テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。
この記事では「海外SEO」について、私が持てるノウハウを余すことなく公開しています。
この記事の目次
海外SEO対策の基礎
「海外SEO対策」とは?
この記事では「海外SEO対策」を「外国語サイトに施すSEO対策」であると定義して話を進めます。
丁寧に言い換えると「海外で検索が行われた際、自社のWebサイトを検索結果の上位に表示させるための施策」と言えます。なおこの記事では2022年4月現在、世界の検索エンジンのシェア約92%のGoogleでの英語のSEO対策を解説しています。
参照
Search Engine Market Share Worldwide | Statcounter Global Stats
海外SEO対策が難しい8つの理由
海外SEO対策が難しいと考える8つの理由を解説します。
理由1 競合の多さ
海外SEO対策のメリットの一つである「市場が大きい」と同時に、海外SEO対策は競合が多くSEO対策の難度が高くなります。(※日本語より話者が少ない言語でSEO対策をする場合は当てはまりません)
海外のGoogle向けにSEO対策を行う場合、(その言葉の話者の数に比例し)競合サイトの数が増えます。単純計算で、英語話者は世界に約15億人いるため、日本語話者より10倍以上多い、すなわち競合サイトも10倍以上多いと言えます。(参照)
原則として検索順位は、他の競合サイトと自社サイトの相対評価によって決定されます。したがって、あるキーワードで国内のGoogleで検索結果1位のページをそのまま翻訳し外国語サイトに公開しても、対象の英語キーワードで検索結果1位を取れる可能性は低いです。(国内で一定の反響があるサイトをそのまま英訳しても、国内ほど反響が出ないのはこれが一つの原因です)
すなわち英語サイトでSEO対策を行う場合は、日本国内の検索順位は全て忘れ、一から海外の競合サイトを調査し「上位表示させるためにはどのようなコンテンツが必要なのか」を別途調査する必要があります。そして調査の結果、ほとんどの場合、日本語ページよりもより質の高いコンテンツ(検索者の意図を多く満たすページ)が求められます。
理由2 競合の強さ
海外SEO対策では、競合企業の多さに加えて、競合企業の強さも競争の激しさに大きな影響を与えていると考えます。
特に、すでに海外の大手企業が検索結果(市場)を席巻しているような業界では、国内と同じやり方で勝てる見込みは限りなく低くなります。また、国内ではある程度ページを作り込んでおけば検索結果の上位が取れたようなキーワードでも、海外では競合が強く、相対的な評価が下がる場合もあります。
また一般にデジタルマーケティング業界は、国内よりも欧米の方が研究やノウハウの発達が早いスピードで進んでいるため、全体的な競争のレベルが高いと言えます。肌感覚としては、日本のプロ野球とメジャーリーグの違いくらいの差があると感じます。(根拠はありません)
理由3 Webサイトの表示速度
海外SEO対策では、海外からアクセスされた際のWebサイトの表示速度にも気を配る必要があります。
一般に国内のSEO対策であれば、ある程度信頼性のある国内のWebサーバーを使用していれば、サーバーの表示速度に大きな差がつくことはありません。一方、海外SEO対策では、SEO対策を行う市場からの地理的な距離を考慮し、適したサーバーを選定し使用する必要があります。
一般にアメリカやヨーロッパ市場向けにSEO対策を行う場合は、アメリカの東海岸に近い位置、もしくはヨーロッパの主要都市にサーバーを設置することをおすすめします。ヨーロッパにサーバーを置く際は、GDPRをはじめとする個人情報保護の観点から問題がないかも確認する必要があります。
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サーバーの設置場所と表示速度の関係は、以下の記事で詳しく解説しています。
理由4 外国語コンテンツ作成の手間
一般にどの企業においても、国内向けのWebサイトは海外向けのWebサイトよりもサイトの規模が大きく内容が充実しています。理由は単純で、国内向けWebサイトを更新し、余力があれば同じ内容を海外向けのWebサイトに展開するという流れが主流であるためです。
ただ海外SEO対策で勝つためには、海外向けのページは海外の競合調査を別途行い、海外で勝つために別途戦略から考えることが必要です。国内向けのページは、あくまでも海外向けのページを作る際の補助くらいの位置付けで、活用することをおすすめします。
この海外向けのページを一から作成する手間と労力は、短期的に見ると価値が分かりづらく軽視されがちです。一方、中長期的に見ると、やはり海外向けに作り込まれたページほど成果が出やすいため、特に重要なキーワードやページでは、この手間と労力を惜しまないことが重要です。
理由5 サイトのドメインパワー
一般に海外向けのWebサイトは、国内のそれよりもサイトのドメインパワーが低い傾向があります。こちらの理由も先ほどと同様に、海外向けのサイトは国内サイトよりも後発、かつ優先順位が落ちるため、国内のサイトよりも評価が蓄積していないためです。
