製造業マーケティングにコンサルは不要? AI時代に変わる支援の価値

【執筆者紹介】小林(井上) 正道

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この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
・技術PRのために最適なWeb戦略は何か、「アンゾフの成長マトリクス」の活用(MONOist)
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近年、「コンサルは本当に必要なのか?」という議論を耳にする機会が増えています。特に生成AIの進化によって、これまでコンサルティング会社が価値として提供してきた市場分析、競合調査、戦略立案、提案資料作成といった業務は、以前よりもはるかに短時間で行えるようになりました。

製造業のマーケティングにおいても同様です。ターゲット顧客の整理、SEOキーワードの選定、コンテンツ企画、ペルソナ設計、営業資料のたたき台作成などは、AIを活用すれば一定レベルまで自社でも進められる時代になっています。

では、AI時代にコンサルティング会社やマーケティング支援会社は不要になるのでしょうか。

結論から言えば、不要になるわけではありません。ただし、求められる価値は大きく変わっています。これから価値が下がっていくのは、「きれいな戦略資料を作るだけ」の支援です。一方で、価値が高まっていくのは、戦略を現場で実行し、改善を重ね、成果につなげるための支援です。

製造業のリアルな現場に求められている本当の価値について解説します。

なぜ今、「戦略コンサル不要論」が出てきたのか

これまで多くの企業は、新規事業やマーケティング戦略を検討する際、外部のコンサルティング会社に市場分析や戦略立案を依頼してきました。

市場規模を調べる。競合企業を整理する。顧客ニーズを分類する。自社の強みをSWOT分析に落とし込む。ポジショニングを整理する。こうした作業には専門的な知識と時間が必要であり、外部コンサルタントの価値が発揮される領域でした。

しかし現在は、生成AIによって状況が大きく変わっています。たとえば、特定の業界における市場動向の整理、競合の特徴分析、想定顧客の課題仮説、Webコンテンツのテーマ案、営業訴求の方向性などは、AIを使えば短時間でたたき台を作ることができます。

もちろん、AIの出力をそのまま使えるわけではありません。情報の正確性確認や、自社の実態に合わせた調整は必要です。それでも、従来は数週間かけて作っていた初期分析や企画案が、数時間で形になるようになったことは事実です。その結果、「情報を整理して戦略資料を作ること」そのものの価値は、以前よりも相対的に下がっています。

これが、近年「コンサル不要論」が出てきている大きな背景です。

これまでのコンサルティングは「整理する力」が価値だった

従来のコンサルティングにおいては、大量の情報を整理し、分かりやすく構造化すること自体が大きな価値でした。

企業の内部情報、業界データ、競合情報、顧客ニーズ、市場環境などを集め、それらをフレームワークに落とし込み、経営層や現場担当者が理解しやすい資料にまとめる。こうした「整理する力」は、コンサルティング会社の強みでした。

特に製造業では、技術、製品、用途、業界、加工方法、設備、品質管理体制など、扱う情報が複雑です。自社の強みをどう整理すればよいか分からない、どの市場に訴求すればよいか判断できない、Webサイト上で何を打ち出せばよいか決められない、という企業も少なくありません。

そのため、製造業においても外部の視点で情報を整理し、マーケティング戦略として見える化する支援には大きな価値がありました。しかし、AIの登場によって、この「整理する力」の一部は誰でも使えるものになりつつあります。

たとえば、技術の特徴を入力すれば、想定用途を洗い出すことができます。既存顧客の業界を入力すれば、類似するターゲット市場を提案してくれます。製品情報を入力すれば、SEO記事のテーマ案や見出し案を作ることも可能です。

つまり、情報整理や初期企画は、特別な専門家だけが担うものではなくなり始めているのです。

AIによって「企画戦略立案」は誰でもできる時代へ

生成AIを活用すれば、企業自身が一定レベルのマーケティング企画を立てられるようになりました。製造業のWebマーケティングであれば、AIはさまざまな場面で活用できます。

たとえば、SEOキーワードの候補出し、記事テーマの作成、ターゲット顧客の整理、ペルソナ設定、製品紹介文の作成、用途展開のアイデア出し、営業メールの文面作成、展示会後のフォロー施策の検討などです。

以前であれば、こうした作業は広告代理店やコンサルティング会社に依頼しなければ進まないケースもありました。しかし今は、社内担当者がAIを使いながら、企画のたたき台を作れるようになっています。

これは企業にとって大きなメリットです。外部に依頼する前に自社内で仮説を立てられるため、意思決定のスピードが上がります。外部支援会社との打ち合わせにおいても、何を相談すべきかが明確になります。

一方で、この変化は支援会社側にとっても大きな意味を持ちます。これまでのように「企画を考えます」「戦略資料を作ります」というだけでは、価値を感じてもらいにくくなっているからです。

AI時代においては、企画を出すこと自体はスタートラインにすぎません。重要なのは、その企画を実行し、成果につながるまで改善し続けられるかどうかです。

では、コンサル会社は不要になるのか?

