テクノポートの井上です。今回はサプライヤー企業の実践的なWebマーケティング手法について紹介します。
サプライヤー企業のWebマーケティングは、自社製品を持つメーカーとはマーケティング手法が異なります。一般的なWebマーケティング手法がそのまま利用できないケースも多々あります。では何が通常と違うのか?メーカーとサプライヤーの業態の比較からサプライヤー企業の具体的なWebマーケティング手法まで紹介していきます。
この記事の目次
結論
この記事でお伝えする結論を先に記載します。
サプライヤー企業のWebマーケティング
成功させる秘訣は
事業の細分化と、細分化Webマーケティング
事業細分化や細分化Webマーケティングについて、順を追って説明します。
メーカーとサプライヤーの定義
メーカーとサプライヤーの区分けが明確ではないため、弊社としての定義を共有します。
- メーカー:製品や部材を販売している会社
- サプライヤー:製造技術を提供している会社
※自社製品を持ち製造技術の提供も行う、サプライヤー兼メーカーもある
メーカーとサプライヤーのマーケティングの違い
メーカーとサプライヤーのマーケティングの何が違うのでしょうか?まずは業態を比較し、違いを理解します。
上記の表から言えることは、下記の通りです。
- サプライヤー企業は明確なターゲットは作りづらい
- 他社との比較がしづらい
- 顧客メリットを明確に打ち出すことが難しい
など、売るための製品を持たないサプライヤー企業は総じてPRがしづらいと言えます。
発注元の新規発注の流れ
次に発注元の新規発注の流れを見てみましょう。
新規製品購入のフロー(メーカー)
メーカーの特に高額商品を主とした場合、製品購入決定までの検討期間が長く、意思決定には多くの人間が関与するのが特徴です。
新規加工依頼フロー(サプライヤー)
次にサプライヤー企業の場合です。発注元のメーカーは前提として、既存の発注形態が存在し、既に頼んでいるサプライヤー企業があります。
その上で新規で探さなければいけなくなるタイミングは下記のようなケースが考えられます。
- 技術的な問題(既存の発注先では対応できない)
- 品質問題(不具合が多く発生している)
- 納期に問題(納期遅れが頻発)
- 生産キャパオーバー(増産に対応ができない)
- 長期的な継続取引に問題(後継者不足)
- コスト問題(価格が折り合わない)
- リスク分散(2社以上の購買体制が必要になった)
新規を探す場合、なにか既存の発注形態に問題があるなどがほとんどです。納期が決まっているケースがほとんどのため、要件に適合する会社であれば、すぐにでも発注する可能性があると言えます。
会社の信用性、技術的な要件、コストなどが要件に挙げられます。
新規探索の第1段階
すでに取引のある会社や、知っている会社(展示会等での名刺交換など)を想起することから始まります。
新規探索の第2段階
自社の認知している会社で要件を満たさない場合に新たに探索します。その際の探索手段として最も多いのがWebでの探索です。
第2段階では早い段階で認知され検討の土俵に上がることが重要です。Webでキーワード検索した際に自社が上位に表示され、「この会社ならできそう」という期待感を持たせるだけで問い合わせにつながる可能性はぐっと高まります。
サプライヤー企業のWebマーケティング手法
前述した、サプライヤー企業の業態の特徴、新規発注の流れを踏まえた上で、サプライヤー企業の取るべきWebマーケティング手法が細分化Webマーケティングです。理想的なWebマーケティングは、具体的なターゲットを決め、競合優位性のある提供価値を定義し戦略を立てることです。
しかし、サプライヤー企業の場合、市場の需要における自社の価値がはっきりしていないケースがほとんどです。そのため、いきなりターゲットを明確化させた戦略を立てるよりも、自社の提供価値を知るためのマーケティングが先に必要になります。
Webサイトを更新し続けること前提で、下記の流れが必要になります。
- 市場に自社の事業内容を広く情報公開
- 市場にとっての自社の価値をはっきりさせる
- 自社の得意領域やターゲットを見極め、売れる仕組みを模索する
具体的な手法として、自社の事業内容を細分化し、さまざまな角度で市場に訴求することで幅広く認知させることが重要となります。
細分化Webマーケティングの主な流れ
細分化Webマーケティングの主な流れは以下のとおりです。
- 自社の対応できる加工領域をできる限り細分化
- キーワード選定
- キーワード対策を意識したサイトマップ構築
- ページコンテンツの制作
さまざまな角度で知ってもらうための事業細分化
まずは自社が持っている経営資源を整理します。キーワードが重複しても構わないのでさまざまな切り口で細分化していきます。
細分化したキーワードの需要・競合調査
細分化したキーワードのグーグルでの検索需要件数、競合サイト数をそれぞれ調べます。
数値はグーグルキーワードプランナーやグーグル検索から調べることができます。
主要キーワードの選定基準の基本
キーワードの選定基準の基本は検索数が多くて、競合サイト数が少ないものを選びます。
主要キーワードの選定基準 補足
他にも下記の3つの視点で選定していきます。
想定するユーザーが、探す可能性のあるキーワードか?
