海外Webマーケティングの基礎|BtoB企業向け

【執筆者紹介】稲垣 達也
この記事の執筆者
稲垣 達也
【経歴】
テクノポート株式会社「海外Webマーケティング」サービスの責任者
名古屋工業大学大学院 電気機械工学専攻 博士前期課程卒業
同大学 機械工学科卒業

【保有資格】
TOEIC L&R:990/990、英検一級:合格、TOEFL iBT:108/120
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テクノポート株式会社の稲垣です。
BtoB企業向けの「海外向けWebマーケティング」サービスの責任者を務めています。

この記事はBtoB企業が「海外向けWebマーケティング」に取り組む上で必要な前提知識を網羅できるように執筆しました。

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海外向けWebマーケティングとは?

私は海外企業からの引き合い獲得を目的とするW​ebサイトを活用したマーケティング活動」と定義します。国内のWebマーケティングとの違いは「外国語/多言語Webサイトを使用する」という点です。(細かな違いは「国内のWebマーケティングとの違い」で説明しています)

これ以降「海外向けWebマーケティング」=「海外Webマーケティング」という前提で話を進めます。
また「マーケティング」と「Webマーケティング」という言葉の定義については、以下の記事をご覧ください。

なぜ海外Webマーケティングが重要なのか?

以下のグラフは、世界各国のBtoBバイヤーの中で「オンライン情報の購買プロセス」を好む割合を示したグラフです。


出典:The B2B Future Shopper Report 2023-24

このグラフからわかるように、今後BtoB業界においてオンライン上の購買を好むユーザーの割合が増加することが予想されています。したがって、それらのユーザーと接点を持つためには、企業側としてオンライン上でのマーケティング活動に取り組む必要があるといえます。

特に日本以外の国では日本よりもオンライン上での購買活動が一般的であり、海外Webマーケティングという文脈においてその重要性は国内向けマーケティングより高いといえます。

日本企業の取り組み状況

次に日本企業の海外Webマーケティングへの取り組み状況について、弊社が2024年1月に実施した「BtoB企業の海外向けWebマーケティングに関する実態調査」から一部を紹介します。

海外Webマーケティングへの取り組む状況


出典:【2024年最新】BtoB企業の海外向けマーケティングの実態調査

上記は国内の海外向けマーケティングで成果を感じているBtoB企業の中で「海外Webマーケティング(Webサイトを活用した海外向けマーケティング)」に取り組む企業の割合を調査したものです。回答結果から9割以上の企業が海外Webマーケティングに取り組んでいることがわかります。

海外向けマーケティングに取り組んでいる理由


出典:【2024年最新】BtoB企業の海外向けマーケティングの実態調査

上記は国内のBtoB企業が海外向けマーケティングに取り組む理由を調査したものです。7割以上が海外での新規顧客開拓を目的としていることがわかります。(上記の結果は、Webマーケティング以外のマーケティング活動も含めた回答になります)

海外向けマーケティングを強化している地域


出典:【2024年最新】BtoB企業の海外向けマーケティングの実態調査

また海外向けマーケティングで対策を強化する地域として、東アジアが一番に挙がりました。また上位3地域はいずれもアジアとなっており、日本企業にとってのアジア市場の重要性がよくわかる結果となりました。(上記の結果は、Webマーケティング以外のマーケティング活動も含めた回答になります)

海外Webマーケティングの成功事例

ここでは、弊社が実際に海外Webマーケティングを支援した実例を紹介します。

株式会社メルテック

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会社名 株式会社メルテック
事業内容 工業用部品の受託製造(エッチング加工、特注エンコーダ用部品の設計・製造)
従業員数 合計200名(日本100名、海外工場(中国/フィリピン/タイ)を含む)
ターゲット地域/国 ヨーロッパ、北米
実施施策 英語Webサイトを使用したSEO対策、リスティング広告の運用

海外Webマーケティングの効果

株式会社メルテックは、エッチング加工を主事業とする金属薄板加工を行っています。このエッチング加工の技術を用いて製造できる製品の一つに「エンコーダー用スケール」と呼ばれる部品があります。これに関するキーワードを中心に、海外Webマーケティング支援を行いました。現在では海外SEO対策のみにより、現在では北米、ヨーロッパを中心に世界各国から引き合いが来ています。

