製造業のWebサイト企画に欠かせない3C分析で戦略を練る

【執筆者紹介】徳山 正康
この記事の執筆者
徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から東証プライム市場に上場しているメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

【寄稿実績】
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今回はWebサイト制作を行う上での第一歩、企画をどう立てていけば良いのかについて解説します。Webマーケティングの企画を立てるためには、まず自社の置かれている状況を整理するために、情報をまとめるところから始めるのがベストです。その際に役立つのが「3C分析」というフレームワークです。もうおなじみのフレームワークかとは思いますが、Webサイトの戦略構築を行う上でどのように使えば良いのかを具体的に解説します。

3C分析とは

3C分析における3Cとは、顧客=Customer、競合=Competitor、自社=Companyのそれぞれの頭文字である3つのCを指しています。3C分析とはこれら3つの視点から全体像を可視化することで、複雑な環境においても企画を立てやすくなります。Webマーケティングを成功させる上で重要なことは、「ターゲットとなる顧客が多くいる市場を選ぶこと」、「競合他社が少ない市場を選ぶこと」、「自社の強みが活きること」。この3つの条件が揃う戦略を立てることです。中小企業の経営者であればランチェスター戦略を学んでいる方も多いと思いますが、考え方はほぼ同じです。

製造業のWebマーケティングの場合、特に「競合他社が少ない」というポイントをおさえることが重要です。せっかく下請け脱却を狙ってWebマーケティングを始めたのに、競合他社が多い市場を狙ってしまうと、そこで価格競争に巻き込まれてしまうからです。それでは下請けでコストダウンを要求される環境から抜け出せません。

こういう話をすると「うちは特殊な技術もなく、競合が多いから無理だよ」と考える方が多くいます。しかし、製造業の場合、他の業界と違い「ある特定の分野」で技術を磨いている会社が多くあります。Webマーケティングを行う上でも競合他社の少ない「ニッチ市場」を見つけられる可能性が比較的高いため、3C分析をしっかりと行えば光明が見えてきます。

競合調査

競合(Competitor)は、3C分析の中核的要素の一つであり、企業が市場での競争力を維持および向上させるための重要な視点です。競合分析は、同じ市場で技術やサービスを提供する他社の戦略、強み、弱みを評価することが目的です。その結果、競合企業に対する差別化戦略を効果的に構築できるようになります。

主要な競合他社の特定

  • 自社と同じ顧客層をターゲットにしている企業や、類似の製品やサービスを提供する企業をリストアップする。
  • 目標とするSEOのキーワードがある場合は、検索して検索上位に表示される企業をリストアップする。
  • 場合によっては現在の直接的な技術の競合だけでなく、代替技術を持つ企業にも目を向けてリストアップする。

競合の情報整理

  • 各競合他社の規模、技術の具体的な詳細、それぞれのメリットでメリットなどの基本情報を整理する。
  • サイト上でのコンテンツにどういった内容が書かれているかを整理する。
  • 必要に応じて競合調査のツールを利用する。

競合調査の仕方については以下の記事が参考になります。

自社分析

3C分析における「Company(自社)」の要素は、企業が市場での競争力を評価するための重要な分析軸となります。自社の強みや弱み、競争優位性を明確に理解することで、自社が市場でどのような位置づけにあるのかを把握し、競争戦略を策定する際の基盤を築きます。

自社分析で考慮すべき主要ポイント

自社分析を進める際に重視するべき主要項目としては以下のようなものがあります。

資源と能力

自社が保有するリソース(ヒューマンリソース、技術力、資本など)や、競争の中で発揮できるスキルやノウハウを洗い出します。具体的には、人材の専門性、テクノロジーの導入状況、設備やインフラが分析の対象です。

ブランド力と市場シェア

すでに自社のブランドが市場で認知されている場合は、信頼されているかを評価することは重要です。加えて、競合他社に対してどれだけの市場シェアを占めているかを把握することによって、自社の強みとして確立することができます。

技術・サービスの特徴

自社が提供する技術やサービスの特徴、差別化ポイントを明確にします。他社にはない独自性や付加価値を再度見直します。

自社分析の仕方については以下の記事が参考になります。

市場調査

3C分析において「Customer(顧客)」では、顧客を正確に理解することで、企業は市場からのニーズや欲求を把握し、適切な商品やサービスの提案が可能となります。

顧客ターゲットの特定

顧客分析の第一歩は、ターゲットとする顧客層を明確にすることにあります。市場を細分化し、特定のターゲット層を選定するためには、さまざまな情報を考慮する必要があります。

顧客ニーズの分析

おおよそのターゲットの輪郭が出来上がったら、ターゲット顧客のニーズや課題を深く掘り下げます。たとえば、顧客が求めているのは「低価格」なのか、それとも「高品質」や「利便性」なのかを考える必要があります。顧客ニーズを正確に把握することで、より的確なマーケティング施策が展開できます。

