LinkedInで海外進出をスモールスタートする戦略|BtoB製造業向け

【執筆者紹介】太田真琴
この記事の執筆者
太田真琴
会社名:テクノポート株式会社 海外Webマーケティング担当

【経歴】
大阪大学理学研究科化学専攻を修了後、SEとして組み込みシステム開発に6年間従事。通信基地局の冗長化システムやRFIDを用いたドア認証システムなど、多様な開発経験を積む。その後、開発も面白いが技術を伝える仕事もしてみたいと思い立ち、1日10時間の勉強を約8ヵ月間継続して、フリーランスの技術翻訳者として独立。以降、技術リサーチやサイエンスライティング、広報と業務の幅を広げる中で、世の中のさまざまな技術に触れ、日英の両方でその魅力を伝えてきた。

Webマーケティングを通して技術系企業の海外進出に貢献したいという思いが強くなり、2025年5月にテクノポートへ入社。
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テクノポートの太田です。弊社ではBtoB製造業向け「海外向けWebマーケティング」サービスを提供しています。

BtoB製造業にとって、海外進出は企業の成長を大きく左右する重要な取り組みです。しかし、いざ海外展開を進めようとしても、「海外展示会への出展はコストがかかりすぎる」「本格的な英語サイトを制作するリソースやノウハウがない」「そもそも何から手をつければ良いのかわからない」といった課題に直面するケースも多いのではないでしょうか。

そういったときに足がかりとなるのが、ビジネス特化型SNSのLinkedInです。今回の記事では、「まだ海外に向けたWeb施策や情報発信にそこまで力を入れられていない」というBtoB製造業の担当者に向けて、「LinkedInを活用して海外進出をスモールスタートする方法」をご紹介します。

LinkedInを活用するための具体的な手順にも触れている実践的な内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
(※LinkedInを活用したマーケティングにはコンテンツ発信、広告、ダイレクトメッセージの3つがありますが、本記事ではコンテンツ発信とダイレクトメッセージに特化して解説します)

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この記事の目次

BtoB製造業がLinkedInを海外進出に活用するメリット

メリット1:海外で高いシェアを誇る

LinkedInは海外で多くのユーザーに使用されています。国別では以下のように、アメリカやインド、ブラジル、中国などでのユーザー数が多い傾向にあります。2025年5月時点では全世界でのユーザー総数は11.5億人を超えるといわれています(出典:How Many People Use LinkedIn In 2025)。

LinkedInのアクティブユーザー数(※LinkedInを一定期間内に1回以上利用しているユーザーの数)
米国 2億4,000万
インド 1億4,000万
ブラジル 7,800万
中国 5,800万
イギリス 4,300万
フランス 3,300万
インドネシア 3,200万
カナダ 2,600万
メキシコ 2,500万
イタリア 2,200万

メリット2:ビジネスに特化しており、海外ではマーケティングで積極的に活用されている

LinkedInは、他のSNSと比較してビジネス用途に特化しています。

BtoB領域ではLinkedInが最も広く利用されており、特に北米では製造業の購買担当者の76%、マーケターの85%が活用しているというデータもあります(出典:The Top Social Networks With B2B Marketers)。さらに、BtoBリードの約80%がLinkedInから生まれており、他のSNSと比較してもリード獲得の成果が高いとされています(出典:LINKEDIN CONTENT MARKETING TACTICAL PLAN NEW FOR 2019)。

出典:LINKEDIN CONTENT MARKETING TACTICAL PLAN NEW FOR 2019

メリット3:ターゲットと「つながり」を作ることで効率的に情報を届けられる

LinkedInでは、ユーザーが自身の職歴やスキル、学歴などを詳細に公開しており、互いに「つながる」ことで人脈を広げています。つまり、LinkedInは、実社会のビジネスネットワークをオンラインで再現する場だといえるでしょう。

自社のターゲットとつながることができれば、彼らのネットワークに自社の情報を届けられるようになります。これは、ターゲットとの継続的な関係構築や信頼関係の醸成に効果的です。

海外進出に向けたオンライン施策はLinkedInからスモールスタートする手もあり!