国内サイトの作り方によっては、国内のドメインパワーが引き継げるパターンもあるため、可能な限り国内のドメインパワーが引き継げるかどうか確認した上で、海外向けサイトの作り方を決定することをおすすめします。
理由6 ドメイン・サーバーの選定
海外SEO対策を本格的に進めるにあたって、海外向けサイトの専用のドメイン・サーバーの選定、設定をする必要があります。
理由は、ドメイン・サーバーを国内とは別に用意することが有効であるためです。特に国内企業向けドメイン(.co.jp)に英語サイトが格納されている場合、海外からの検索結果に表示される可能性が低くなるため、.comをはじめとするgTLD(Global Top Level Domain)に切り替えることをおすすめします。
また、ドメインとサーバーの費用は一般的には、ドメイン費(年額 約1,500円)、サーバー料金(安いもので月額 2,000〜5,000円、高いもので月額 10,000円〜)となります。これらの要素に加え、サイトに予想されるアクセス数、ターゲット市場の位置などを複合的に考慮してサーバー・ドメインの選定を行うことは難度が高いと言えます。
理由7 外国語キーワードの選定
外国語キーワード選定は、海外SEO対策の最も重要な作業であると同時に、国内のそれよりも難しい作業になります。
例えば、日本語である製品を探索する人が使用するであろうキーワードを洗い出す場合、ある程度のキーワードは想像することができます。それは言語としての知識が豊富であることはもちろん、その製品の業界にいる人が使用するキーワードにも馴染みがあるためです。
一方、同じことを英語で行う場合、単純な英訳では想像できないような呼び方や、独特の表現方法が見つかることが多々あります。これは、日本語では一つの呼び方である言葉に対して、英語では類語の数が多く、複数の呼び方がつけられることが多いためです。すなわち、盲目的に日本語から機械翻訳を使って翻訳したキーワードでSEO対策をしても、英語話者からすると見当違いなキーワードを選定してしまっている場合があります。
また日本語から英語に訳すという形でキーワードを選定すると、日本語ではそもそも存在しないような表現を見落とすことになります。そのため、外国語でキーワードを選定する際は、日本語の調査結果はあくまで参考程度にしておき、製品・サービスを表す言葉と検索者が使用するであろうキーワードをゼロから考え直すことが必要です。
理由8 外国語コンテンツの作成
外国語キーワード選定と同様に、外国語でのコンテンツ作成も海外SEO対策を難しくさせる要因の一つであると考えます。
英語として自然な文章を作成することはもちろん、ページの構成がネイティブにとって読みやすい構成になっているか、使用されるキーワードは意味が通るだけでなく自然な表現が使われているか、など自社だけで判断することが難しい場合もあります。
上記のようなポイントは一見するとSEO対策には関係ないように思えますが、ページに入ってからユーザーの滞在時間やエンゲージメント率もSEO対策には影響を与えます。したがって、上記のようなポイントを押さえることはSEO対策においても間接的に効いてきます。
海外SEO対策で勝つための3つの戦略
上記の難しさを踏まえた上で、どのように戦うべきか私の経験をもとに有効な戦略を3つ提案します。
戦略1. 海外の競合が提供できない強みに特化する
マーケティングの戦略を考える際に使用される「3C分析」というフレームワークがあります。この考え方はSEO対策にもそのまま応用することができます。
海外SEO対策において、3C分析を活用する場合、以下の3つの事項を上から順に整理する必要があります。
分析項目 | 分析する内容 |
---|---|
顧客(Customers) | ・検索者のニーズは何か? |
競合(Competitors) | ・上記のニーズの中で、すでに検索結果の上位サイトが満たしているものは何か? |
自社(Company) | ・さらにその中で、検索結果の上位サイトが満たしきれていないニーズは何か? |
自社が海外でマーケティングを強化するべき製品を見極める際にも、その製品に関するSEO対策を行う際にも上記の考え方は応用できます。
また個人的にSEO対策の戦略としてよく耳にする「独自性のある情報」を追加しましょう、というアドバイスも、厳密にいうと「(顧客が求めている情報の中で、競合が満たしきれていない)独自性のある情報」という表現が正しいと思います。また、すでに競合がほぼ全てのニーズを満たしているような状態であっても、別の角度からニーズを満たすことができないか、と考えることでSEO対策の戦略が見えてくることがあります。
戦略2. 日本語サイトのページを活かす発想を捨てる
これまでにも記述しましたが、日本語サイトで成果の出ているぺーじをそのまま翻訳しても、同じような成果は期待できません。言い換えると、日本語サイトで築いてきた成功体験は一度忘れ、海外用のSEO対策戦略を一から検討する必要があります。
日本語サイトを活かす、という発想にとらわれるとキーワードの選定からページの構成作成に至るまで、不必要に制限をかけた状態で行うことになります。そうなると、日本語からの翻訳では考えつかないような表現や検索キーワードを見つけることが困難になり、機会損失につながる可能性があります。
