テクノポートの永井です。製造業専門のWebマーケターとして加工業やメーカーのWebマーケティングを担当しています。
今回は製造業のマーケティングの基本的な考え方についてまとめました。
この記事の目次
マーケティングとは
マーケティングとは「売れる仕組みを作ること」と説明されることが多いのですが、もう少し広い意味で定義すると「限られたリソースの中で、目的を達成するための確率を上げる考え方」になります。
そしてマーケティングを実施することで「競合他社との戦いに勝って、ユーザーが自社の製品を買う確率を上げるための作戦」を立てることができます。
ここで重要なのがマーケティングは必ず成功する考え方ではなく、あくまでも確率を上げる考え方になるということです。
この考え方を体系化したものが「マーケティングフレームワーク」です。今回はそのマーケティングフレームワークを紹介した上で、製造業がどのようにマーケティングを進めればよいかご紹介できればと思います。
売れる確率を上げるためのパラメータ
マーケティングフレームワークについて紹介する前に、まずは売れる仕組みについて紹介します。ものが売れるまでには下記に示した5つのパラメーターが関与しており、このパラメーターを良くすることで売れる確率は上がります。
そして、マーケティングはこの売れる確率を上げるためのパラメーターを良くする考え方になります。
売れる確率を上げるためのパラメータ(製品編)
1 認知 :多くの人に知られていると売れる
2 買いやすさ:買いやすいと売れる
3 機能 :競合よりも機能がいいと売れる
4 コスト :同じものであれば安いと売れる
5 ブランド力:強いと売れる
売れる確率を上げるためのパラメータ(技術編)
1 認知 :多くの人に知られていると売れる
2 買いやすさ:買いやすいと売れる
3 技術 :技術力が高いと売れる
4 コスト :同じものであれば安いと売れる
5 信用力 :信用力が高いと売れる
製品も技術も基本的には考え方は同じです。良い製品を作り、認知度を上げて、どこでも購入できるようにし、コストを下げる。そして、ブランド力を高めていくことで売上は上がっていきます。だからこそ多くの企業は製品開発と広告宣伝に投資を行っています。
もし圧倒的に競合他社よりも優れた製品が開発でき、広告予算を十分確保できる場合マーケティングをする必要はありません。しかし、現実には企業のリソース(カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産、設備、場所など)は限られており、製品の機能や告知予算などで他社を圧倒することは難しい状況のはずです。
しかし、企業の利益を上げるには、その限られた条件の中で競合に勝たなければなりません。
ユーザーから選ばれるには、他社とは違う価値を提供しなければなりません。これがいわゆる「差別化」になります。差別化するためには、ユーザーが何に興味を持ち、何を欲しているのかを理解した上で、競合に勝てるポイントを見つけ、そのポイントにリソースを集中させることでオリジナルの価値を作らなければなりません。
それを体系化したものが、今回紹介する「マーケティングフレームワーク」です。
このマーケティングフレームワークを使うことで、自然とマーケティングの考え方ができるようになりますので、ぜひ挑戦してみてください。
マーケティングフレームワーク
マーケティングの方法はさまざまですが、今回は特に使われているフレームワークについて紹介します。基本的には弊社もこの考え方をベースにWebマーケティングを進めています。
①市場の分析
売れる確率を上げるには、市場の情報が必要になります。そのため、マーケティングフレームワークでは市場分析から始めていきます。
この分析の目的は戦場の理解です。「今のお客様が誰で、自社がどのようなサービスを提供していて、競合はどこなのか、なぜお客様は競合ではなく自社を選んでくれているのか」などといった情報を洗い出すことで、戦場を具体的に想像しやすくなります。
この情報をまとめる際に役立つのが「5C分析」というフレームワークです。
5C分析
Company:自社の分析(サービス内容、強み、お客様が仕事を依頼してくれている理由)
Consumer:お客様となり得る人たち
Customer:流通、代理店などの中間顧客
Competitor:競合他社
Community:地域社会の理解(法律、景気、為替、税金)
製造業の場合は、5Cを簡単にした3Cで十分だと思います。
3C分析(5Cの簡易版)
Company:自社の分析(サービス内容、強み、お客様が仕事を依頼してくれている理由)
Customer:お客様となり得る人たち
Competitor:競合他社
これによって「誰に、何を提供し、どこに勝たないといけないのか」が明確になります。
②目的の設定
①分析が終わったら次に達成したい目的を設定します。
目的は売上高、利益率、新規顧客獲得数、既存顧客の売上拡大など、企業にとって重要な指標に基づいて設定してください。 ただし、実行する人のやる気を継続させるためにも、達成不可能な高い目標ではなく、達成できるかどうかのギリギリのラインを見極めて設定してください。
また、目的はシンプルで明確なものにしたほうが、組織内のコミュニケーションは円滑に進みます。
複雑な例として、
問い合わせ月何件+売上の何%アップ+原価の何%低減+新規顧客獲得数を昨年比1.5倍
などのような複数の達成項目がある場合、優先順位がわからず混乱が生じることがあります。混乱を避けるためにも、シンプルで明確な目標を設定しましょう。
③ターゲットの設定
目的まで決まったら、次にターゲットを設定します。
ターゲットを決めることで、誰に対して会社のリソースを割くのかが明確になります。逆にターゲット以外にはリソースは割かないことを意味しますので、ターゲットの設定には注意してください。
製造業の場合、ターゲットは結構大雑把でも問題ありません。例えば、大手自動車メーカーの設計、中堅医療機器メーカーの開発、中小製造業の購買ぐらいの大枠で大丈夫です。売れる確率を上げるためには「お客様の求めるもの」を理解する必要がありますが、お客様によって求めるものは変わってきます。そのため、「求めるものが同じもの」でカテゴリーを作ってターゲットとして設定します。
例えば、設計だったら技術を求めている、購買だったら低価格を求めているなど、BtoBの場合はターゲットの求めるものが職種に理解しやすい構造になっているため、大体職種で分ければ問題ありません。ただし、この分け方だとまだ粗いため、もう少し絞ったコアターゲットを作ります。
