テクノポートの徳山です。金型業界は、高度経済成長期に日本のものづくりを発展させた立役者と言っても過言ではありません。金型製造には高い技術力を要します。最近では中国や韓国の企業も力を付けてきていますが、日本企業の技術力の優位性は保てており、現在でも日本のものづくりを支えています。
今回は、そんな金型製造業がWebマーケティングを実施する際の留意点や戦略についてご紹介します。
この記事の目次
金型製造業がWebマーケティングに取り組む際の留意点
まずは金型製造業がWebマーケティングに取り組む際に、同じサプライヤーである切削加工業や板金加工業と比較して、どのような留意点があるのかを考えていきます。
インターネット上で取引される案件数が少ない
金型業界の市場規模は決して小さくありません。しかし、金型自体の単価が大きく、既存外注先からのスイッチも敬遠されることが多いため、同じ金属加工業の切削加工業や板金加工業と比べても、インターネット上で取引されている案件数が少ないのが特徴です。
よって、Webマーケティングに取り組むうえでは多くの問い合わせ数を獲得できることを過度に期待せず、一件一件の問い合わせを大切に営業していく姿勢が必要となります。
Webサイトに掲載できるコンテンツを確保しにくい
自社製品を持たないサプライヤー企業に共通して言えることですが、「Webサイトに掲載するコンテンツを確保しにくい」という課題があります。特に、Webコンテンツとして必ず掲載したい加工事例に関しては、メーカーからの掲載許可が下りることが少ないのが実情です。
特に金型専業メーカーの場合、加工品が手元に残らないため、掲載するものがほとんどないケースさえあります。同じ金属加工業でも、加工事例を比較的掲載しやすい切削加工業者は、加工名、材質名、部材名など、掲載する事例に応じてキーワード対策のバリエーションを増やしていくことができます。しかし金型製造業の場合はそれが難しく、継続的にアクセスを増やすことが困難となることが多いです。
これを乗り越えるためには、加工事例掲載用のサンプルを製作する、写真がダメならイラストやCADデータの状態で掲載するなど努力を惜しまないことが大切です。この課題を乗り越え、多くの問い合わせ獲得に成功した企業の事例については、他社メディアとなりますが、以下の記事をご覧ください。
考慮すべき2つのターゲットと、準備しておきたいこと
Webマーケティングのターゲットを決めるうえで、必ず考慮しておきたい「2つのターゲット」について解説します。
ターゲット①:量産加工業者
金型製作の外注先を探している量産加工業者をターゲットにするケースです。この場合は売り型を提供するという形になります。
先述したとおり、既存外注先からのスイッチは敬遠される傾向にあります。そのため、新規で金型業者を探すことは少なく、新規外注先の探索ニーズが発生するのは取引先が廃業した場合くらいだと考えられ、案件数は少ないのが実情です。
ターゲット②:メーカー
メーカーが加工品を調達したいと考え、外注先を探すケースです。量産加工品を調達するためには金型が必要不可欠ですが、メーカーが欲しいものはあくまで金型ではなく加工品となるので、金型製造から量産加工まで一貫で対応してほしい、というニーズを持っています。
金型製造と量産加工を別々のサプライヤーに発注するケースも少なからずあるでしょう。しかし、両者をすり合わせて品質の高い加工品を調達するのは骨の折れる作業となるので、メーカーは1社完結できるサプライヤー企業を求めています。
引き合いを獲得するために準備しておきたいこと
ターゲット①だけを相手にしていても、十分な問い合わせ数を確保することは難しいと考えられるため、基本的にはターゲット②も狙うべきです。
ただしその場合、金型専業メーカーは自社だけでは量産加工まで対応することができないため、パートナーシップを組める量産加工業者の力を借りる必要があります。Webサイト上で一貫対応ができると謳っているからには、問い合わせが来た際にタッグを組んで対応してくれるパートナーが必要不可欠となります。
良きパートナーと組むことで、量産加工業者側から掲載可能なWebコンテンツを提供してもらい、先述したWebコンテンツが不足する課題にも対応できます。(その場合はもちろん自社で製作した金型で製作された加工品に限定する)。
型種に合ったWebマーケティング戦略を採用する
金型業界に限定したとしても、万能なWebマーケティング戦略はありません。金型業界の中でも、型種によってWeb上での競合企業(サイト)数が大きく異なるためです。大きく分けると「メジャーな型種」と「ニッチな型種」で分けて戦略を考えると良いでしょう。メジャーか、ニッチかの判断は以下の統計をご覧ください。
※経済産業省「機械統計」をもとに日刊工業新聞社が作成
メジャーな型種の場合
生産量の多いプレス金型やプラスチック金型といった型種を扱っている業者は、競合となる企業(サイト)も多く、主要キーワードで検索結果上位に食い込むのは難しい業種と言えます。
主要キーワードでの検索需要が多く魅力的な市場ではありますが、その分競合サイト数も多く、SEO対策で容易に上位表示できる分野とは言えません。
キーワード例 | 月間検索数(Google) | 競合サイト数(Google) |
---|---|---|
プレス金型 | 1,000 | 76,200,000 |
プラスチック金型 | 390 | 58,400,000 |
この場合に採用すべき戦略は、
1. Webコンテンツを大量に掲載し主要キーワードでアクセスを勝ち取るか
2. ターゲットを絞り込んでアクセスを勝ち取るか
の2パターンが考えられます。
前者の場合、SEOで評価を得るために、Webサイトに大量のコンテンツを掲載する必要があります。弊社のお客様でいうと「長野サンコー様」がそれに当たり「プレス金型」といったキーワードで検索上位獲得に成功しています。Webサイトを見ていただくとわかるとおり、相当量のコンテンツを掲載しています。
後者の場合、いかに秀逸なターゲットの絞り込みができるかがポイントとなってきます。弊社のお客様では「昭和電器様」がこの戦略を採っています。「金属部品を樹脂化できる」という技術にターゲットを絞り込むことで、市場こそ狭くなりますが、確実に存在する需要をとらえ、問い合わせの獲得に成功しています。
ニッチな型種の場合
生産量の少ないダイカスト金型やゴム金型などを扱っている業者は、競合となる企業(サイト)が少なくなるため、主要キーワード対策による正面突破が比較的容易となります。
キーワード例 | 月間検索数(Google) | 競合サイト数(Google) |
---|---|---|
試作金型 | 140 | 9,820,000 |
MIM金型 | 20 | 1,820,000 |
ゴム成形金型 | 50 | 3,900,000 |
上記のとおり、メジャーな型種の場合と比べ、競合サイト数が一桁少ないことが分かります。弊社のお客様でも、試作金型であれば「テクノマート様」、MIM金型であれば「葛飾製作所様」、ゴム成形金型であれば「石井精工様」が、比較的短期間で各キーワードでの検索上位対策を成功させています。
まとめ
金型製造業がWebマーケティングで成功するためのポイントは以下のとおりです。
- 金型専業メーカーの場合、量産加工業者とのパートナーシップは必要不可欠
- 掲載するWebコンテンツの不足は努力でカバーする
- 型種に応じたWebマーケティング戦略を採用する
コロナ禍で十分な受注を確保できていない企業も多いかと思います。その状況を打破するために、今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。一社でも多くの技術力ある製造業が、技術マーケティングの力により生き残ることを祈っています。