【BtoB製造業・海外販路開拓】海外進出する国の選び方は?おすすめの国も紹介

【執筆者紹介】太田真琴
この記事の執筆者
太田真琴
会社名:テクノポート株式会社 海外Webマーケティング担当

【経歴】
大阪大学理学研究科化学専攻を修了後、SEとして組み込みシステム開発に6年間従事。通信基地局の冗長化システムやRFIDを用いたドア認証システムなど、多様な開発経験を積む。その後、開発も面白いが技術を伝える仕事もしてみたいと思い立ち、1日10時間の勉強を約8ヵ月間継続して、フリーランスの技術翻訳者として独立。以降、技術リサーチやサイエンスライティング、広報と業務の幅を広げる中で、世の中のさまざまな技術に触れ、日英の両方でその魅力を伝えてきた。

Webマーケティングを通して技術系企業の海外進出に貢献したいという思いが強くなり、2025年5月にテクノポートへ入社。
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テクノポートの太田です。弊社ではBtoB製造業向け「海外向けWebマーケティング」サービスを提供しています。

今回の記事では、BtoB製造業が海外進出先(今回は特に販路開拓先)を選ぶ際の調査項目・調査手順と、販路開拓先としておすすめの国・地域を紹介します。

「自社製品の販売先を海外に広げたいけど、どの国で販売すればよいのかわからない」「海外進出時に調査すべき内容や、気をつけるべきことが知りたい」という方は、ぜひ本記事をご覧ください。

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海外進出する国(販路開拓先)を選ぶ基準

自社製品の販売を狙って海外進出する際に特に確認すべきは、下記の3つです。

  • 市場規模
  • 市場の成長性
  • 市場の成熟度(例:価格以外の価値がどの程度理解されているか)

上記3つのうち、多くの企業がまず確認するのは「市場の大きさ」と「市場の成長性」でしょう。しかし、「市場の成熟度」も同じくらい重要です。例えば、どんなにその国での市場が大きかったとしても、市場の成熟度が低く、低価格の製品のみが売れている状況の場合、現地企業との価格競争に勝つのは厳しくなります。

また、市場全体が急速に成長しているとしても、現時点ではまだ自社製品の入る余地がない場合もあります。一方で、デザインや機能などの付加価値を重視する顧客が多い国では、現時点で市場規模が小さくその成長率が高くないとしても、早期に黒字化できるケースも多くあります。

海外進出する国(販路開拓先)の選び方

続いて、実際に自社製品の販売先を決める際の手順を紹介します。

1. 候補国で自社のビジネスが成立するか調査する

まずは、市場や顧客、競合などに関して調査を実施し、候補国で自社のビジネスが成立し得るかを検討します。

①市場調査(市場規模と成長率、成熟度)

最初に、前項で述べたように候補国における現状の市場規模と成長率、成熟度を調査します。現時点で十分なマーケットがあるか、自社製品の参入余地がどの程度あるのか、高品質の製品が受け入れられやすいかなどを確認しましょう。また、価格帯ごとのマーケットを確認して、自社製品と同様の価格帯の製品がどの程度売れているかも確認します。

②潜在顧客の調査(潜在顧客リストの作成)

現地で自社製品を購入してくれそうな潜在顧客のリストを作成します。この潜在顧客のリストは、進出後数年の売上計画を立てる上でも、営業候補先も決める上でも重要な役割を果たします。

③同業・競合調査

候補国の同業他社、競合他社の調査を行います。現地の地場有力企業や日系企業の現地法人のビジネス内容を調査して、提供している付加価値や収益を得る仕組みなどを確認しましょう。また、現地業界の特徴(生産規模がどの程度必要か、自社の優位性はどこにあるか)も調査する必要があります。

④新規参入障壁の調査

進出先の市場に自社が新たに参入する場合の参入障壁の高さを調べます。参入障壁の例は下記のとおりです。

  • 進出先の国内の業界規制(例:会社設立は可能でも、現地での営業権が与えられない場合)
  • 一定の設備投資が進出の条件となる場合
  • 販売ルートの確立に費用と労力がかかる場合
  • 現地の有力企業がすでに競合と提携を結んでいる場合(例:現地の有力企業と提携を結ぶことを考慮している場合)

海外市場の調査項目や調査方法については、下記のコラム記事もご覧ください。

 

2. 候補国に特有のさまざまなリスク(政治的、経済的、社会的リスクなど)を調査する

たとえ進出先の国に自社製品の市場があったとしても、その国の政治や経済が不安定な場合、ビジネスがうまくいかなくなってしまう恐れがあります。

そうした事態を避けるためにも、自社ビジネスが成功しそうな国が見つかったら、次はその国固有の政治的、経済的、社会構造的なリスクについて調査する必要があります。具体的な調査項目は下記のとおりです。

①経済

下記の経済指標を確認します。各指標の値を単独で見てもあまり意味はないので、過去の値や他国の値と比較することが重要です(例えば、インドネシアの値を他のASEAN諸国の値と比較するなど)。