したがって戦略策定までは、あくまで海外SEO対策用に別途行い、その過程で日本語サイトの情報が使えそうであれば使う、くらいの考え方で進めていくことが成功の確率を高めると考えます。
戦略3. 外国語は徹底的に調べる
よくお客様から「どのような方法でこんなに英語キーワードを洗い出したんですか?」と聞かれます。回答は至ってシンプルで「地道に調べ、徹底的に洗い出す」です。
もちろんキーワード調査の過程で使用するフレームワーク(考え方)、ツールや、経験による感は確かにありますが、根底の姿勢としては上記の回答になります。また英語は日本語に比べ言い換え表現や類語が多く、一つの製品に対して複数の呼称が使われるケースが多々あります。
そのような場合であっても、一つずつ検索結果を見ていき、検索者の求める製品が自社製品と合致しているかを丁寧に確認することが重要です。具体的な調査方法やツールは、以降で解説しています。
海外SEO対策を実施する際のポイント4選
「海外SEO対策のポイント」を4つ解説します。
ポイント1. キーワードの選び方
外国語のキーワード選定の方法は、基本的には言語の違い以外に日本語のそれと大きな違いはありません。ただ外国語のキーワードは日本語話者にとってはなじみのないことが多いため、海外のユーザー、競合他社がどんなキーワードを使っているのかを徹底的に調査する必要があります。
私が普段、英語のSEO対策においてキーワード選定を行う際に意識していることをまとめます。
1-1. 海外の英語圏の同業他社が使用しているキーワードを調査する
英語圏の企業が使っている製品・サービスの呼び名は正しいであろう、という仮定のもと海外企業のWebサイト(特に英語圏の企業)を重点的に調べ、彼らがサイト上で使用しているキーワードをリストアップします。
リストアップしたキーワードの中から「月間平均検索ボリュームが大きい」かつ「自社の製品・サービスを正確に表すもの」をSEO対策するキーワードとして選定します。特に英語は類語が多いため、日本語では一つの呼び名しかないものに、複数の呼び名が当てられていることもあるので、注意が必要です。
細かな外国語キーワードのニュアンスがわからない場合は、Googleの画像検索をすることで、キーワードがイメージ通りのニュアンスを持っているかを確認できる場合もあります。
1-2. 問合せに使用されているキーワードを使用する
外国語サイトに問合せが既に来ている場合、問合せの文章に使用されているキーワードをSEO対策のキーワード候補として検討することも重要です。
特に、こちらが意図したキーワードとは別のキーワードを使用したお問合せが来た場合は、両方のキーワードの月間平均検索ボリューム、海外のGoogleでの検索結果をよく調べ、お客さまが使用しているキーワードに合わせた方が良いのかを検討する必要があります。
実際に弊社が海外Webマーケティングを支援させていただいている企業様でも、同様の状況になったことがあります。
1-3. 海外の競合サイトは専用のツールを使用して調べる
キーワード選定を行う際に海外の競合サイトが使用しているキーワードを調べる必要があります。海外の競合サイトを探す際に一つ注意することは、検索結果の表示の仕方です。というのは、Googleは検索者が使用するGoogleの言語と位置情報によって検索結果の表示を変えるためです。
例えば、同じアメリカのGoogleを使用して検索を行ったとしても、日本から検索を行った場合とアメリカで検索を行った場合では、検索結果が変わります。そのためアメリカの検索結果を調べるためには、専用のツールを用いて仮想的にアメリカから検索を行う必要が生じます。(詳しくは記事の後半「海外SEO対策に使えるツール」で紹介しています)
これは細かいテクニック的な話ですが、キーワード選定の精度を上げるためにも意識しておくべきことだと思います。
ポイント2. コンテンツの作り方
外国語コンテンツ(記事の中身)を作る上で最も重要なのは、文章の質です。まず、外国語話者が読んで誤解を与えない文章(意味が一意に取れる文章)を掲載することが最低限必要です。これができていない場合、誤解を与え、トラブルに発展するおそれがあるためです。
そのほかで私が普段意識していることを以下にまとめます。
2-1. 翻訳はわかりやすさを最優先する
翻訳は、何よりも「わかりやすさ」を最優先させましょう。理由は、英語サイトはネイティブだけでなく、非ネイティブも閲覧する可能性があるからです。
英語を第二言語として使用するユーザーにとって、長文の英語を読んで意味を正確に理解することは大変な作業です。したがって、彼らにも意味が伝わりやすいように、以下のような工夫をすることをおすすめします。
- 箇条書きを使用する
- 図・表を使う
- 長文は短く区切る
- シンプルな文法・単語を使う
私たち日本人が、英語の文章を読み際にも同じことが言えると思います。読み手側の気持ちを考慮し、ネイティブにも非ネイティブに伝わりやすい英語文章の作成を心がけましょう。
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Webサイト上での日英翻訳の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