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株式会社シーティーケイ

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会社名 株式会社シーティーケイ
事業内容 産業用印字機器の製造・販売・輸出
従業員数 40名
ターゲット地域/国 ヨーロッパ、北米、中東
実施施策 英語Webサイトを使用したSEO対策、リスティング広告の運用

海外Webマーケティングの効果

株式会社シーティーケイは、配線識別に使用される産業用プリンターを製作しているメーカーで、国内では業界トップシェアを獲得しています。国内マーケットではすでに大きなシェアを保有しているので、海外シェアの開拓に注力したいという目的のもと、海外Webマーケティングに取り組み、現在では世界中の見込み顧客から月に30件以上の引き合い(問い合わせ、カタログダウンロード)を獲得しています。

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鳴海製陶株式会社

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会社名 鳴海製陶株式会社
事業内容 洋食器(陶磁器)の企画、開発、製造
従業員数 260名
ターゲット地域/国 英語圏
実施施策 英語Webサイトを使用したSEO対策、Webサイトの問い合わせ率の改善

海外テストマーケティングの効果

鳴海製陶株式会社は、英語版サイトのSEO対策と問い合わせ率の改善を目的とした改修により、海外からの問い合わせが急増し、新規顧客の開拓に成功しています。特に、ブログページによる海外SEO対策により10倍以上に増加したアクセスを効率よく問い合わせにつなげるための施策を実行したことで、カタログダウンロードページから獲得できるリード数が1.5〜2倍に急増し、海外の顧客のニーズを把握できる体制ができています。

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海外Webマーケティングの進め方

海外Webマーケティングの進め方を4つのステップで解説します。国内のWebマーケティングとは別で考える必要がある内容を厚めに解説しています。

全体像

こちらが海外Webマーケティングの進め方の全体像です。弊社では以下の4つのステップを通して、お客様であるBtoB企業様の海外Webマーケティングの支援を行っています。ここではマーケティング戦略の全体像の話(例:市場調査、3C分析、マーケティングミックス)は割愛し、Webマーケティングの実施に焦点を当てた解説をしています。

Step 1 ターゲット顧客の理解

海外Webマーケティングに取り組むにあたり、自社が海外市場においてターゲットとする見込み顧客の購買プロセスを把握することが非常に重要です。以下はBtoBバイヤーの典型的な購買プロセスを表した概念図です。(左から右にかけて購買プロセスが進んでいく様子を表しています)


上記の図が示す通り、ユーザーは複数の購買情報源を活用しながら購買プロセスを進め、最終的なベンダー(サプライヤー)の選定ステージで購買先を決定します。

この購買プロセスは見込み顧客が属する国や地域、業界、業種、企業規模のような要因により変わります。そのため、後のステップで海外Webマーケティングでどの媒体を通してどのような情報を発信するべきかを決める際に、海外Webマーケティングの取り組み初期にこの購買プロセスを可能な限り詳細に把握しておくことが重要です。

見込み顧客の購買プロセスを把握するためには、自社が定義するペルソナに近いユーザーへ直接インタビューを行う方法が最も効果的です。インタビューに実施できるツールは以下の記事で解説しています。

補足:購買プロセスの整理方法

弊社では見込み顧客へのインタビュー調査結果をもとに、以下のような購買フローを整理したスプレッドシートを作成しています。
上記の形で見込み顧客の購買プロセスを整理することで、見込み顧客が購買プロセスの各ステージにおいて取り得る行動から逆算して海外Webマーケティングの施策を決定できるため、非常に重要な情報源になります。

Step 2 Webサイト/ランディングページの制作

次に海外Webマーケティングの基点となるWebサイトまたはランディングページの制作を行います。Webサイトを制作する際は、マーケティングの基礎である「3C分析」の考え方を応用して、海外顧客ニーズの中で海外の競合企業が満たしていないニーズに焦点を当てたWebサイトを制作することが重要です。

海外向けWebサイトの制作プロセスは以下の記事でも詳しく解説しています。

また海外向けWebサイトを制作する際は、対象とする地域のユーザーにとってなじみのあるデザインや機能を実装することで、ユーザーがストレスを感じることなくWebサイトを閲覧できます。各地域におけるWebサイトのデザインや特徴の違いは、以下の記事で詳しく解説しています。