検索ボリュームがあっても、ターゲットとするユーザーが利用しないキーワードでは意味がありません。ユーザー像をしっかり想定し、ユーザーの立場で考える必要があります。
自社の事業との関連性が高いか?
検索のボリュームがあったとしても、自社の事業と関連性が低いと問い合わせに繋がりません。検索するユーザーの意図と自社の事業との関連性を確認しましょう。
例:切削加工業者
キーワード 半導体装置 ↔ 半導体装置部品 ↔ 半導体装置部品加工
Google検索での競合サイトのコンテンツボリュームの確認
検索した際に表示される競合サイトのコンテンツボリュームも確認が必要です。(特にECサイトが多く出てくるキーワードは、ECサイトのボリュームに太刀打ちできるコンテンツボリュームを確保することはできないため注意が必要です。)
サイトマップの作成
サイトマップ作成の前に覚えておきたいこと
SEO対策はキーワードをたくさん入れればよいという考えは間違い
SEO対策というと、関連するキーワードをできるだけたくさん盛り込む方が、色々なキーワードで見られアクセスを稼げると考えがちですが、実際にはそうではありません。
検索上位に表示されるためには、1ページにつき1つのキーワードを設定するのがSEO対策のセオリーとなっています。そのため、さまざまな角度で見てもらうためにはそれに該当するページがそれぞれ必要です。どのページでキーワード対策するかを意識しサイト設計を行います。
通常のサプライヤー企業のサイトマップ
こちらは一般的なサイトマップです。
事業内容は網羅していますが、キーワード検索からの流入を意識してサイト設計されていません。社名以外のキーワード検索で表示されることが少ないサイトマップです。
細分化したキーワードの流入を想定したサイトマップ
細分化した事業内容からキーワードを選定し、どのページからアクセスの流入をさせるかを想定しサイトマップを策定、ページ作成します。その結果、多様なキーワードにてアクセスされ、さまざまな角度で自社を知ってもらえるようになります。
ページコンテンツの作り方
ページ制作に必要な2つの視点と情報
では具体的に各ページのコンテンツを用意しようとなった際に、なかなか資料を準備ができないという方は多いです。その際に考えていただきたい視点が一般的な情報と、自社独自の情報の2つです。
5軸加工を例にすると以下の通りです。
自社独自の情報は用意が難しくても、一般的な情報はだれでも用意できます。「そもそも一般的な情報なんてみんな知ってるからわざわざ載せなくてもよいのでは?」と考える方が多いです。しかし、多くの観点から載せることをオススメしています。主に以下の理由があります。
- Google検索ロボットに評価されない:独自情報だけでコンテンツをしっかり用意できればよいですが、コンテンツが用意できなければキーワード検索でヒットしません。
- 専門性の無い人を顧客から排除している:お客さまの中には知っている方もいればこれから知識を深めようとするユーザーもいます。どちらの方にも届けられる方がユーザーは増えます。
- ブランディング的に損:基本〜専門的な情報まで網羅し掲載したほうが、その領域に専門性が高い会社とユーザーに意識付けされやすいです。「真空装置なら◯◯」のように意識付けできれば早い段階で案件の獲得ができます。
サプライヤー企業の具体的なWebマーケティング手法について紹介しました。業態、顧客の発注形態を理解し、自社の置かれている状況に合わせたWebマーケティング戦略を策定することが重要です。企業様によって課題はまちまちですので、ご相談あればお気軽にご連絡ください。