テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。
英語ランディングページ制作時の注意点と題して、制作時にコンバージョン率(問い合わせ獲得率)を上げるため注意するべき点をまとめました。ランディングページ制作時だけではなく、英語ランディングページの改善時にも役立つ内容です。
この記事の目次
【注意点1】文章は読まれない
英語ランディングページに限らず、一般的にWebサイトを訪問するユーザーはWebサイト内の文章は読みません。Dejan MarketingのWebサイト上のアイトラッキング(目線の動き)を調査した結果によると、Webサイトの文章を一字一句読む人は全体の16%しかいないことがわかっています。(出典:Here’s Why Nobody Reads Your Content)
Webサイト内の文章を読まない理由としては、以下のような理由が挙げられています。
Webサイトの文章を読まない理由 | 理由として挙げた人の割合 |
---|---|
迅速に答え(求めている情報)を見つけたい | 56% |
文章が長すぎて読む気がしない | 47% |
読んでいるうちに興味を失う | 43% |
レイアウトやテキストのフォーマットが悪い | 38% |
読みにくい、または混乱する文章 | 18% |
ウェブサイトを信用していない | 18% |
その他 | 7% |
この数字は、私の肌感覚(ユーザーの動きをレコーディングで観察した結果)からも大きく外れていないと感じます。
またNielsen Norman Groupの調査によると、Webサイト訪問者は全体のテキストの約20%しか読まないことがわかっています。また同調査によると、読まれやすいコンテンツとして以下のようなものが挙げられています。(出典:How Users Read on the Web)
Webサイトの内の文章の種類 | 注視される割合 |
---|---|
ページ上部の要約 | 98% |
見出し(ヘッドライン) | 98% |
画像に付与されるキャプション | 90%以上 |
上記の結果を考慮すると、英語ランディングページに訪れたユーザーを文章で説得したり、文章を読んでもらうことで理解を促進させようとしたりする姿勢は失敗しやすいといえます。またWebサイトのコンテンツを上から起承転結になるように並べたりといった、ユーザーが文章を読むことを前提としたような構成はうまくいかないと思った方がよいです。
【注意点2】特徴に興味はない
私がランディングページの分析やユーザーインタビューをしているときに感じることは、ほとんどのユーザーが(Webサイトで紹介されている)製品/サービスの特徴に興味はないということです。ここで言う「特徴」とは、以下のような内容です。
省スペース設計 – 効率的な作業空間を実現するためのコンパクトなデザイン。
多様な用途に対応 – さまざまなアプリケーションに適した豊富なモデルを提供。
高い信頼性 – 優れた品質と信頼性で、安心して利用できるソリューション。
なぜこれらの情報が読み飛ばされるかについては、大きく2つの要因があると考えます。
1つは、単純にこのような特徴に興味関心がないからという理由が考えられます。Webサイトに訪れるユーザーは、何か特定の情報/製品/サービスを探していることがほとんど(全体の96%)であり、彼らが知りたいのはその製品/サービスがどんな価値(ベネフィット)をもたらすかに集約されます。すなわち、彼らが知りたいのは「(製品が主語の)特徴」ではなく「顧客がどんな利益を得ることができるのか?」といえます。
もう1つは、文章で書かれた特徴に説得力(信憑性)がないためです。特に上記のような言葉だけの訴求になると、ユーザーは「何を根拠にそのような主張ができるのか?」「他の会社も同じようなことを言っているが具体的に何が違うのか?」と疑問を持ちます。したがって、上記のような言葉だけの訴求はほとんどのユーザーにとって意味をなさないコンテンツになることが多いのです。
【注意点3】内容は勝手に解釈される
注意点1「文章は読まれない」とも近いですが、英語ランディングページを訪問するユーザーは多くの場合、ページ内のコンテンツを自分の都合がいいように解釈することがあります。
これを確かめるためには、ランディングページを訪れる可能性のあるユーザーに対してユーザーテスト(ランディングページの行動観察とヒアリング)をするとよくわかります。弊社でもWebサイトの内容がこちらの意図する形で伝わっているかを確認するために定期的に実施しており、実施するたびにWebサイトに設置されている画像が思わぬ形で内容が理解されていたり、文章が誤って解釈されていたりと多くの発見があります。
特に多くの日本語話者にとっての第二外国語となる英語に関しては、上記のようなコミュニケーションの齟齬が発生する可能性は非常に高いといえます。
【注意点4】表示速度は遅れる
これはテクニカルな話になりますが、北米やヨーロッパをはじめとする英語ランディングページのターゲット地域において、ランディングページの表示速度が遅れることがあります。
これは弊社の調査結果でも明らかになっており、サーバーの設置位置からの直線距離が長くなるほど、Webサイトの表示速度は遅れることがわかっています。
「サーバーの設置場所」が表示速度に与える影響(東京に拠点のあるレンタルサーバーを使用したWebサイトの表示速度)
測定場所 | 直線距離, km | First Byte | Start Render | FCP | Speed Index | LCP |
---|---|---|---|---|---|---|