海外企業のWebサイトデザイン

海外企業のWebサイトの特徴

補足:Webサイトの重要性

以下の表は、BtoBバイヤーがサプライヤーを探す際の情報収集に使用する媒体を調査した結果です。

Channel Percentage
サプライヤー/ベンダーウェブサイト 69%
検索エンジン 63%
業界イベント 52%
業界誌 52%
業界ウェブサイト 40%
業界コンサルタント/業界の専門家 37%
動画共有サイト 29%
個別サプライヤー/ディストリビューター主催の見学会 29%
業界フォーラム 24%
業界ウェビナー 17%

出典:The Industrial Buying Influence Survey | Gardner Web

上記の結果からわかるように、サプライヤー/ベンダーのWebサイトは情報収集を行うための媒体として最も使用される割合が高いことがわかります。上記の結果からも、海外Webマーケティングを行う場合は、自社のWebサイトを基点として施策を展開していくことが重要だとわかります。

Step 3 集客施策の実施

次に制作した海外向けWebサイトへの集客施策を実行します。基本的な考え方は、Step 1で調べたユーザーの購買プロセスをもとに彼らが情報取集時に使用する媒体で露出を高める、という戦略を取ります。

海外では日本で一般的に使用されていない媒体(例:LinkedIn、WhatsApp)が購買プロセスの情報収集で活用されていたり、同じ媒体であっても国内とは違う活用方法があったり(例:タイではLINEがビジネス上のコミュニケーションにも使用される)するため、顧客の使用する媒体が何で、彼らがその媒体をどんな目的で使用しているのかを把握することが重要です。

補足:海外Webマーケティングで成功する企業が取り組む施策

以下は国内BtoB企業が海外向けマーケティングとして取り組んでいる施策を調査したものです。


出典:【2024年最新】BtoB企業の海外向けマーケティングの実態調査

上記の中で取り組む企業の割合が高かった以下の3つの施策については「海外Webマーケティングの施策」で詳しく解説します。

Step 4 効果検証・改善

最後に実施した施策の効果検証と改善活動を行います。前提として、初期に実施した施策が全てうまくいくケースはあまり多くなく、海外Webマーケティングで成果を出すためには、中長期的な視点で改善活動に取り組む必要があります。

弊社では以下のような指標をKPIとして設定し、海外Webマーケティングの改善活動を支援しています。

これらの指標の中で「フォーム通過率」を高めるための施策を最優先に実施し、その後「フォーム到達率」最後に「エンゲージメント率の改善」を行います。上記の改善が一通り完了した段階でセッション数を増やす施策(集客施策)を強化することで、効率よく問い合わせ獲得数を増やすことができます。

言葉の意味は以下の通りです。

  • セッション数:Webサイトへの訪問回数(訪問者がサイトにアクセスしてから離脱するまでを1セッション)
  • エンゲージメント: Webサイトへの訪問者がサイト内で行動を起こす確率
  • フォーム到達:訪問者が問い合わせフォームのページに到達した回数
  • コンバージョン(フォーム通過):訪問者が問い合わせ完了させた回数
  • エンゲージメント率:エンゲージメントが発生したセッション数/セッション数
  • フォーム到達率:フォーム到達が発生したセッション数/セッション数
  • フォーム通過率:フォーム通過が発生したセッション数/フォーム到達が発生したセッション数

海外Webマーケティングの施策3選

海外Webマーケティングで一般的に用いられている施策3選を紹介します。

Web広告

海外Webマーケティングの施策の中で、最も多くの日本企業が取り組む施策は「Web広告」です。Web広告には、以下のような出稿媒体が挙げられます。

  • 検索エンジン: Google、Bing、Yahoo!、Yandex(ロシアなど)Baidu(中国)、Naver(韓国)
  • ソーシャルメディア: LinkedIn、WhatsApp、Facebook Messenger、WeChat(中国)、Zalo(ベトナム)

海外WebマーケティングとしてWeb広告が有効な理由は、ターゲット地域やユーザーの属性を指定して広告配信ができることが挙げられます。つまり、自社の製品・サービスに対する需要が見込める地域、ユーザーの属性がある程度予想できる場合、Web広告でターゲットを絞ってアプローチすることで、他の手法に比べて高い費用対効果を実現できます。

