テクノポートの徳山です。当記事では、BtoB製造業がコンテンツマーケティングに取り組むために押さえておきたい大原則(成功のポイント)から、発信するコンテンツの種類の紹介、得られるメリットを製造業視点で解説します。
この記事の目次
製造業のコンテンツマーケティングの大原則
ユーザーが購買活動を行ううえで役立つ情報を提供する
コンテンツマーケティングとは、ユーザーに役立つ情報を提供することで、長期的な信頼関係を築き、ゆくゆくは購買につなげる手法のことです。従来の宣伝方法では、「当社の製品はこんなにすごいです!」と自社製品の性能や特徴を前面に押し出します。そういった情報は購買段階が進み購買候補となる製品を選定する段階に入ったユーザーには有効ですが、購買段階がそこまで進んでいないユーザーにとっては不要となってしまいます。
コンテンツマーケティングでは、お客様が「今、何に困っているのか」「どんな情報を求めているのか」を考えることから始まります。例えば、ある工具を製造している会社なら、その工具の使い方や、作業効率を上げるコツなど、お客様にとって本当に役立つ情報を提供します。そうすることで、専門性の高い企業であることがユーザーへ伝わり、信頼感が生まれたり、有益な情報を得ることで、お客様は自然とその製品やサービスに興味を持ち、購入を検討するようになります。
そのため、コンテンツマーケティングでは、ユーザー目線に立ち、ユーザーが購買活動を行ううえで役立つ情報を提供することが大切です。
購買フローに応じたコンテンツマーケティング戦略を考える
購買フローとは、ターゲット顧客が情報収集〜購買に至るまでの行動を段階別に整理し、各段階における関心ごとや情報収集の方法を洗い出したものです。
製造業のコンテンツマーケティングでは、購買フロー前半の「本格的な購買段階に入る前のユーザー」を狙いますが、購買フローの長さによって、コンテンツマーケティングの方法を変える必要があります。
購買フローが長い場合
大型の産業機械や、高度な技術を要する製品など、購入を決めるまでに時間がかかる製品の場合は、一般的に購買フローが長くなります。このような場合、お客様は本格的に製品を探し始める前に、さまざまな情報を集めます。そのため、購買フローを一歩前へ進めるための情報を提供することが有効です。例としては以下のようなコンテンツです。
- 技術課題の解決法:「○○業界でよくある課題とその解決方法」といった記事やホワイトペーパー
- 用途事例の紹介:「△△製品の意外な使い方5選」といったコラム記事や用途事例集
- 最新技術の紹介:「××が解決できる最新技術の紹介」といったコラム記事やウェビナー
これらの情報を提供することで、お客様が本格的な製品探索を始める前から、貴社の存在や専門性をアピールすることができます。
購買フローが短い場合
一方、突発的に必要になるような製品(例:消耗品、緊急時の部品調達など)の場合、購買フローは比較的短くなります。このような場合、需要が顕在化した瞬間に、お客様の頭に真っ先に浮かぶ存在になることが重要です。そのために、以下のような情報を日頃から発信しておくことで、お客様が急に製品を必要としたときに、「あの会社に聞いてみよう」と思い出してもらえる可能性が高まります。
- 技術や製品の基礎知識を提供:「初心者でもわかる○○技術の基本」といったコラム記事やホワイトペーパー
- 業界のトレンドや最新情報を提供:「△△業界で使われている最新技術やトレンドを紹介」といったウェビナー
- 製品の種類や選び方に関する知識を提供:「××製品の選び方 押さえるべき5つのポイント」というチェックリスト
購買フローの長さに応じてコンテンツマーケティングの戦略を変えることで、より効果的にお客様にアプローチできます。
リード獲得や商談化にはつなげる施策をセットで行う
コンテンツマーケティングで成果を挙げるためには、3つの重要な役割を意識する必要があります。3つの役割とは、ユーザーの集客、ユーザーのリード化、リードの商談化です。それぞれの役割に応じた施策を考えコンテンツを作ることで、コンテンツマーケティングを効率的に進めることができます。その3つの役割について詳しく解説します。
役割①:ユーザーをWebサイトへ集客するためのコンテンツ
まずは、お客様に御社のWebサイトを見つけてもらう必要があります。コラム記事、SNS、YouTubeなどを活用して、ユーザーの役に立つ情報を発信することでWebサイトへ集客します。
役割②:Webサイトへ集客した後にリード化するためのコンテンツ
Webサイトに訪れたユーザーを「見込み顧客(リード)」として獲得するためのコンテンツです。お役立ち資料や事例集などダウンロードコンテンツを設置したり、情報提供型のウェビナーを開催することにより、リードを獲得します。
役割③:リードを商談化するためのコンテンツ
獲得したリードを商談化するためのコンテンツです。メールマガジンや製品紹介型のウェビナーを開催することで、商談のきっかけを掴みます。