機械翻訳の翻訳精度と使用上の注意点は、以下の記事で解説しています。
2-2. 英語文章の作成パターン
一般に、英語記事を新規で作成する場合、以下2つのパターンが考えられます。
- 日本語の文章を作成し、その文章を翻訳する
- 英語で文章をゼロから作成する
私は英語文章する場合、海外の記事執筆サービスを利用する方法が良いと考えます。理由は、かかる工数に対して得られる成果物の質が高いためです。
前者の場合、「翻訳」という工程が加わる分、工数がかかるのは明らかです。加えて、記事の品質を担保するためには、文章の構成、文章の正確性という確認項目に加え、翻訳の正確性も確認する必要が生じます。また翻訳という形態をとる以上、あくまで日本語の表現を英語化した文章になります。すなわち、ネイティブが実際に書くような文章にはなり得ません。
一方、後者の場合、工数が少なくより自然な英語の文章が仕上がり、かつ翻訳確認も不要であるため、メリットが大きいと言えます。デメリットを挙げると、社内で英語文章を確認することが難しい場合、記事の品質担保(文章の構成、文章の正確性の確認)が難しくなります。
弊社では、基本的に後者の方法をおすすめし、英語での文章確認が難しい場合は、前者の方法を取り入れています。
ポイント3. サーバーの選び方
海外SEOを行う場合、サーバーの選び方も上位表示を狙うために重要な項目の一つになります。
特に重要なことは「特定の国と地域で速い速度で表示させたいのか?」それとも「世界中どこからアクセスされても速い速度で表示させたいのか?」ということです。
前者の場合は、対象の国、地域からアクセスされた際に早く表示されるサーバー(例:現地にサーバーを有する会社)と契約することが効果的な対策になります。
一方、後者の場合は、弊社ではクラウドサーバーの一つである「AWS(Amazon Web Services)」使用を推奨しています。AWSとは、ショッピングサイトで有名なAmazonが提供しているクラウド型のWebサービスです。
このサーバーを使用するメリットは「CDN(Content Delivery Network)」と呼ばれる世界中に張り巡らされたネットワーク回線を利用して、世界中のどの地域からアクセスされても高速でWebサイトを表示できる点です。(詳しくはこちら)
またAmazonが管理していることもあり、セキュリティのレベルも担保されているため安心して利用できます。
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サーバーの設置位置が外国語サイトの表示速度に与える影響は、以下の記事で解説しています。
ポイント4. ドメインの選び方
外国語サイトでSEO対策を行う場合、ドメインは大きな意味を持ちます。
まず大前提として、国内企業向けドメイン「.co.jp」の配下に外国語サイトを格納している場合、海外SEO対策ではかなり不利になります。これは海外のGoogleで検索が行われた際「.co.jp」ドメインのサイトは検索結果に表示されづらくなることが大きな理由です。
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外国語サイトのドメインの選び方は、以下の記事で解説しています
では「.co.jp」以外のドメインを使用するとして、考えられるのは以下の4パターンです。
4-1. 全世界用ドメイン
全世界向けドメインを日本語サイトとは別に取得する方法です。
例えば、日本語サイトが国内企業向けドメイン「.co.jp」を使用している場合、外国語サイトでは地域性を持たないジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)である「.com」や「.net」を使用するという方法です。
こちらの方法を採用することで、世界中のどの国と地域から検索された場合でも、検索結果の上位に表示される可能性を高めることができます。(検索者が使用している言語がWebサイトの言語と一致していることが前提です)
一方で、日本語サイトとは別でドメインを取得するための費用が発生します。(年額 1,000〜1,500円程度)
※Googleサーチコンソールの「インターナショナルターゲティング」という機能を使うと、サイトがジェネリックトップレベルドメイン(.com や .org など)を使用している場合でも、どの国を重要視しているかの判断材料となる情報をGoogleに提供することができます。
4-2. 国別専用ドメイン
特定の国と地域で上位表示を狙う場合に有効な手法です。
例えば、韓国語のWebサイトを作成し、ccTLD(国別コードトップレベルドメイン)と呼ばれる韓国企業が使用できるドメイン「.co.kr」を利用するというイメージです。こうすることで、韓国で検索が行われた際に検索結果の上位に表示されやすくなります。(国別コードトップレベルドメイン一覧はこちら)
こちらも先のジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)を取得する場合と同様に、ドメインの取得費用が日本語サイトとは別に発生します。また、こちらのccTLDは現地に法人がないと取得できない場合もあるため、取得自体が難しいケースもあります。