海外向けのWeb広告に関する情報は、以下の記事をご覧ください。

検索エンジンの最適化(SEO対策)

SEO対策とは、検索エンジンで自社のウェブサイトやコンテンツを上位に表示させ、Webサイトへの集客および引き合いの獲得を強化する手法です。

SEO対策に取り組む最大のメリットは、製品・サービスを世界中の需要が見込める顧客に認知させることができる点です。特に英語を使用して例えば、英語サイトでSEO対策を行った場合、世界中に存在する潜在顧客がその英語サイトにアクセスする可能性があります。

海外向けのSEO対策に関する情報は、以下の記事をご覧ください。

SNSマーケティング

ソーシャルメディアを活用したマーケティング手法です。BtoB企業における主な活用方法として、以下のようなものが挙げられます。

  • コンテンツの投稿:見込み顧客に役立つ情報を発信する(例:ブログ記事、ホワイトペーパー、インフォグラフィック、動画)使い方
  • 広告配信:SNSを利用するユーザーに向けて広告を配信し、製品・サービスの認知拡大・引き合いの獲得を狙う使い方
  • ネットワークの構築:業界関係者や潜在顧客との交流、業界イベントを通じて、ビジネスチャンスを創出する使い方
  • 顧客とのやり取り:顧客とのコミュニケーションツールとしての使い方

国内のSNSマーケティングとの違いは、海外のユーザーが使用するSNSで、海外のユーザーが使い慣れた形で配信する(例:言語、表現)になります。例えば、以下は2024年2月における、世界全体におけるSNS使用率(SNSを参照元として発生したWebサイトへのトラフィック量の割合)は以下の通りです。

SNS シェア
Facebook 64.46%
Instagram 9.92%
Pinterest 9.69%
YouTube 7.5%
Twitter(X) 6.7%
reddit 0.86%

出典:Social Media Stats Worldwide | Statcounter Global Stats

比較用に、日本国内のSNSシェアは以下の通りです。

SNS シェア
Twitter(X) 60.38%
Facebook 13.09%
Pinterest 9.1%
YouTube 8.22%
Instagram 7.21%
LinkedIn 0.73%

出典:Social Media Stats Japan | Statcounter Global Stats

この数字を見ても、国内と海外では傾向が大きく違うことがわかります。

海外向けのSNS活用に関する情報は、以下の記事をご覧ください。

海外Webマーケティングを成功させるポイント

次に海外Webマーケティングを成功させるポイントを3つ紹介します。

ポイント1 顧客目線でコンテンツを制作する

海外Webマーケティングに限らずマーケティング全般に当てはまる話ではありますが、やはり顧客目線でコンテンツを制作することが重要な要素になります。特にWebサイトには「顧客が求める情報を顧客が求める形で掲載する」ことが重要です。すなわち自社がアピールしたいポイントを載せるのではく、あくまでも見込み顧客が求めている情報を彼らが見やすい形で載せることが何よりも重要です。

参考までに以下は、弊社が国内大手メーカーに対して実施したアンケート調査の結果です。以下では発注候補先企業を絞り込む際に、ホームページ上で重要視して確認する項目が、回答として挙げられた割合他が高いものから順に掲載されています。

出典:【大手メーカーの新規外注先選びのポイントとは?】半数以上が「特徴が分かりづらいホームページの企業は候補から外す」と回答! 8割以上が「何かに特化している業者」の方が良い印象を受ける事実が判明

上記の結果のような定量情報はもちろん、見込み顧客へのインタビューで得られた定性情報を活用して、どのような情報を載せることで顧客の意思決定をサポートできるのか考慮した上で、Webサイト上へ掲載する情報を決定しましょう。

ポイント2 顧客の使用する媒体で露出を増やす

2019年に実施されたGartnerの調査によると顧客はさまざまな媒体(オフラインの情報収集を含む)を活用して、情報収集を行い、情報収集のための選択肢が増えるにしたがい、購買プロセスは複雑化していることがわかっています。そしてあらゆる業界で加速するデジタル化の流れを考慮すると、今後もその傾向は続くことが予想されます。