購買プロセスの理解

顧客がどのようなプロセスで購買決定を行うかも分析しておく必要があります。顧客がどの段階で何を期待しているのかを知ることで、効果的なマーケティング戦略を設計できます。

顧客分析の仕方については以下の記事が参考になります。

3C分析の具体的な進め方

3C分析の進め方ですが、まずは下記の図をご覧ください。どのような情報を集めれば良いかをまとめたものです。

3C分析を行う際に、どこから書き始めるのがベストなのか、悩まれるかと思います。正解はなく、書けるところから書いていけば良いと私は考えています。会社によって、どこからが書きやすいかは異なるのではないでしょうか。

既に新規営業を積極的に行っている会社はターゲットとする顧客についてよくご存じでしょうし、特殊な技術をお持ちの会社は自社の強みについてよくご存じでしょう。それぞれのパターンによって、どういった順番で情報を埋めていけば良いかを考えていきます。

A、顧客分析から始めるパターン

狙いたい顧客ターゲットが明確な方は、

顧客分析を行う→その顧客が使いそうなキーワードを考える→そのキーワードで引っ掛かる競合サイトを分析する→競合に対しどのような差別化を図れば良いか、自社の強みをどうPRするか考える

という流れになるかと思います。

ターゲットを想定している顧客が「既存顧客」なのか「新規でこれから獲得していきたい顧客」なのかでまとめる情報が異なるため、分けて考えることをおすすめします。前者の場合「事実」ベースの情報が中心となり、後者の場合「仮説」ベースの情報が中心となるからです。

B、自社分析から始めるパターン

「イチオシの技術があるからそれをPRしたい」という方は、

自社分析を行う→その技術を使って獲得できそうな顧客像を見出す→その顧客が検索しそうなキーワードで引っ掛かる競合サイトを調査する

という流れが良いかと思います。

自社分析から始める場合に気を付けていただきたいのは、技術論にハマり過ぎないことです。その技術を使うことで顧客にどのようなベネフィット(利益)が生まれるのかについて、考えを深めてください。ターゲット顧客の立場に立ってどのような言葉をチョイスすれば良いか、専門的な言葉を使い過ぎていないか、などにも気を付けてください。

C、競合分析から始めるパターン

どうしても勝ちたい、もしくは参考にしたい競合企業(Webサイト)がいる場合は、

競合企業のサイトを分析する→どのような顧客を狙っているか仮説を立てる→その顧客に対し、競合よりも強みを見出せそうなポイントを探す

といった感じでしょうか。

くれぐれも「Webマーケティングに成功している企業」を分析対象とするようにしてください。成功していないWebサイトに勝ったとしても、自社が期待する効果を得ることができないかもしれないからです。せっかくなのでその分野で最も成功していると言われるような企業(Webサイト)を分析対象としましょう。

分析のポイント

分析のポイントとしては、3つの要素をバラバラに考えず常に関連付けて考えることです。最初に考えたCを前提条件として、他のCを考えてください。始めに設定した前提条件を崩してしまうと論理的におかしなことになっていき、一向に話がまとまらなくなります。

そして、何パターンか顧客ターゲットを考えることをお勧めします。なぜなら、この後に「本当にWebマーケティングで成功できるのか」を検索キーワードの需要調査を行ったり、競合調査を行い検証していく過程があるのですが、その際にWebサイトで狙っていくのに向いていないと判断せざるを得ない顧客ターゲットもいるからです。

冒頭にお伝えした「ターゲット顧客がたくさんいる市場を選ぶこと」、「競合他社が少ない市場を選ぶこと」、「自社の強みが活きること」を念頭に置いた戦略を考えるためには、3Cのバランスがとても大事になります。そして、勘違いしていただきたくないのは、3C分析だけで戦略を固めないことです。

3C分析はあくまでも仮説であり、この後に定量的な評価を加えた上で戦略を決めていくので、あくまで情報を整理しただけの状態だと考えていただいた方が良いでしょう。3C分析を行った後に、どのようにWebサイト戦略に落とし込んでいくかについては、他記事も参考にしていただければと思います。まずは3C分析、頑張ってみてください。

「MFTフレームワーク」もおすすめ

3C析以外で戦略を構築するために頭を整理する手法として「MFTフレームワーク」というものがあります。3C分析がどのような業種にも当てはめられる手法なのに対し、MFTフレームワークは技術をマーケティングする目的に特化した手法です。より製造業向きの手法といえますので、こちらも参考にしていただければ幸いです。
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徳山 正康
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手がけるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から東証プライム市場に上場しているメーカーまで、累計1,000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。

グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家

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