BtoB製造業が海外進出を目指す際の代表的なオンライン施策としては、海外向けWebサイトの制作やLinkedIn運用が挙げられます。理想を言えば、これら両方を実践し、例えばLinkedInでつながったターゲットをWebサイトに誘導して問い合わせにつなげる、といった連携が最も効果的です。

しかし、海外向けWebサイトの制作には非常に時間と手間がかかります。市場調査からサイト構造の設計、コンテンツ制作まで、多岐にわたる準備が必要です(日本語サイトを単に翻訳するだけでは、期待する成果が得られないケースがほとんどです)。つまり、ウェブサイト制作は海外展開のスタートを遅らせる要因となる恐れがあります。

そこで、まずはオンライン施策をLinkedInだけでスモールスタートするという手も有効です。

LinkedInのアカウントを作成して投稿できる状態を整えるのに、それほど時間はかかりません。さらに、LinkedInでは「とりあえず何か投稿してから反応を見る」といったテストマーケティングが手軽にできるため、ターゲットの反応を見てから海外における自社の訴求ポイントを明確にし、それをWebサイト制作時の方針として活用することもできます。また、LinkedInで獲得した「つながり」は自社の財産としてさまざまなマーケティング活動に活用できるため、LinkedInを少しでも早く始めてつながりを増やしておくのは非常に意味があることです。

【具体的な手順】Linkedinで海外進出をスモールスタートする方法

続いて、LinkedInを活用して海外進出をスモールスタートする具体的な手順を6ステップで紹介します。無料ですぐに始められるので、ぜひ試してみてください。

Step1: マーケティング担当者の個人アカウントを作成する

最初に、以下の手順でマーケティング担当者の個人アカウントを作成します。

  1. LinkedIn登録ページに移動する
  2. メールアドレスとパスワードを入力し、「同意して登録」を押下する
  3. 性、名を入力する
  4. 指示に従って、職種や会社名の入力やメール認証などを進める
参考:LinkedIn登録ページ

Step 2. Step 1で作成した個人アカウントから企業ページを作成する

LinkedInには「企業アカウント」というものはなく、個人アカウントから企業ページを作成する必要があります。そこで、Step 1で作成した個人アカウントから企業ページを作成しましょう。

  1. 個人アカウントにログインした状態で右上の「ビジネス向け」アイコン(9つのドット)をクリックし、下部に表示される「会社ページを作成」を押下する
  2. ページタイプを選択するページになるので、「会社」を選択する
  3. 会社名や業種、所在地などの必要項目を入力してページを作成する
参考:会社情報の入力ページ

企業ページを作成した後は、カバー画像や紹介文などを追加し、ページを充実させておきましょう。また、必要であれば「サービスページ」(自社のサービスやビジネスを紹介する専用のページ)も追加します。

参考:弊社企業ページ内に作成した「サービスページ。」弊社が提供しているサービスの情報を記載している。

Step 3. 社員全員の個人アカウントを作成して企業ページと紐づける

続いて、社員全員のLinkedIn個人アカウントを作成して、Step 2で作成した企業ページに「従業員」として紐付けます。個人アカウントで「職歴」を登録する際に、「会社または組織」のプルダウンからStep 2で作成した企業ページを選択することで紐付けが可能です。

参考:「職歴」の登録画面。「会社または組織」のプルダウンで表示される候補企業から自社を選択する

このように紐付けを行うことで、企業ページの「従業員」タブ内に従業員のアカウントが表示されるようになります。こうすれば、自社に興味を持ったターゲットが企業ページを訪れた際に、自社の社員にダイレクトメールなどで直接コンタクトをとってくれる可能性も高くなります。

参考:弊社企業アカウントで「従業員」タブを開いた画面。「つながりの提案」の下に弊社従業員のアカウントが表示されている。

企業アカウントと同様に、個人アカウントのプロフィールもできるだけ埋めるようにしましょう。個人アカウント作成直後はプロフィールがほぼ埋まっていない状態なので、学歴やスキル、職歴、自己紹介文、顔写真などを追加で設定する必要があります。今回は海外展開が目的なので、情報は全て英語で入力するようにしましょう(※LinkedInには言語別のプロフィールを作成する機能もあるので、こちらを利用して日本語プロフィールと英語プロフィールを別々に作成する方法もあります)。

プロフィールは可能であれば80%以上埋めましょう。LinkedInのプロフィールは充実度に合わせて「Beginner」「Intermediate」「Advanced」「Expert」「All-Star」にランク分けされており、「All-Star」ランクになると自分の投稿がより拡散されやすくなります(出典:What Is LinkedIn All-Star Status — and Why It Matters)。