すなわち今後の海外Webマーケティングにおいては、複雑化している購買プロセスの中で可能な限り見込み顧客と接点を持つことの重要性がさらに高まります。そのため顧客の購買プロセスを把握する努力を怠らずに、彼らの使用する媒体で露出を高めることが海外Webマーケティングの成否を分ける重要なポイントであるといえます。

ポイント3 継続的に改善活動を行う

海外Webマーケティングに本格的に取り組み始めると、ある程度成果が出るタイミングがやってきます。ただし継続的な改善活動を行っていると、ある時点からまた元の状態に戻るという現象がよく起こります。これは自社が停滞しているうちに、海外の競合他社がマーケティングを強化することで自社の優位性が相対的に減ることに起因しています。

また、海外Webマーケティングは一般的に国内向けのマーケティングよりも難しいです。なぜなら国内市場より競争が激しい市場において、馴染みのない購買プロセスをたどる顧客に対してマーケティングを行う必要があるからです。そのため、海外Webマーケティングで 成果を出し続けるためには、継続的な改善する体制を構築する必要があるといえます。

海外Webマーケティングを行う上での注意点

海外Webマーケティングを行う上で、頭に入れておくべき注意点を3つ紹介します。私の独断と偏見で選びました。

注意点1 海外の検索エンジン

特に広告を出稿する場合や、中国、ロシアなどの独自の検索エンジンが広く使われている地域向けに海外Webマーケティングを行う場合は、検索エンジンの使用率を必ず確認しましょう。

例えば、以下のグラフが示すように、中国では検索エンジンとしてBaiduが最も多く使われています。(2022年5月時点のデータ)

出展:Search Engine Market Share China | Statcounter Global Stats

したがって、中国市場向けに広告出稿を行う場合は、GoogleではなくBiaiduを使用することで、より多くの潜在顧客に情報発信できることがわかります。国別の検索エンジンの使用率はこちらのサイトで確認できます。

海外の検索エンジン一覧は、以下の記事で紹介しています。

注意点2 翻訳は簡潔に

海外Webマーケティングにおける翻訳を自社で行う場合は、簡潔にわかりやすい翻訳を重視することが大切です。

この主張を説明する前に、ネイティブの翻訳と機械翻訳の違いを考えます。例えば日本語を英語に翻訳する場合、ネイティブが書く英語と我々の書く英語(もしくは機械翻訳の英語)の最大の違いは何かというと「文章の読みやすさ」だと考えます。

なぜなら、どちらの翻訳方法も基本的に意味は通じるからです。現に多少ネイティブにとって文章が読みにくい場合でも、彼らが求める情報(製品・サービス)が記載されており、文章の意味が十分伝わる場合は彼らは問い合わせをしてくるからです。(現に弊社のお客さまでも問い合わせは来ています)

だからと言って、ネイティブ翻訳は必要ないかと言われるとそうでもないと思います。なぜならネイティブの書く文章の方が、自然な文法・表現が使われており、ネイティブにとって読みやすいからです。すなわち、ネイティブ翻訳を導入することで「文章が読みにくいから」という理由で、本来くるはずだった問い合わせを失う可能性がなくなるイメージです。

ここで最初の主張に戻ります。我々非ネイティブが翻訳をするときに意識することは「文章が読みにくい」と感じさせないことです。すなわち、できるだけ簡潔にわかりやすい文章を書き「文章が読みにくい」という減点を減らすことです。簡単にできる工夫としては、以下のようものが挙げられます。

  • 箇条書きを使用する
  • 表を使う
  • 長文は短く区切る
  • シンプルな文法・単語を使う

我々日本人も、外国人が書く日本語の文章が読みにくいと感じることがあると思います。逆の立場になったときにも、あの減点をなるべく減らしましょう、という意味です。

翻訳ツール(機械翻訳)の翻訳精度については、以下の記事で詳しく解説しています。

翻訳サービスの料金相場については、以下の記事で解説しています。

注意点3 時間がかかる

海外Webマーケティングで効果が出るまでには、国内よりも時間がかかる場合が多いです。

1つ目の理由は、シンプルに難度が高いからです。一般的に海外Webマーケティングでは、国内よりも競合が多いです。(もちろん市場や言語によって変わります)その分、競争が激しいため、勝ち抜くためにはそれなりの試行錯誤が必要になるためです。