これら3つの役割を意識してコンテンツを作成することで、単なる情報発信にとどまらず、実際の商談獲得まで効果的につなげることができます。重要なのは、それぞれの役割を持つコンテンツをバランスよく作成し、お客様の購買プロセスに沿って適切に提供することです。また、コンテンツの効果を測定し、継続的に改善していくことも忘れずに行いましょう。
コンテンツマーケティングで取り扱うコンテンツの種類
コンテンツの種類はWeb記事、ホワイトペーパー、メルマガなどさまざまな種類がありますが、次の3つの役割によって分類できます。
①Webサイトへの新規ユーザーを集客する
- Web記事
- インフォグラフィック
- 動画
②新規リードを獲得する
- ホワイトペーパー
- リサーチレポート
- ウェビナー(情報提供型)
③保有リードを育成し商談を獲得する
- メルマガ
- 導入事例
- ウェビナー(サービス紹介型)
①Webサイトへの新規ユーザーを集客するコンテンツ
Web記事
まず、新規ユーザーに自社サイトを見つけてもらうために、SEO対策を行います。SEO対策をするキーワードを選定して検索上位のサイトをリサーチし、記事の構成を決め自社のオリジナルの情報を入れたコンテンツを作成します。
具体的なSEO対策は参考記事を確認してみてください。
ロストワックス製法を得意とした鋳造メーカーの武杉製作所は、Web記事で自社の強みをわかりやすく紹介しています。ロストワックス製法のメリットや他の加工方法との比較をコンテンツに加えることで、顧客への工法転換を訴求し受注につなげています。
インフォグラフィック
インフォグラフィックとはイラストや図表などを用いて情報やデータをわかりやすく伝える手法です。
せっかく自社でアピールできる強みがあっても文字数だけで情報を網羅させると、記事を読むユーザーの負担となり、別のサイトに移ってしまう可能性があります。そこで、インフォグラフィックを活用することで、ユーザーの興味を引き、ページから離れないような工夫をします。
事例:YKKスナップファスナー株式会社
YKKスナップファスナー株式会社は服に使用する金属製のスナップやボタンを製造・販売するメーカーです。ボタンの歴史に関するインフォグラフィックをWebサイトに掲載しています。ボタンの種類や使われていた地域など、文字だけでは伝わりづらい内容もイラストによって一目で理解できるようになっています。
動画
動画はインフォグラフィックと同様に、ユーザーの視覚に訴えかけられる有用なツールです。
製品の紹介や使い方を動画にする場合と、Webサイトの背景に動画を活用する場合があります。ユーザーへの伝わりやすさを上げ、ユーザーに印象を持たせるために活用できるコンテンツです。
製品の実演などはYoutubeで配信し、リンクをWebサイトに貼ることでYoutubeのチャンネルに登録したユーザーをWebサイトに引き込むことができ新規ユーザーを集客できることもあります。
動画の活用方法は参考記事を確認してみてください。
事例:石井精工のゴム金型YouTubeチャンネル
石井精工はゴム金型製造やゴム成形の行う製造業です。Youtubeチャンネルを開設し、加工に関する業務改善の事例を紹介しています。動画の時間は10分以内のものが多く、視聴者を飽きさせない範囲で有益な情報を提供しています。
②新規リードを獲得するコンテンツ
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、自社の製品やサービスに関する技術情報など、読者に有益な情報を提供する資料のことです。ホワイトペーパーをダウンロードするためにユーザーの個人情報を入力してもらうことでリードを獲得する仕組みです。ホワイトペーパーは、獲得したリードのナーチャリング(育成)にも活用できます。
ホワイトペーパーの作り方や活用方法は参考記事を確認してみてください。
事例:キーエンス
キーエンスは計測機器をはじめPLCや3Dプリンタなど製造業で必要とする製品を幅広く扱っており、それに関わる1000件以上のホワイトペーパーをWebサイトに掲載しています。機器の使用事例や導入事例、安全管理に関する知識など、サイトに訪問したユーザーの課題を解決できるようなコンテンツが豊富です。
リサーチレポート
リード獲得のための調査レポートは、業界の課題や最新動向を深堀りした価値ある情報をレポート形式で提供するものです。専門性の高い内容でユーザーの関心を引き、ダウンロード時に連絡先情報の入力を求めることでリードを獲得します。企業の信頼性向上にも貢献し、潜在顧客とのコンタクトポイントを作り出します。
例えば、当社では製造業のデジタルマーケティング推進に役立つさまざまな調査レポートがWebサイトからダウンロードできます。これらのコンテンツは、製造業のマーケティング担当者のリード獲得に大きく貢献しています。
ウェビナー(情報提供型)
ウェビナーはオンラインで行うセミナーのことです。従来のセミナーに対して、ウェビナーでは場所と時間の制約がゆるくなるため、参加しやすいのが特徴です。質問やアンケートの回答が文字で入力できるようになったので、発言しにくいリアルのセミナーに代わり、顧客の反応が効率的に収集できるようになっています。