Tokyo | 0.00 | 0.386 | 1.6 | 1.385 | 5.969 | 2.047 |
Sydney | 7,881.56 | 0.892 | 2.2 | 2.136 | 7.155 | 2.299 |
London | 9,569.05 | 1.502 | 2.9 | 2.746 | 7.489 | 3.005 |
Virginia | 10,985.66 | 1.502 | 2.9 | 2.746 | 7.489 | 3.005 |
Cape Town | 14,726.41 | 1.732 | 3.4 | 3.22 | 8.245 | 3.484 |
Sao Paulo | 18,490.40 | 1.593 | 3.2 | 2.986 | 7.657 | 3.255 |
直線距離との相関係数 | 0.90 | 0.92 | 0.92 | 0.88 | 0.89 |
したがって、英語ランディングページの制作時には、サーバーの設置位置によりページの表示速度が影響を受ける可能性は考慮する必要があります。
また別の調査ではWebサイトの表示速度が0.1秒改善するごとに、ユーザーのエンゲージメント率が8%と改善するという結果も報告されています。(出典:Web Design Statistics 2022 – What You Need to Know.)したがって、ランディングページの表示速度はユーザーの行動に大きな影響を与えることがわかります。
【注意点5】デザインは重要
英語ランディングページのデザインは、BtoBであっても重要であることがわかっています。Stanford Web Credibility Researchの調査結果によると、75%のユーザーが会社の信頼性をWebサイトのデザインにより判断していると回答しています。(出典:The Web Credibility Project: Guidelines – Stanford University)
また別の調査によると、38%のユーザーがWebサイトのデザインが魅力的でない場合Webサイトの閲覧をやめる、と回答しています。(出典:20+ Crucial Website Statistics [2023]: How Company Success Depends On A Good Website – Zippia)
これらの結果を見る限り、BtoB企業の英語ランディングページにおいてもデザインは非常に重要な要素になることがわかります。Webサイトのコンテンツをより多くの人に見てもらためには、ユーザーエクスペリエンスを損なわない形でデザインにも気を配っておく必要があります。
英語ランディングページ制作時のベストプラクティス
最後に英語ランディングページ制作時に考慮しておくべきポイントを3つ紹介します。
【ポイント1】視覚的に訴求する
これまでの内容からもわかるように、ユーザーはほとんどテキストを読みません。したがって英語ランディングページを制作する際は、文章を読まなくても意味がわかるような設計にすることが非常に重要です。視覚的に訴求するという方法は、その中でも有効な手法の一つです。
例えば、以下の企業のランディングページでは、ランディングページの最も目立つ箇所にサービスの概要がわかる動画が設置されています。
また動画だけでなく、以下のような画像を用いた視覚的な訴求も、ユーザーの理解を促進するために有効なコンテンツになります。
出典:Aeramax PRO – Cleaner air technology
また製作実績を画像として掲載することで、視覚的な訴求に有効なコンテンツができます。
【ポイント2】価値を訴求する
2つ目は、ユーザー目線になり、ユーザーにとっての価値を伝えるコンテンツを掲載することです。例えば、以下のハンディタイプの三次元測定機を扱う企業のWebサイトでは、ユーザー目線からどのような価値が提供できるのかが、わかりやすく訴求されています。
出典:HandyPROBE Next | Portable CMM
出典:Protolabs Network | On-demand manufacturing for custom parts
上記のように、製品やサービスの特徴をそのままユーザーに伝えるのではなく、「その特徴がユーザーにとってどのような価値があるのか」を訴求することがより製品/サービスの魅力を高めるといえます。
【ポイント3】数字で訴求する
また文章を読まなくても理解できるように、重要な数字を強調する形で定量的に訴求することもできます。よくある例として、以下のような会社の信頼性を数字で訴求するパターンがあります。
出典:Why manufacture with Protolabs?
また別のパターンとして、製品やサービスの信頼性を訴求する際にも、数字による定量的な訴求は有効です。
出典:Complete 3D Measurement with Traceable Accuracy | 3D Scanner CMM VL Series | KEYENCE America
まとめ
英語ランディングページ制作時の注意点を5つ紹介しました。
- 【注意点1】文章は読まれない
- 【注意点2】特徴に興味はない
- 【注意点3】内容は勝手に解釈される
- 【注意点4】表示速度は遅れる
- 【注意点5】デザインは重要
共通するポイントとして、ユーザーは合理的ではなく、直感に頼って判断をしているということです。したがって、英語ランディングページ制作する側としては、上記のようなユーザーが来ることを前提に、ユーザー目線で彼らの合理性に合わせた設計をすることが重要になります。今回紹介した内容が、少しでもお役に立てば幸いです。