もう1つの理由は、国内のWebマーケティングでは思いもよらない原因で成果が出ない、という現象が起こり得るからです。例えば、以下のような原因です。

  • 外国語キーワードの選定が間違っていた
  • 翻訳が冗長でわかりにくい
  • 海外の顧客が求める情報が載っていない(例:返品対応の方法、取引・配送の流れ、海外拠点情報)

これらの成果が出ない原因は、国内のWebマーケティングでは起きる可能性が低いため、海外Webマーケティングならではの改善ポイントになります。すなわち、これらの改善活動が必要になる場合は、時間がかかる傾向があります。

国内向けWebマーケティングとの違い

国内向けWebマーケティングとの違いを5つ説明します。

1. 市場規模

海外Webマーケティングの最大の特徴は、ターゲットとする市場が大きいことです。例えば、英語サイトを使って全世界向けにWebマーケティングを行う場合、英語話者は日本語話者の10倍以上存在するため、単純計算で国内の10倍以上の潜在顧客を発掘できる可能性があります。

これは言い換えると、海外の競合も多く競争が激しいということでもあります。つまり対象とするターゲット市場の大きさに比例して、競争に勝ち抜く難度も高いといえます。

2. 言語

海外Webマーケティングは外国語でWebサイトを活用するマーケティング活動であるため、言語が違います。これはWebサイトの表記そのものはもちろん、競合企業の調査時に使用する言語、問い合わせをもらって顧客とやり取りする言語、貿易の実務で使用する言語、全てが外国語になります。

特に3つ目の「海外企業とのやり取り」は、中小企業の輸出ビジネスにおける課題として挙げられることが多いです。実際に、中小企業基盤整備機構が行った調査によると「外国語や貿易実務ができる人材の確保」が輸出における課題として最も多く挙げられています。(参照:平成 28 年度中小企業海外事業 活動実態調査報告書

3. 文化

海外Webマーケティングでは、対象となる地域の文化的な違いが影響することもあります。例えば、外国語サイトのデザインは、日本企業のそれとは異なる特徴があります。一般的に外国、特に欧米企業のWebサイトのデザインは「配色」「画像と文章の配置」「顧客への訴求方法」で日本企業のそれとは異なる特徴を有していることが多いです。

詳しくは以下の記事で解説しています。

他にも宗教的な観点の違いで、問題が発生するおそれもあります。ターゲット地域が明確な場合は、十分に調査を行うことが必要です。

4. 手法

国内と海外では、使われているツールが異なることがあります。検索エンジンを例にとって考えると、2022年5月時点で国内で最も使われている検索エンジンは「Google(シェア76.39%)」です。一方で、世界最多の人口を有する中国ではGoogleではなく「Baidu(シェア84.27%)」が最も使われています。

一般的に、国内でWebマーケティングを行う場合はGoogleを中心に施策を実行することが有効です。一方で、海外Webマーケティングを行う際は、地域によってとるべき手法が異なることを考慮する必要があります。

参照

5. インターネット規制

国によってはインターネットへの接続に規制が設けられていることがあります。

代表的な例を挙げると、中国国内のサーバーを利用して情報発信を行う場合は「ICP(インターネット・コンテンツ・プロバイダー)」と呼ばれるライセンスを取得する必要があります。

これは中国政府がインターネット上での情報検閲を行っていることが関わっており、中国国外にサーバーを設置すると、中国国内ではサイトが表示されない、表示されても表示速度が非常に遅くなる、という問題が発生するおそれがあります。かなり技術的な内容ですが、国によってはこのような規制が設けられていることがあるので、注意が必要です。

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資料イメージ

【調査期間】 2024年1月22日〜1月23日
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まとめ

海外Webマーケティングに関する情報を一通り網羅する形で紹介しました。
各施策の細かいポイントは、別途「海外向けマーケティング」カテゴリのコラム記事をご覧いただけると幸いです。

弊社(テクノポート株式会社)では、BtoB企業向けに「海外向けWebマーケティング」を支援しています。
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稲垣 達也
【経歴】
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