地域や時間などの垣根がなくなり、多くの方に参加してもらうことが可能になったため、参加者数がリアルセミナーの5~10倍になることがあります。セミナーの参加者が増えることで新規リードを獲得する機会が増えています。
ウェビナーの活用方法は参考記事を確認してみてください。
事例:松谷化学工業
松谷化学工業はでん紛素材や食物繊維などの製造・販売を行う食品原材料メーカーです。コロナ禍で客先訪問や展示会の機会がなくなったため「Kairos3」というMAツールを利用してウェビナーを立ち上げ、受注拡大につなげています。
③保有リードを育成し商談を獲得するコンテンツ
メルマガ
メールマガジンとは、企業の担当者やWebサイトの運営者から、購読を希望するためにメールアドレスを登録したユーザーに対して一斉に配信されるメールのことです。新製品の紹介や業界動向の変化、製品開発の裏話などを定期的に配信することで、保有リードは都度Webサイトの最新情報をチェックすることなく新着情報を受け取ることができます。顧客とのつながりを意識させ、自社の製品や業界に対する知識を見につけてもらうことでファンを増やし、購買につなげられます。
メールマガジンの活用方法は参考記事を確認してみてください。
事例:アマダ
アマダはタレットパンチやレーザー加工機のメーカーです。メルマガを月に2回配信しています。メルマガには製品の紹介だけではなく課題解決の事例や板金加工の基礎など、サイトだけでは知ることができないような情報を配信しています。
導入事例
導入事例とは自社製品を導入し一定の成果をあげた顧客のストーリーをまとめた記事コンテンツです。実際の事例を紹介しているので信頼性が高く、見込み客へ利用イメージを膨らませることができます。購買リスクが高いBtoBマーケティングにおいてリードをナーチャリングし商談につなげる最適なコンテンツです。
導入事例の活用方法は参考記事を確認してみてください。
事例:プロトラブズ
プロトラブズは射出成型や切削加工を受託製造する企業です。サイトには、多数の導入事例が紹介されています。寸法精度の実現やコスト削減の効果と共に、お客様の評判の良さが伝わる信頼性の高いコンテンツとなっています。
ウェビナー(サービス紹介型)
先に説明した情報提供型のウェビナーは新規リード獲得のための大勢に向けたセミナーに近いイメージですが、こちらでは既に保有できたリードに対して、具体的な商談を進めるための個別打ち合わせに近いイメージです。はじめに企画したウェビナーでアンケートをとったお客様に対して個別にフォローしていき、具体的な解決案を提案することで商談成立につなげます。
製造業がコンテンツマーケティングを行うメリット
競合他社よりも先んじてリードと商談をすることができる
コンテンツマーケティングを活用することで、競合他社に先んじてリードを獲得することができます。特に、購買フローの前半に位置するユーザーは、競合他社がまだアプローチしていない可能性が高く、そのようなユーザーと早期に接点を持つことができるのは営業活動において大きなメリットとなります。
タイミングよく接触できれば、競合他社と比較される前に商談を進め、最終的には自社への発注につながる可能性も高まります。うまく商談を進めていけば、競合他社と比較検討されることなく受注を獲得することも可能です。
技術の新たな用途開発や、新分野の顧客開拓につながる
コンテンツマーケティングを行い、購買フロー前半のユーザーにリーチを広げることで技術の用途開発や、製品の新市場開拓につながります。購買フロー前半のユーザーは、もともとターゲットとして想定していなかったユーザー層である可能性が高く、彼らに自社の技術や製品を知ってもらうことで、新たな用途開発や新分野の顧客開拓につながるチャンスが生まれます。
特定の分野における第一人者というブランディングができる
コンテンツマーケティングを推進し、さまざまなコンテンツをユーザーへ提供し続けることで、該当分野において豊富な知見を持つ企業であるイメージを与えることができます。
購買フローが長い顧客をターゲットにしている企業であれば、特定の分野における第一人者というブランディングが商談を進めていくうえで有利に働くでしょう。購買フローの短い顧客をターゲットにしている企業であれば、「○○といえば××」といった形で第一想起される存在になることで、ユーザーのニーズが顕在化したタイミングで一番に声をかけてもらえるでしょう。
以上、製造業のコンテンツマーケティングにおける成功のポイントや制作するコンテンツの種類についてご紹介しました。購買フローに当てはめてコンテンツをうまく活用することができれば、ユーザーが競合他社と接触する前に顧客化できるなどさまざまなメリットを享受できるでしょう。ユーザーの課題を先回りして解決できるような情報を積極的に提供していきましょう。
テクノポートでは、コンテンツマーケティングの戦略設計から施策の実施支援、コンテンツ作成の支援までトータルサポートを行っています。コンテンツマーケティングの活用を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。