経済指標 わかること
GDP 経済の規模
1人当たりGDP 経済の発展度合い
GDP成長率 経済の伸び率
インフレ率の時系列推移 経済政策の充実度
国際収支の時系列推移 経済政策の充実度
財政収支の時系列推移

経済政策の充実度

②政治

候補国の政治(政治体制、政治状況、外交)についても確認する必要があります。政治的に安定しているか、独裁体制か民主主義体制か、政権交代が安定して行われているか、周辺国や日本との外交関係は良好か、などをチェックしましょう。

社会(宗教、民族)

候補国の宗教や民族、労働問題は、企業活動に直接関係する重要な要素です。

例えば、日本では宗教にそこまで興味がない人も多いと思いますが、国によっては宗教が人々の価値観や社会道徳、職業倫理に大きな影響を及ぼしている場合もあります。特にアジアの場合は、1つの国に複数の宗教や民族が存在する場合も多く、オフィスでの集団生活にも大きな影響を及ぼします。そのため、進出前にその国の宗教や民族について把握した上で、人々の社会的な慣習や仕事に対する考え方もしっかり理解しておく必要があります。

④規制

自社の事業内容や業種(製造品目、独資進出が可能かなど)が、その国で規制されていないかを確認しておく必要があります。認可が必要な場合は、認可を取得できる可能性(前例があるかなど)もチェックしましょう。

最近のアジア諸国では、ほとんどの国で製造業の独資進出が許可されていますが、具体的な手続き方法は国によって異なるので、詳細をしっかりと確認するようにしてください。

⑤物流

自社製品を運搬する上で、物流状況の確認は非常に重要です。日本から自社製品を運搬する場合は、港や空港から自社販売拠点までスムーズに運搬できるかをチェックしておきます。例えば、東南アジアでは国内物流のほぼすべてがトラック輸送なので、道路付け(土地と道路がどう接しているか)も充填的に確認する必要があります。

⑥治安・居住環境

現地に日本人社員を派遣する場合は、現地の治安や居住環境(学校の有無など)も確認しましょう。日本人が多く住む地域を居住先として設定する、居住先の近くに政治集会が開催される広場がないかを確認する、といった配慮も必要です。

BtoB製造業の海外進出先(販路開拓先)におすすめの国

ここからは、ジェトロが毎年実施している「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」の2024年度の調査結果を参考に、BtoB製造業の海外進出先(販路開拓先)におすすめの国を紹介します。

日本企業の海外進出状況

下記は、2024年時点での日本企業の海外進出状況を示したグラフです。海外拠点がある企業(今回の調査では1111社)のうち、半数以上が中国に拠点を持っていることがわかります。

出典:2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査) 

今後の事業拡大先としては「米国」が首位(大企業に絞るとインドが首位)

下記に示すように、「今後、海外で事業拡大を図る国・地域」としては米国が最も多く、2位の中国を大きく引き離しています。

出典:2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査) 

上記調査結果を大企業と中小企業で集計し直したものを下記に示します。大企業ではインドが首位、中小企業では変わらず米国が首位であるとわかります。

出典:2024年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査) 

おすすめ・注目の海外展開先(販路開拓先)

上記のジェトロの調査結果から、海外展開先として特に注目したい国・地域として下記が挙げられます。

  • アメリカ
  • 中国
  • インド
  • ASEAN(ベトナム、タイ、インドネシアなど)

上記の国々における製造業の状況について詳しく知りたい方は、下記のコラム記事もご覧ください。

アメリカ

中国

インド

ベトナム

タイ

インドネシア

まとめ

本記事では、BtoB製造業が海外で販路開拓先を探す方法と、販路開拓におすすめの国について解説しました。ぜひ、本記事の内容を実践してみてください。

また、弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB製造業の「海外向けWebマーケティング」を支援しています。その一環として、海外の販路開拓先を決めるためのテストマーケティング(特定のターゲット顧客や市場で製品やサービスを試験的に展開して、市場の反応を評価する活動)をご支援することも可能です。

壁打ち相談会(30分)」にて、お客様の課題に合わせて適切な施策をご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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海外向けマーケティングに関する
実態調査
資料イメージ

【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
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会社名:テクノポート株式会社 海外Webマーケティング担当

【経歴】
大阪大学理学研究科化学専攻を修了後、SEとして組み込みシステム開発に6年間従事。通信基地局の冗長化システムやRFIDを用いたドア認証システムなど、多様な開発経験を積む。その後、開発も面白いが技術を伝える仕事もしてみたいと思い立ち、1日10時間の勉強を約8ヵ月間継続して、フリーランスの技術翻訳者として独立。以降、技術リサーチやサイエンスライティング、広報と業務の幅を広げる中で、世の中のさまざまな技術に触れ、日英の両方でその魅力を伝えてきた。

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