ホワイトペーパー:自社製品に関するホワイトペーパーを制作し、ダウンロードさせる仕組みへ
- サンプル提供: テストピースや試作品を承る旨を目立つ位置に掲載
- ウェビナー: 自社製品に関する知識や採用事例の紹介、質問への回答など
まとめ
当記事では化学メーカーにおけるデジタルマーケティングの概要や具体的な施策例を紹介しました。商材の特性上、マーケティングを行う上での障壁はあるものの、自社製品の可能性を広げるという点で、デジタルマーケティングは非常に相性の良い活動だと考えます。せっかくの自社商材の魅力を効果的に伝えられるよう、ぜひ活用されることをおすすめします。
また、弊社テクノポートでは製造業に特化したマーケティング支援を行っております。どのように自社製品を訴求していけばいいかお悩みの方は、ご相談だけでもお気軽にお問い合わせください。