4-3. サブドメイン
同じ内容のWebサイトを多言語で運営する場合に適した方法です。
例えば、「en.xxxx.com」は英語サイト、「cn.xxxx.com」は中国語サイト、「de.xxxx.com」はドイツ語サイトのように、一つのジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)に対して、複数のサブドメインを作成する方法です。
サブドメインを使用するメリットは、作成したサブドメインごとに最適なサーバーを使い分けることができる点です。例えば、「cn.xxxx.com」というサブドメインで作成した中国語サイトは、中国本土のサーバーを使い、「de.xxxx.com」はドイツ本土のサーバーを使う、といったイメージです。
このように国別にサーバーを契約することで、地域毎にWebサイトの高速化を実現できます。また日本国内のサーバーを使用し中国語のWebサイトを作成した場合、中国政府の検閲によりサイトが表示されなくなったり、表示されたとしても表示速度が極端に遅くなったりする場合があります。そのような国別の規制の影響を受けないようにするためにも、地域ごとにサーバーを契約するのは有効な手段になります。
ただこちらの方法も、サーバーの契約毎に料金が発生する、契約情報の管理が煩雑になるというデメリットはあります。
4-4. サブディレクトリ
こちらも3のサブドメインと同様に、同じ内容のWebサイトを多言語で運営する場合に適した方法です。
例えば、一つのgTLD「xxxx.com」に対して、英語サイトは「xxxx.com/en」、中国語サイト「xxxx.com/cn」、ドイツ語サイト「xxxx.com/de」といった感じです。
③サブドメインで管理する方法との違いは、すべてのドメインが一つのサーバーに集約される点です。これはすべての多言語サイトが一つのgTLD「xxxx.com」の配下に属しているためです。
この方法のメリットは、複数のサーバーを契約しない分、サーバーの管理費が安く済むことです。一方で、3のサブドメインで国別にサーバーを契約する場合と比較すると、世界各国からアクセスされた際に当該のWebサイトの表示速度が遅くなる可能性が高いです。
海外SEO対策に使えるツール5選
次に私が普段使用している海外SEO対策に使えるツールを5つ紹介します。
ツール1. Google広告|キーワードプランナー
キーワード調査を行う際に使用します。
海外SEO対策時にキーワードプランナーでは、主に世界全域における月間平均検索ボリューム、関連キーワードを調査するために使用しています。特定の国における場合でも使えるため非常に便利です。
またキーワードプランナーは「WebサイトのURL」を入力するだけで、該当のWebサイトの関連性が高いキーワードを一覧で表示することができます。これは特に競合のWebサイトがどのようなキーワードで流入を獲得しているかを調べる際に役に立つので、積極的に活用されることをおすすめします。
先ほど紹介した「言語」と「地域」の設定を組み合わせることで、かなりの情報を取得することができます。
ツール2. Ubersuggest
こちらのツールはSEO対策全般に非常に役立つツールです。
私が主に使っている機能は以下の3つです。
項目名 | 用途 |
---|---|
ランク追跡 | 国別にキーワードの検索順位を測定 |
キーワード候補 | キーワードの月間平均検索ボリューム、関連キーワードの調査 海外の検索結果の調査 |
トラフィック概要 | 競合他社サイトが獲得している流入時に使用されているキーワードの調査 |
キーワードプランナーだけでも十分ではありますが、さらに深く抜け漏れがないように調べる意味で使用しています。また海外のGoogleの検索結果が手軽に調べられる点でもとても便利です。
ツール3. Windscribe
このツールは海外のGoogleの検索結果を表示する際に非常に役に立ちます。
このツールはVPN接続と呼ばれる方法で、仮想的に海外からの位置情報を利用してインターネットに接続できます。要は海外の位置情報を利用して検索できるということです。
これは海外の競合サイトを調べる際に使えるため、海外SEO対策では役に立ちます。(もしくは2.Ubersuggestで検索結果を調べる方法でも全く問題ありません)
ツール4. WebPageTest
こちらのサイトはWebサイトの表示速度を測る際に使用できます。
こちらのツールではWebサイトが世界の指定の地域からアクセスされた時の表示速度を計測できます。したがって、アメリカのGoogleでSEO対策をしたいという場合には、アメリカでの表示速度を測定し改善するべきかどうかを判断することができます。
ちなみにGoogle公式の計測ツール「PageSpeed Insights」は世界の4ヶ所(アメリカ:オレゴン、南カリフォルニア、オランダ、台湾)の一番近いロケーションから測定されているそうです。
参照
How does Calibre differ from Google PageSpeed?