戦略ターゲットで大枠を決めて、コアターゲットで本当にリソースを割くべき対象を決めます。
ターゲットは狭めれば狭めるほど行動原理の予測は容易になりますが、同時に市場範囲も狭くなり、絞りすぎると目標達成が難しくなるリスクがあります。そのため、ターゲットは絞り込みすぎないことも大切です。
④戦略の策定(価値を作るアイディアが重要)
戦略はマーケティングを成功させる上で最も重要な要素になります。立てた戦略の方向性が違った場合、取り返しがつかなくなるかもしれませんので時間を使って検討してください。
戦略では「ターゲットにとっての自社の価値」を徹底的に考えて言語化します。
言い方を変えると「自社が選ばれる理由」、「競合との差別化」、「ブランディング」などになります。
この戦略を立てるために「ターゲットの本質的な欲求」を見つけ出さなければなりません。さらに、それが競合に対して、自社のほうに優位性があるのかも検討する必要があります。
戦略を検討するときは徹底的に「ターゲットは何を考えているのか?」というターゲット目線の情報が必要になります。ターゲットの気持ちを知るためには
ターゲットの気持ちを知る方法
1.自分がターゲットの立場になってみる
2.ターゲットへのアンケート調査
3.ターゲットへのインタビュー
などを行うとよいでしょう。製品を販売する場合は競合製品も含めて実際に使ってみたり、技術の場合はターゲット目線で発注先を選んでみるのもよいと思います。この段階でいろいろなアイディアを出していきます。アイディアはあくまでも「価値」に紐づけして考えていきましょう。
ターゲットを理解できなければ、良い戦略やアイディは出てきませんのでターゲットを理解することに全力を出してください。
ターゲットを理解するには時間やアイディアが必要になります。精度を高めるには十分な時間を使ったり、複数人で検討したりすることも大切になります。戦略はマーケティングの中でも最重要要素になりますので、気を引き締めて策定してください。
⑤戦術の決定(価値を届けるアイディアが必要)
戦術は「立てた戦略をターゲットに届ける方法」です。ここでは価値を届ける具体的なアイディアであったり、メッセージ、仕組みを検討します。
戦略での成果物はターゲットとの唯一の接点になり、売上を決めるのは戦術の質と言われるほど重要な要素になります。
戦術を決める際のフレームワークとして「4P」があります。
一般的な4P
Product(製品):ターゲットに提供するモノ→売上パラメータの機能に相当
Price(価格):モノの価格→売上パラメータのに相当
Place(場所):売る場所→売上パラメータの配荷に相当
Promotion(プロモーション):告知方法と見せ方→売上パラメータの認知に相当
製造の場合は4Pは下記に書き換えられます。
製造業のための4P
Product:技術
Price:価格
Place:納期
Promotion:告知方法
この中で、Product、Price、Placeは社内体制として変更が難しい場合が多いため、Promotionの方法に話が行きがちですが、改めてProduct、Price、Placeも検討する必要があります。
製造業の場合の4P例1
- Promotion:展示会に出展し、自社の強みを掲載したパネルを用意する
- Product:技術を見せるための製品を展示
- Price:その場で口頭で伝える
- Place:その場で口頭で伝える
製造業の場合の4P例2
- Promotion:WebサイトでSEOをやる
- Product:技術を見せるための実績ページや技術ページを作る
- Price:コストダウンへの取り組みページを作る
- Place:お問い合わせページを作る
テクノポートが独自で開発設計者にインタビュー
ご興味がある方はぜひダウンロードをお願いいたします。
調査資料のダウンロード:https://marketing.techport.co.jp/proposal-report/202401-2/
Promotionの質を高めるには、戦略に合わせたデザインやキャッチコピーも必要になりますので戦術を検討する際は「戦略に合っているかどうか」に立ち戻りながら進めてください。
製造業が認知度を上げるための方法
Webを活用(検索対策、広告)
製造業が認知度を上げる方法として最も効果的な方法はWebを活用した方法になります。具体的にはターゲットが検索したときに、検索結果に自社のサイトを表示させることで認知度が向上するという仕組みになります。
これを実現する方法は大きく2種類あります。一つはSEOと言われるもので、良いコンテンツを書いてGoogleから評価してもらい検索順位を上げる方法です。もう一つはリスティング広告と言われるもので、費用を払って強制的に検索結果の上位に表示させる方法です。
SEOの場合は、一度上位になれば長期間維持できるというメリットはありますが、上位表示されるまでに時間がかかる、記事を書いても必ずしも上位表示されるとは限らないといったデメリットがあります。
リスティング広告の場合は、すぐに上位表示されるというメリットはありますが、やめた途端にアクセスもなくなります。
そのため、SEOとリスティングを併用する方法がおすすめです。
詳しい方法については下記をご参照ください。
製造業のためのSEO対策:https://marketing.techport.co.jp/archives/23889/
BtoB製造業におけるリスティング広告:https://marketing.techport.co.jp/archives/27141/
展示会の活用
展示会は不特定多数の人に自社を知ってもらうには最適な方法です。Webの場合、顕在ニーズのある人にしかアプローチできませんが、展示会の場合は潜在ニーズを持っている人にもアプローチできます。また、製品を直接見てもらったり、営業をかけられたりするのも大きなメリットです。ただし、期間中にしか効果が出ないため、Webと平行して実施することをおすすめします。
展示会出展に合わせたホームページの更新ポイント:https://marketing.techport.co.jp/archives/16044/
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