AIによって企画や分析が効率化されるのであれば、コンサルティング会社やマーケティング支援会社は不要になるのでしょうか。

答えは、NOです。

ただし、必要とされる支援の中身は変わります。

これから価値を失っていくのは、「資料を作って終わる支援」です。市場分析をまとめる。戦略方針を整理する。提案資料を納品する。もちろん、それ自体に意味がないわけではありません。しかし、資料が完成しても実行されなければ、成果は生まれません。

特に製造業のWebマーケティングでは、戦略資料だけでは問い合わせは増えません。

Webサイトを改善する。技術情報を分かりやすく発信する。SEO記事を継続的に制作する。問い合わせ内容を分析する。営業現場と連携する。反応の良いテーマを見極め、改善を重ねる。こうした実行があって初めて、マーケティングは成果につながります。

つまり、AI時代に必要とされるのは、「考える支援」だけではなく、「やり切る支援」なのです。

多くの企業が困っているのは「戦略不足」ではなく「実行不足」

製造業の企業とお話ししていると、課題は必ずしも「戦略がないこと」ではありません。

むしろ、多くの企業は何をすべきかをある程度理解しています。新規顧客を開拓しなければならない。展示会依存から脱却したい。Webサイトを活用したい。技術力をもっと分かりやすく伝えたい。SEO記事を増やしたい。既存製品の新しい用途を開拓したい。

こうした方向性は、すでに社内で共有されていることも少なくありません。それでも成果につながらない理由は、実行が止まってしまうからです。

Webサイトの更新が続かない。記事制作の優先順位が決まらない。技術者へのヒアリングが進まない。営業部門との連携が弱い。問い合わせ後の分析ができていない。改善施策を継続できない。

このように、課題は「何をやるか」ではなく、「やり切れるか」に移っています。

製造業では、Webマーケティングの専任担当者がいない企業も多くあります。担当者が他業務と兼任しているため、重要だと分かっていても後回しになってしまう。社内に技術情報はあるものの、顧客に伝わる言葉に変換できない。営業や技術部門を巻き込む時間が取れない。

こうした実行面の壁を乗り越えることこそ、外部支援会社に求められる価値になっています。

AIでは埋められない「実行」の壁

AIは非常に優秀です。情報整理、文章作成、アイデア出し、仮説構築においては、今後さらに活用範囲が広がっていくでしょう。しかし、AIだけでは埋められない領域もあります。

たとえば、社内の関係者を巻き込むこと。技術者から本質的な強みを引き出すこと。営業現場で聞いている顧客の生の声を整理すること。経営方針と現場施策をつなぐこと。継続的に制作や改善を進めること。これらは、単にAIに指示を出せば完了するものではありません。

特に製造業では、技術情報をそのまま発信しても顧客に伝わらないことがあります。重要なのは、その技術が「誰の」「どのような課題」を解決できるのかを明確にし、顧客価値として表現することです。

たとえば、「高精度加工が可能」という表現だけでは、顧客にとってのメリットが伝わりにくい場合があります。顧客が知りたいのは、その高精度加工によって、不良率を下げられるのか、組立工数を削減できるのか、製品寿命を延ばせるのか、設計自由度を高められるのか、という点です。

このように、技術を顧客価値に翻訳するには、製造業への理解とマーケティングの視点の両方が必要です。

AIはその作業を支援することはできます。しかし、現場の実情を踏まえ、社内調整を行い、継続的に発信し、改善を回していくには、人による伴走が欠かせません。

AI時代だからこそ、実行支援の価値が高まる

AIによって、戦略立案のコストは大きく下がりました。これは企業にとって非常に良い変化です。

しかし同時に、誰でも一定レベルの企画を作れる時代になったことで、差がつくポイントは変わりました。これから差がつくのは、実行速度、継続力、改善速度、顧客理解、現場との接続、社内推進力です。

どれだけ良い企画があっても、実行されなければ成果にはつながりません。どれだけ立派なWebマーケティング戦略を立てても、コンテンツが増えず、問い合わせ分析も行われず、改善が止まってしまえば、売上には結びつきません。