Step 4. 企業ページや個人アカウントでコンテンツを発信する

LinkedInでのマーケティングを成功させるには、企業ページと社員の個人アカウントの両方で戦略的にコンテンツを発信し続けることが重要です。

企業アカウントからは製品情報、技術解説、業界ニュースなどを定期的に投稿し、自社の専門性やブランド力をアピールしましょう。

一方、個人アカウントからは個人の専門性や知見に基づいた投稿を行うことで、より人間味のある、信頼性の高い情報発信ができます。ビジネスに関する内容を普段から継続的に投稿しておけば、ターゲットにつながり申請を送った際の承認率も高くなります。これは、相手があなたの普段の投稿を見て「この人は信頼できる」「ビジネスで役立つ情報を持っている」と判断する確率が高くなるためです。

参考:企業ページの投稿例

投稿するコンテンツの具体例については、以下の記事もご覧ください。

Step 5. 自社のターゲットにつながりリクエストを送る(過去に交換した名刺も有効活用)

企業アカウントや社員の個人アカウントのコンテンツが充実したら、自社のターゲットをLinkedInで探し、「つながりリクエスト」を送りましょう。申請が承認されれば、彼らのタイムラインに自社の投稿が届くようになり、継続的な情報発信が可能になります。

参考:相手のプロフィールページにある「つながりを申請」ボタンを押下して、つながりリクエストを送信する。

過去の名刺も有効活用できます。もしこれまで海外のターゲットと名刺交換をしたことがある社員がいれば、その社員の個人アカウントから彼らをLinkedInで探し、つながり申請を送りましょう。

つながり申請を送信する際には、任意のメッセージを添えることができます(ただし、無料版では月3回・最大200文字の制限あり)。例えば、相手の過去の投稿から自分との共通点を見つけてそれに言及したり、相手企業の課題と自社製品の特徴を紐づけて訴求するメッセージを添えたりすれば、つながり申請の承認率も自ずと高くなります。

Step6. つながったターゲットにダイレクトメッセージを送る

LinkedInでつながった相手には、1:1のダイレクトメッセージを送信できるようになります。これにより、相手のニーズに合わせた個別の営業アプローチが可能となります。

なお、無料版ではつながりのある人にしかダイレクトメッセージを送信できませんが、有料版(Premium BusinessやSales Navigatorなど)では、つながりのない人に対しても「InMail」と呼ばれるメッセージを送信できます(送信回数の上限あり)。必要に応じて、有料版の使用も検討してみてください。

また、社員の個人アカウント宛ではなく、企業ページにダイレクトメッセージが来るケースもあります。そのため、あらかじめ企業ページの運用担当者を決めておき、企業メッセージにダイレクトメッセージが来た際には、担当者が迅速に対応するようにしましょう。

参考:弊社の企業ページ。左側メニューの「受信ボックス」に個人アカウントからダイレクトメッセージが来る場合もある

LinkedInのダイレクトメッセージを活用した営業方法については、以下の記事もぜひご覧ください。

Step7. 定期的に効果測定を実施する

運用中は、定期的に効果測定を実施しましょう。投稿のインプレッション数、いいね数、コメント数などを定期的に確認し、どのコンテンツが効果的だったのか、どのような改善が必要かを分析します。

【英語ができなくても大丈夫!】生成AIで英語のプロフィールや投稿文を効率的に作成しよう

ここまで読んで、「とはいえ、英語ができないから無理だよ……」と感じている方も安心してください。ChatGPTなどの生成AIを活用すれば、英語でのプロフィール作成や投稿文、DM文章作成を効率的に進めることが可能です。以下にいくつか例を示します。

  • 投稿文の作成:自社のWebサイトやパンフレットの情報をAIに読み込ませることで、製品や技術の特徴を捉えた魅力的な英語の投稿文案を生成できます。これにより、専門知識が求められる製造業の技術的なコンテンツもスムーズに作成可能です。
  • ダイレクトメール文章の作成:例えば、送付相手の過去の投稿と自分のプロフィール情報をAIに読み込ませた上で「両者の共通点を見つけ出して、その内容を盛り込んだ英語のダイレクトメールの文面を考えて」などと指示すれば、送付相手に最適化した英語の文章案をすぐに生成できます。

生成AIを上手に活用して、英語の壁を乗り越え、LinkedInでの海外マーケティングを積極的に進めていきましょう。

LinkedInでの海外進出をより効果的に進める3つのポイント

ここでは、LinkedInでの海外進出をより効果的に進めるために、ぜひ押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