ツール5. Google トレンド
こちらはGoogle公式のツールで、キーワードが「どの国から検索を集めているのか?」を調査する際に使うことができます。
例えば「machining tool(工作機械)」というキーワードを入力してみると、以下のような結果が表示されます。※2022年6月9日時点
これは”machining tool”というキーワードが、どの国からよく検索されているかを示したものです。右の国名とその隣の数値は、インドからの検索数を100とした場合、他の国からのアクセス数を相対的な比率として示したものです。
こちらのツールを先に紹介した「キーワードプランナー」と合わせて使用することで、キーワードの全地域における検索数に加えて、各国からの検索数も調べることができます。特に英語キーワードは、英語圏以外の国からもよく検索されているため、ターゲット地域を見定めるために貴重な情報になります。
海外SEO対策の対策の実例
ここでは弊社が実際に海外SEO対策を支援した実例を紹介します。
株式会社メルテック
会社名 | 株式会社メルテック |
---|---|
事業内容 | 工業用部品の受託製造(エッチング加工、特注エンコーダ用部品の設計・製造) |
従業員数 | 合計200名(日本100名、海外工場(中国/フィリピン/タイ)を含む) |
ターゲット地域/国 | ヨーロッパ、北米 |
海外SEO対策の効果
海外SEO対策を通して、取引を拡大させたいヨーロッパの企業を中心に、世界中の企業から自社製品に対してどのような反応が得られるのかを調べることを目的にスタートしました。実際のSEO対策では、海外で製品がどのような英語名で呼ばれているのかの調査、製品に関する情報の加筆・修正、翻訳の修正、海外の競合調査、潜在顧客の需要調査をきめ細やかに行い、当初の目的であるヨーロッパ(フランス、イギリス)、アメリカ、カナダの企業からの問い合わせが獲得できています。
株式会社シーティーケイ
会社名 | 株式会社シーティーケイ |
---|---|
事業内容 | 産業用印字機器の製造・販売・輸出 |
従業員数 | 40名 |
ターゲット地域/国 | ヨーロッパ、北米、中東 |
海外SEO対策の効果
海外SEO対策では、ブログによるビッグキーワードでの対策、および製品ページによる具体性の高いキーワードでの集客を実現しています。継続的なSEO対策の取り組みにより、海外の見込み顧客から継続的に引き合いが獲得できる状態を実現しており、同社の海外事業展開に大きな役割を果たしています。
鳴海製陶株式会社
会社名 | 鳴海製陶株式会社 |
---|---|
事業内容 | 洋食器(陶磁器)の企画、開発、製造 |
従業員数 | 260名 |
ターゲット地域/国 | 英語圏 |
海外SEO対策の効果
同社の英語Webサイトは、既存顧客からのアクセスは継続的に集まっていたものの、新規顧客(同社をまだ認知していない顧客)に対する施策として、海外SEO対策をスタートしました。SEO対策では、ブログページの制作により、海外顧客からのアクセスが大幅に増加し、海外での認知度の向上に大きな役割を果たしています。
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外国語サイトの制作事例については、以下の記事で紹介しています。
海外SEO対策の具体的な進め方
次に海外SEO対策の具体的な進め方を6つのステップに分けて解説します。国内のSEO対策と違いがある部分を中心に解説しています。
ステップ1. キーワード候補の洗い出し
まずSEO対策をするキーワード候補を洗い出しスプレッドシートにまとめます。特に英語でSEO対策を行う場合、製品名に複数の名称がないか入念に確認しましょう。
ここでは私がキーワード候補の洗い出しを行う際に、実際に使用しているツールを紹介します。なお主に以下のツールではキーワード候補の「月間平均検索ボリューム」と「関連キーワード」を調査します。
Google広告|キーワードプランナー
Google公式のキーワード調査ツールです。外国語キーワードを調査する場合は「言語」と「地域設定」を対象の言語、地域に合わせて設定するようにしましょう。(画像赤枠部を参照)
また「地域設定」は複数の地域を選択することができるため、例えば以下のようにASEAN地域に絞ってキーワードの「月間平均検索ボリューム」を調べることもできます。(※「キーワード候補」を調べる際は最大10ヶ所指定可能です)
これは例えば東南アジア向けにリスティング広告を出す際に、キーワードの「月間平均検索ボリューム」を調べる時に非常に役に立ちます。
上記の違いを除けば、基本的な使い方は日本語キーワードを調査するときと変わりません。
UberSuggest
こちらのツールも外国語キーワード調査をする際に便利です。
サイドメニューの「キーワード候補」からこちらの画面に入り、「言語」と「ロケーション」を設定することで、対象の言語、地域におけるキーワード調査が可能です。(画像赤枠部を参照)