AI時代において重要なのは、AIを使えるかどうかだけではありません。

AIを使って仮説検証を速くし、制作を効率化し、改善サイクルを高速で回し、実行量を増やせるかどうかです。つまり、AIは人や支援会社を不要にするものではなく、実行力のある企業や支援会社の価値をさらに高める武器だといえます。

「AIを使える会社」ではなく「AIを使って実行できる会社」が強い

今後、AI活用は多くの企業にとって当たり前になっていきます。そのときに重要なのは、AIを導入しているかどうかではありません。AIを使って、どれだけ実行の質と量を高められるかです。

製造業のWebマーケティングでは、継続的な情報発信が成果を左右します。顧客が検索するキーワードに対して有益なコンテンツを用意する。技術の強みを用途や課題ごとに整理する。問い合わせにつながりやすいテーマを見極める。アクセスデータや問い合わせ内容をもとに改善する。

これらを一度だけではなく、継続的に行う必要があります。AIを使えば、記事の構成案作成や文章のたたき台作成は効率化できます。しかし、どのテーマを優先すべきか、どの技術を打ち出すべきか、営業現場の感覚と合っているか、実際の顧客に伝わる表現になっているかを判断するには、専門的な伴走が必要です。

テクノポートが重視しているのは、まさにこの実行支援です。

単に企画書を作るのではなく、製造業の技術や強みを理解し、それを市場に伝わる形へ変換し、Webマーケティング施策として実行し続けること。AIも活用しながら、企業の新規顧客開拓につながるマーケティング活動を支援すること。

これが、AI時代における支援会社の価値だと考えています。

「コンサル不要」ではなく、「コンサルの価値が変わった」

AI時代において、「分析資料を作るだけ」「戦略を提案するだけ」の支援価値は、今後さらに下がっていくでしょう。しかし一方で、現場を理解し、実行を推進し、改善を回し、成果につなげる支援の価値は高まっています。つまり、「コンサルが不要になった」のではありません。問われているのは、その会社が何を支援する存在なのかという点です。

資料作成を支援する会社なのか。戦略立案を支援する会社なのか。それとも、顧客企業の現場に入り込み、実行と改善を伴走する会社なのか。

AIによって企画や分析が民主化されたからこそ、支援会社にはより実践的な価値が求められます。

製造業のWebマーケティングにおいても、成果を生み出すためには、技術理解、顧客理解、コンテンツ制作、SEO、営業連携、改善運用を一体で進める必要があります。

その意味で、これからの支援会社に求められるのは、単なるコンサルティングではなく、実行まで責任を持つ伴走型の支援です。

まとめ

AIの進化によって、企画戦略立案は大きく民主化されました。市場分析、競合調査、SEO企画、コンテンツ案の作成などは、以前よりも簡単に、短時間で行えるようになっています。その結果、「戦略資料を作ること」自体の価値は下がりつつあります。

しかし、成果を生み出す難しさはなくなっていません。むしろ、課題の中心は「何を考えるか」から「どう実行し続けるか」へ移っています。

製造業のWebマーケティングで成果を出すには、自社の技術を顧客価値に翻訳し、継続的に情報発信し、問い合わせ内容を分析し、改善を重ねていく必要があります。これはAIだけで完結するものではありません。

これから求められるのは、資料を作る支援ではなく、市場に伝わるまで、成果が出るまで、実行し続ける支援です。

テクノポートは、AIを活用しながらも、製造業の技術を市場へ届けるための実行支援を重視しています。企業の強みを顧客に伝わる言葉へ変換し、Webマーケティングを通じて新規顧客開拓につなげる。

AI時代だからこそ、製造業に必要なのは「考えるだけのコンサル」ではなく、「実行まで伴走するマーケティング支援」なのです。

この記事の執筆者
小林(井上) 正道
会社名:テクノポート株式会社
役職:取締役
【経歴】
製造業のWebマーケティング支援を15年以上。
製造業への訪問実績3000件を超える。
幅広い加工知識と市場調査をもとに、製造業の新規顧客開拓の支援を行う。

日本工業大学技術経営学修士号(MOT)
研究テーマ「Webを活用した用途開発マーケティング」

【専門領域】
製造業 × 企画コンサルティングスキル × Webスキル(SEO中心)

【寄稿実績】
・Webリニューアルが逆効果に? 問い合わせを減らさない製造業のサイト改革(MONOist)
・新規顧客が集まらない製造業のWebサイト、活用を阻む3つの壁(MONOist)
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