ポイント1. 企業のトップが個人アカウントで積極的に発信する

LinkedInは「個人間のつながり」を重視しており、「個人アカウントの投稿」の方が「企業ページの投稿」よりも拡散されやすい仕組みになっています(出典:LinkedIn – Personal Profile vs Business Profile: A Complete Guide)。

特に、最高経営責任者(CEO)の投稿は、一般ユーザーの投稿と比較してエンゲージメントが4倍高くなるとも言われています(出典:LinkedIn Sees Sudden Rise in CEO Engagement)。そのため、企業のトップが個人アカウントで積極的に発信することが効果的です。

「忙しいからとても投稿なんて無理だ」という経営者の方も多いとは思いますが、週に1回程度の投稿でも十分なので、ぜひ時間を確保してみてください。

ポイント2. 社員全員で投稿を拡散する(LinkedInは総力戦!)

企業の投稿を社員の個人アカウントで積極的に拡散することも非常に有効です。社員が企業の投稿に「いいね」したり、コメントを添えて再投稿したりすることで、その社員のつながりネットワークにも企業の投稿を届けることができます。全社員が協力して企業の情報を多角的に広める「総力戦」の意識を持つことが重要です。

ポイント3. 展示会などのオフライン施策と連携させる

海外の展示会に参加する場合、展示会で話したいターゲットと事前にLinkedIn上でつながり、自社の資料提供やサービス紹介といった「オンライン商談」を実施しておくのが効果的です。オンライン商談で自社に興味を持ってくれたターゲットに対して現地で2回目の商談を実施すれば、現地での商談成功率を上げることができるでしょう。

海外進出で活用されるその他の施策との比較

ここまではLinkedInに特化して話してきましたが、実はBtoB製造業が海外進出する際の施策としては、LinkedIn以外にもさまざまな方法が考えられます。以下にLinkedInを含む代表的な施策のメリットやデメリットをまとめますので、自社に合った施策を検討する際の参考にしてみてください(※海外展開の施策としてはSNS広告やリスティング広告などもありますが、今回は広告以外の手法のみを比較します)。

施策 メリット デメリット 費用感 準備期間 リーチ速度・拡散性
LinkedIn(コンテンツ投稿・ダイレクトメッセージ)

・ビジネス層に直接リーチ可能
・スモールスタートが可能

・つながりが少ない段階では効果が限定的
・できるだけ多くの社員の協力が必要
0〜数万円/月 1〜3日 ★★★ 投稿直後(つながりの数に依存)
海外向けWebサイト ・検索流入を長期で獲得できる資産

・製品情報を網羅的に提示でき、営業が使いやすい
・ブランディング効果が高い
・問い合わせにつながりやすい

・市場調査・競合分析・コンテンツ制作に時間と費用がかかる
・初期費用や運用費用がかかる
・検索上位に表示されるまでに時間がかかる
数十万〜数百万円 数ヶ月 ★★ SEOが育つまで半年程度はかかる
海外展示会

・直接顧客と会話できる
・製品の実物を見てもらえる
・一度に多くのリードを獲得できる可能性がある

・ブース準備や渡航・輸送にコストがかかる

・準備に手間と時間がかかる

数百万円 半年程度 ★★ 会期中に集中

上記の表にある海外向けWebサイトの制作についてくわしく知りたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。


また、今回扱わなかった海外向けのWeb広告についてくわしく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

まとめ

本記事では、BtoB製造業がLinkedInを活用し、海外進出をスモールスタートする方法を解説しました。本記事で紹介した手順に沿って、生成AIの活用や全社的な協力体制を組み合わせながら運用することで、海外ターゲットとの有効な接点を構築できるはずです。ぜひ、本記事の内容を実践してみてください。

弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB企業向けに「海外向けWebマーケティング」を支援しています。「壁打ち相談会(30分)」にて、お客様の課題に合わせて適切な施策をご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
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この記事の執筆者
太田真琴
会社名:テクノポート株式会社 海外Webマーケティング担当

【経歴】
大阪大学理学研究科化学専攻を修了後、SEとして組み込みシステム開発に6年間従事。通信基地局の冗長化システムやRFIDを用いたドア認証システムなど、多様な開発経験を積む。その後、開発も面白いが技術を伝える仕事もしてみたいと思い立ち、1日10時間の勉強を約8ヵ月間継続して、フリーランスの技術翻訳者として独立。以降、技術リサーチやサイエンスライティング、広報と業務の幅を広げる中で、世の中のさまざまな技術に触れ、日英の両方でその魅力を伝えてきた。

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