これらのツールを用いてキーワード候補を洗い出すことに加えて、必ず実際の検索結果を確認しましょう。そうすることで、キーワードが意図した製品・サービスを的確に表しているか?、競合他社は違うキーワードを使っていないか?、の2点を確認することができます。
またUbersuggestには「トラフィック」というメニューがあり、特定のWebサイトのURLを入力することで、そのWebサイトが国別でどのようなキーワードで流入を獲得しているかを調査できます。この機能もキーワード候補を洗い出す上でも、見当違いなキーワードを選ばないためにも役に立つ機能です。
これら2点を確認し、ツールを用いた調査で洗い出せていなかったキーワードがあった場合は、それらのキーワードを再度ツールを使って「月間平均検索ボリューム」と「関連キーワード」を調査しましょう。
ステップ2. 対策キーワードの選定
次に「1. キーワード候補の洗い出し」で洗い出したキーワードの中から海外SEO対策を進めるキーワードを選定します。選定基準の例は以下のとおりです。
- キーワードを使用するユーザーは自社の製品・サービスの顧客を含んでいるか
- キーワードと自社の製品・サービスは十分に関連性が高いか
- キーワードを使用するユーザーの検索需要を満たすコンテンツが自社で用意できそうか
- キーワードの「月平均検索ボリューム」は十分大きいか
- キーワードはSEO対策で十分に上位表示できる可能性があるか
これらを判断するためには、海外SEO対策を試行錯誤してきた経験による直感と丁寧な調査が必要です。しかもこれらの判断と判断に必要な調査を外国語で行う必要があるため、必然的に難度は高くなります。
よくある失敗パターンとして、「月平均検索ボリューム」が大きいという理由だけでキーワードを選定し海外SEO対策を行った結果、自社の製品・サービスには関心度の薄いユーザーから大量のアクセスが来たが、お問合せの件数は変化しなかった、というケースがあります。
このような失敗を防ぐためには、海外SEO対策を行う目的をキーワード選定の段階から明確にしておくことが必要です。そうすることで、判断軸も明確になり作業自体もスムーズに進みます。
関連記事
英語キーワードの選定については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
ステップ3. 記事の見出しを作る
このステップは海外SEO対策の中でも最もセンスが求められる部分です。基本的な作業は国内SEO対策と同じですが、外国語になる分難度は高くなります。
②までのステップで対策するキーワードが決定しています。次に「キーワードを検索するユーザーがどのような情報、コンテンツを求めているのか?」、仮説を立てます。この仮説をもとに見出しを決定します。
例えば「cmm machines(三次元測定機)」という英語キーワードを使って検索を行うユーザーは、大きく以下のような情報を求めていることが予想されます。
- 三次元測定機が欲しい(どんな製品があるのか知りたい)
- 三次元測定機について知りたい(情報収集がしたい)
この中でも前者「どんな製品があるのか知りたい」という検索需要に対しては「三次元測定機の製品一覧」のような製品紹介ページが上位に表示されます。一方、後者の「情報収集がしたい」という検索需要に対しては「三次元測定機についての一般知識」のようなコラム記事が上位に表示されます。
英語キーワードの検索結果を確認する際は、英語の記事が世界で最も多く集まっているアメリカの検索結果を参照することをおすすめします。世界で最も競争が盛んなアメリカの検索結果で上位表示できれば、他の国でも上位表示できるであろう、という判断です。(ただしアメリカ英語とイギリス英語でキーワードが異なる場合は別で調査する必要があります)
次にこれら大きな分類分けをした「検索需要のどれを満たすのか?」を決めます。今回は、後者の「情報収集がしたい」を満たす記事を作成する場合を考えます。この時やるべきことは、キーワードを実際に検索した際に現在上位表示されている記事のコンテンツ(記事の見出し)を全て洗い出し、ユーザーが具体的にどのような情報を求めているのかについて仮説を立てることです。
今回の「三次元測定機」というキーワードの例では、以下のような情報をユーザーが求めているだろうと仮説を立てました。
- 三次元測定機とは
- 三次元測定機の特徴
- 三次元測定機の種類
- 三次元測定機を使うメリット
- 三次元測定機を使うデメリット
- 三次元測定機の機器構成
- 三次元測定機の測定方法
- 三次元測定機の選び方
- 三次元測定機の製造メーカー
最後にこれらの情報の中でどの需要を満たすのか?を決めます。これがそのまま記事の見出しになります。この工程で決定した見出しによって検索順位が決まると言っても過言ではないほど重要な工程です。
もし記事の検索順位が上がってこない場合は、上記で決定した仮説が間違っている、もしくは仮説はあっているが記事に含んでいない、のどちらかになります。まずは仮説で洗い出した見出しを全て含める形に記事を加筆・修正し、それでも検索順位が上がってこない場合は、上記の仮説自体を再度考え直す必要があります。
ステップ4. 記事を執筆する
記事の見出しが決まったら執筆に移ります。執筆は自社で行う場合は誤解を招くような表現がないかのチェックだけは必ず行いましょう。可能であればネイティブ、もしくはネイティブ並みに外国語が堪能な方に表現のチェックをしてもらえればより良いと思います。
記事を自社で用意することが難しい場合は、ライティング代行サービスを利用することも検討しましょう。そして文章が揃い次第、Webサイトへの反映、その他の必要な設定も国内SEO同様に行いましょう。
記事執筆と合わせて、記事の投稿に必要な情報(例:ページタイトル、ディスクリプション、altタグの設定)も行います。特にページタイトルは、クリック率に与える影響が大きいため、重要です。
ページタイトルの付け方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ステップ5. 効果測定
記事をWebサイトで公開後に効果測定を行います。効果測定では主に対策しているキーワードでの検索順位を調査します。
海外SEO対策の場合は、どの国における検索順位を調査するのかを決める必要があります。ターゲット地域が明確に決まっている場合は、その国における検索順位、特にターゲット地域がない場合はアメリカの検索順位を調べておくことをおすすめします。(理由は先ほどと同様です)
検索順位の追跡には、先ほど紹介したUberSuggestが使えます。
ステップ6. 加筆・修正
記事の検索順位が上がってこない場合は、加筆・修正を行いましょう。目安としては、3ヶ月経っても低い順位で変動しないようであれば加筆・修正が必要と考えて間違いないと思います。
加筆・修正の手順は以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事
公開した英語記事(英語サイト全体)の改善方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
海外SEO対策のメリット
海外SEO対策を行うことのメリットを解説します。国内のSEOとも重複する内容は割愛しています。
メリット1 市場が大きい
海外SEOを行う最大のメリットは、ターゲットとする市場の大きさです。
先にも述べましたが、英語話者は日本語話者の10倍以上存在します。それは競合が多くなるという負の側面ももたらしますが、一方で国内とは比べ物にならない数の潜在顧客がいることも意味します。
すでに国内に需要が存在する製品・サービスはもちろんですが、国内では需要がないようなニッチな製品・サービスでも、海外に市場を広げることで顧客を獲得できます。海外SEOに本格的に取り組むことにより、(広告を使うより低予算で)この大きな市場に対して自社の製品・サービスをアピールできます。
メリット2 新市場の発掘が可能
Google広告をはじめとするリスティング広告を外国語サイトに使用する場合、ある程度需要が見込める地域を絞って掲載することが現実的です。そのため、ある地域における需要調査には向いていますが、全くの新規の市場を発掘することには不向きと言えます。
一方、海外SEOはSEOという手法の特性上、対象地域は国外全域になります。例えば、英語サイトでSEO対策を行った場合、世界中に存在する潜在顧客がその英語サイトにアクセスする可能性があります。
すなわち英語サイトにSEO対策を行うことで、世界中の新規顧客の開拓が可能になります。これはSEOという手法ならではのメリットと言えます。
メリット3 新しい発見・学び
海外SEO対策を行う過程で得られる学びや発見は、大きな価値があると考えます。
例えば、海外SEO対策のステップの一つである「競合調査」を行うと、国内のWebサイトでは見ないような、サイト構成、デザイン、レイアウト、文章の書き方に触れることができます。これら違いから得られる学びは、SEO対策だけではなく、自社の海外向けサイトの改善のアイデアとしても活用できます。
また英語キーワード調査を行うことで、日本語では表現することができないような探し方で、海外のユーザーが物事を捉えていることが理解できます。これは言語という観点ではもちろん、自社の製品やサービスを海外向けWebサイトで表現する方法を決める上でも、非常に参考になる情報です。
まとめ
本記事では「海外SEO対策」について、私が考える海外SEO対策に関する見解、ノウハウを説明しました。
まとめると、国内SEO対策と海外SEO対策は本質的には同じですが、言語と環境が変わる分、難度は上がる上に必要なテクニックも変わります。そのため、やるからにはしっかりと時間を投資して取り組むことをおすすめします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。